ほとんど月に1回のペースで見ることができる「満月」。満月のときに、体調に変化があったり寝つきにくくなったりした経験がある人も少なくないはず。実際に東洋医学の観点から、遥か昔から体と月の満ち欠けが関係しているとことが分かっています。では、具体的にどのような変化が起こるのでしょうか?

今回は、源保堂鍼灸院の院長を務める瀬戸郁保先生に「満月と体の関係」について伺いました。満月の日におすすめの過ごし方も要チェック!

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月の満ち欠けと体調の関係

月・太陽・地球の位置関係の変化から起こる月の満ち欠けと人間の体調の変化は、東洋医学の原典ともされる紀元前にまとめられた書物「黄帝内経(こうていだいけい)」に、古くから記載されています。

具体的には、「黄帝内経・霊枢(こうていだいけい・れいすう)」の「歳露篇(さいろへん)」に、「栄養を運搬する血液は、月の満ち欠けと共に盛り上がっていく」と書かれています。

これは、月と地球の引力の影響が体にも関係していることを表しています。そもそも、地球上の海の潮が満ち引きするのは、月の引力が海水を引っ張るから。そして、人間の体は6~7割が水分でできていると言われるうえ、血液も液体の一種。つまり、月の満ち欠けとあわせて、引力が海水だけではなく体内の水分と血液にも影響を与えているのです。

満月が睡眠に与える影響

東洋医学には、中心となる基本概念の一つとして、人間の体を構成するのは「気・血・水」だとする考えがあります。そして、満月の日に近づくにつれて体内の気血※気と血をあわせたものは増幅し、血液(血)を運搬するためのエネルギー(気)が増えるそう。これによって、人間の体は満月の日に向けて「活動モード」に入っていきます

また東洋医学の考えでは、日中の活動時間帯は「陽」のエネルギーが体を巡っていて、夕方ごろには「陰」のエネルギーが増すことで、だんだんと体が「睡眠モード」に入っていくというメカニズムが示されています。

満月の日は、「陽」のエネルギーが最大限強くなり体に活力が満ちているとき。一方で寝るときは、「陰」のエネルギーを増やして体を休息モードに切り替えなければいけません。このように、満月の日は「陽」と「陰」のエネルギーギャップが激しくなるので、睡眠が浅くなったり寝つきにくくなったりするのだそう。

「満月の影響で増えた『陽』のエネルギーをしっかりと日中に活動して使ってあげることで、夜に『陽』のエネルギーから『陰』のエネルギーへ切り替えやすくなり、睡眠への影響を抑えることができます」
tired man sleeping on top of the moon
Malte Mueller//Getty Images

満月がメンタルヘルスに与える影響

満月の時期はエネルギーが満ちてきて体が活動的になってくるタイミングのため、精神的にも元気になる人が多いです。一方で、満月の時期に元気がない人は、体のどこかに不調がある可能性が高いそう

瀬戸先生によると、満月の日に心身ともに健康でいるためには、ダイエットをなるべく控えたほうが良いとのこと。

「ダイエットはエネルギーをつくる材料を減らしてしまうことにつながるので、満月の日に近づいてきたら、なるべくダイエットは控えたほうが良いでしょう。そもそも満月の日はエネルギーが満ちて元気になるときなので、これに逆らってしまうと、落ち込みやすくなったり体調を崩したりしてしまう可能性があります」

生理や女性ホルモンと満月に関係はある?

満月が女性ホルモンや生理にも影響を与えるということを耳にしたことがある人もいるはず。しかし瀬戸先生によると、満月と女性ホルモンはあまり関係していないそう。ただし生理については、月の満ち欠けのサイクルが29.5日ほどなのに対し、生理の周期が28日ほどと似ていることから、月と生理の動きが一致することがあるといいます。

満月の時期になると体内のエネルギーが最大限高まりますが、満月の日が過ぎるとこれがバーンと弾けて、体に溜まったエネルギーやパワーが落ち着いていきます。実はこの流れとあわせて、満月に排卵期を迎え、満月を過ぎると同時に生理になるという人も多いそう。

moonlight shining over serene woman floating on back in tranquil mountain lake
Malte Mueller//Getty Images

満月の日に体調不良を起こしやすい人

ここでは、東洋医学の視点から満月に影響されやすく、体調不良を起こしやすいと言われる人たちの特徴を見ていきましょう。

瘀血(おけつ)になっている人

瘀血とは、血液の巡りが悪くなり、汚れた血液が一箇所にとどまっている状態を指します。満月の日は、血液の巡りが活発になるときですが、このとき瘀血の人の体内には、ドロドロで動きが鈍くなった血液が巡っています。そして、この汚れた血液が筋肉の膜に入ってしまう可能性もあるそう。

筋肉の膜は、筋肉がスムーズに収縮するのを助ける働きをもっていますが、この膜と筋肉の間に汚れた血が入ってしまうと、筋肉の動きがスムーズでなくなり、正常に動かなくなります。さらに、これが頭皮の筋膜にまで発生すると、筋膜生頭痛や緊張生頭痛などの疾患だけでなく、筋肉痛や生理痛がひどくなるなどのリスクも高まります。

瘀血になりやすい人

  • 甘いものが好きな人
  • 激しいスポーツをしているときに水分をちゃんと摂らない人
  • お酒をよく飲む人

痰湿(たんしつ)になっている人

痰湿とは、体内に老廃物や余分な水分が溜まっている状態を指します。主な症状としては、むくみやめまい、痰(たん)が出るなどが挙げられ、甘いものやアルコールの過剰摂取が原因となります。痰湿体質の人は、満月の日に起こる体内の水分の動きの変化についていけず、水の流れがせき止められてしまうため、体調不良を起こしやすいそう。

痰湿になりやすい人の特徴

  • 普段から痰が出やすい人
  • 鼻炎などのアレルギー症状がある人
  • 水分や冷たいものを過剰に摂取しがちな人

陰虚(いんきょ)になっている人

陰虚とは、体内の水分が不足している状態を指します。たとえて説明すると、お風呂の浴槽ほどの水量を沸騰させるのにはかなり時間がかかるけれど、その分熱が冷めにくいですが、やかんほどの水量だとすぐに沸騰するけれどすぐに熱が冷めてしまいます。これと同様に、身体の中の水分が不足していると、外界の影響を受けやすくなるのです。

つまり、体内に水分が少ない陰虚体質の人は、外気温の影響を受けやすいので、クーラーが効いた部屋では体が冷えやすく、太陽の下では体温が上がりやすいのが特徴。自分で体温や体調のコントロールをすることが難しいため、満月の日に体調への影響を受けやすいと言えます。

陰虚になりやすい人の特徴

  • 水分摂取量が極端に少ない人
  • 塩分を摂りすぎている人
  • ストレスを抱えている人
woman gasping for air above water
Malte Mueller//Getty Images

満月の日におすすめの過ごし方

ここからは、心身に影響を及ぼす満月と上手く付き合っていくためにおすすめの過ごし方をご紹介。体調を整えて満月から受ける影響を抑えるために、ぜひチェックしてみて。

朝~昼に意識したいこと

朝ご飯を食べる

体は昼間に最も活動的になり体温も上がっていくため、エネルギーが必須。朝ご飯をしっかり食べるのはもちろん、特に味噌汁や納豆などの発酵食品を積極的にとるようにしましょう。朝ご飯を食べることで脳が目覚め、一日のリズムがつくりやすくなります。

起きた時間の6時間後に5分間だけ仮眠をとる

体内のホルモンの関係で、起きた時間の6時間後には眠るサイクルが来るため、その際に5分ほど仮眠がとれると◎。少し眠って疲れが和らぐと、夜の睡眠にも良い影響が出て、深い眠りになります。また仮眠の際は、目を瞑っているだけでも体が睡眠モードになるのでおすすめです。

ナッツ類や旬のものを食べる

ナッツ類に含まれるマグネシウムやカルシウムなどのミネラルは、エネルギー代謝を促すため、エネルギーが満ちてくる満月の日に積極的に摂取したい食材。

また、季節にあわせて体のリズムがあると言われ、たとえば夏の季節にはトマトやきゅうり、スイカを食べると、体にこもった熱を自然に外に逃がすことができます。

一方で、アイスクリームやアイスコーヒーなどは、内臓が急速に冷えて血液の流れが悪くなってしまうため、体がむくみやすくなり、満月の日に影響を受けやすくなってしまうので注意しましょう。

ウォーキングをする

満月の日に最もおすすめの運動は、ウォーキング。運動不足だと感じるときは、1駅分歩いて、エスカレーターではなく階段を使うなど、ちょっとした運動を心がけましょう。

「満月の日に近づくにつれて、日中に積極的に活動をしたほうが良いと言いましたが、激しい運動をしなくても問題ありません。ハードな運動は、かえってエネルギーを消耗して疲れを感じさせるため注意しましょう」
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Malte Mueller//Getty Images

夜(寝るとき)に意識したいこと

激しい運動を控える

血液は、夕方から就寝時にかけて肝臓に集まってきて、血中の赤血球をつくるために必要な養分を蓄えます。

一方で、運動はかなりの量の血液を必要とするため、その時間帯に運動をしてしまうと、せっかく肝臓に集まってきた血液が全て筋肉にもっていかれることに。満月の日の夜に運動をする場合は、ウォーキング程度にとどめておき、激しい運動は控えるようにしましょう。

睡眠を質を高めるための環境をつくる

睡眠時は、眠りの質をよくするためにも、体を締めつけない、ゆったりとしたサイズのパジャマを着用するのがおすすめ。また、寝る直前のスマホの使用も控えましょう。

北枕で寝る

一般的に、不吉なことが起こると思われがちな北枕ですが、満月の日には北枕で寝るのが効果的。実は、地球上の磁気は南から北へ流れていて、足を南向き、頭を北向きにして寝ると、磁気が足から頭へ流れるとともに血液も巡り、血行が良くなると考えられます。

23〜3時の時間帯はできるだけ寝る

東洋医学には、心臓が中心になって動く「内蔵時間」という考え方があり、時間ごとに体のなかでメインの働きをする臓器が変わっていくとされています。23〜1時までは胆嚢(たんのう)の時間帯で、1〜3時までは肝臓が主に働く時間。胆嚢と肝臓は体のなかの細胞を休ませるように指令を出す臓器、と東洋医学では考えられているので、その時間帯である23〜3時は、できるだけ寝るようにしましょう。

「どんなに仕事が忙しくても、できるだけこの時間帯に睡眠をとってほしいです。体というのは不思議なもので、0時を超えた途端に次の日のモードに入ります。そうすると、前日の疲れを翌日に持ち越してしまうことになるので、前の日の疲れが取れにくくなるんです」

瀬戸郁保先生

瀬戸郁保先生
瀬戸郁保
1970年神奈川県箱根町出身。青山学院大学経営学部卒業後、日本鍼灸理療専門学校にて学び、鍼灸師・按摩指圧マッサージ師免許を取得。さらに北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で中医学・漢方薬を学び、国際中医師を取得。2004年東京の表参道に源保堂鍼灸院を開院し、その後漢方薬店薬戸金堂も併設。『黄帝内経』『難経』などの古医書を源流にした古代鍼灸を追究しながら、併せて漢方薬や気功など、東洋医学・中医学を幅広く研究し、開業以来多くの患者様のからだとこころの健康をサポートしてきている。さらに現在は東洋遊人会を主宰し、後進の指導にもあたっている。(株)薬戸金堂の代表取締役。著書に『長生きをしたければ、「親指」で歩きなさい』(学研)がある。