生まれつきの「斜視」を、TikTokやYouTubeなどのSNSでポジティブに発信しているしゃしみさん。

「自分と同じ斜視の人も含め、コンプレックスに悩む人を一人でも減らしたい」との思いから、「斜視あるある」や「完璧じゃなくていいんだよ」といったテーマの動画を投稿しています。けれどそんなしゃしみさんも、数年前までは斜視であることをコンプレックスに感じていたのだとか。

今回は、しゃしみさんが「コンプレックスを“チャームポイント”」ととらえるようになったきっかけや、前向きなメンタリティを手に入れるまでについて、詳しく伺いました。


――まずはじめに自己紹介をお願いします。

初めまして! 斜視のしゃしみと申します。「自分の思うコンプレックスは、実はチャームポイントになり得るんだぞ」っていうことを広めていきたいと思い、主にSNSで活動しています。よろしくお願いします!

斜視を隠していた過去

――過去に斜視であることにコンプレックスを感じていたそうですが、当時はどのように考えていましたか?

私は生まれつき外斜視といって、目が外側に向く斜視です。幼い頃は気にしていなかったのですが、物心がついた頃に自分が斜視だと気づいて。“人と違っている自分”に恐怖というか不安というか…劣等感のようなものを強く感じました。

小学生のときはクラスの男子に「どこ見てんだよ」とか「なんか目おかしいよ」とからかわれ、つらい気持ちになったこともあります。斜視の人のなかには意図して前を向けない方もいますし、私のように頑張って目に力を入れれば前を向くことができる人もいます。

私の場合、人前では斜視を隠すため、目に力を入れて過ごしていましたね。好きだった男の子の前では、必要以上に目を真っすぐにしようとして、内斜視気味になっていたこともありました。

 
しゃしみ

コンプレックスではなく
自分の武器に

――その後「チャームポイント」へととらえ方が変わったきっかけを教えて下さい。

20代を迎えた頃、ある知り合いの方に「斜視って可愛いよね」と言われたんです。当時はまだコンプレックスとして気にしていたので、内心どこか「はいはい、そんなことないですよ」という風に受け取っていました。

数年経ってふとそれを思い出したとき、「あれ、もしかして斜視って私の武器なんじゃないかな」と思ったんです。考えてみれば芸能界にもさまざまな人がいて、ありのままの自分の姿を武器に活動している人がいる。「私も斜視をコンプレックスじゃなく、“武器”にすればいいんだ」と思えたんです。

思えばその人の「斜視って可愛いよね」という言葉は、本当に嫌みのない、純粋な言葉でした。自分が斜視だということを「可愛くない」とか「劣っている」と一番に責めていたのは、自分自身だったんだと気付いたんです。

斜視であることを気にしていたらそれはコンプレックスになるし、逆に「人と違っていいことなんだ」と思えばチャームポイントになる。よくよく考えていくうちに、すべては考え方の問題だったんだと悟りました。

そんなきっかけで、今は斜視を“チャームポイント”としてとらえるようになりました。長い時間をかけて、ようやくそう思えるようになったという感じです。

――ご自身のチャームポイントをSNSで発信している理由を教えて下さい。

お話したように、ずっと斜視をコンプレックスに感じていました。それに加えて体型や顔のつくり、性格など、他にもコンプレックスがたくさんあって。きっとみんな、何かしらのコンプレックスは持っていると思うんですよね。

私には斜視の友人がいるのですが、その友人も自分の斜視にコンプレックスを感じていました。だから私がSNSで発信することで、みんなに「斜視は悪いことじゃないんだよ」と伝えられたらと思っています。

私のSNSには「斜視って気持ち悪い」とか「無理」というアンチコメントも書き込まれます。それでも私は「自分自身を一番に肯定すること」「斜視を気にする必要ないよ」、「私は斜視だけど、明るく楽しく生きてるよ」ということをみなさんに伝えられたらいいなと思って発信しています。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

自分を愛するための
ファーストステップ

――常にポジティブなしゃしみさんですが、そのパワーはどこからきていると思いますか?

明るく前向きな気持ちを持つためには、誰かに何かを言ってもらうのを待つのではなく、一番は「自分で自分のことを愛してあげる」ことだと思っていて。

「自分を愛する」というと少し分かりづらいかもしれませんが、私の場合は「認めてあげること」「許してあげること」と考えると理解しやすいですね。

太っているとか、こういう性格が嫌だとか…後ろ向きに考えてしまうことはたくさんあったのですが、そんな自分を認めて許す――。「私はこれでいいんだ」「斜視でいいんだ」と堂々としていることで、自然と明るく前向きな気持ちになれました。

「この私で何が悪いの?」くらいの気持ちを持つようにしていますね(笑)。

――そういった前向きな気持ちを持てるようになるまでに、具体的にどんなことをしましたか?

私は小学生の頃から22~23歳くらいまでは本当にメンタルが弱くて、そんな自分を変えたいという気持ちが強かったんです。もうこれは自分で直していくしかないな、誰かに助けてもらうのを待っていてはダメだなと思いました。

私が意識的に行ったのは「何でもないことでも自分を褒めること」です。「今日も起きてえらいわー」とか「仕事に行ってえらいわー」とか(笑)。何でもいいんですよ。斜視に関わることでも、そうでなくても。

たとえば、休日やろうと思っていたことをせず、ダラダラ過ごしてしまったとします。そんな自分のことも、好きでいていいと思うんです。何かできたら褒めるし、できなくてもいい。ありのままをまずは好きでいてあげる、認めてあげることが大事なのかなと。難しいことではあると思うんですけどね。それを続けて、最近になってやっと前向きなメンタリティを手に入れられました。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

――しゃしみさんの今後の目標を教えて下さい。

今は会社員としても働いていますが、今回こうして自分の活動を発信する機会を頂きましたし、YouTubeなどメディアでの発信に全力で打ち込む時間を増やしていきたいなと思っています。

まだまだコンプレックスを抱えて悩んでいる方はたくさんいらっしゃると思うので、「斜視の私がこんなに明るく元気にやってますよ」ということをどんどん発信して、コンプレックスに悩む人を一人でも減らしたいです。

 
しゃしみ

好きになるのに
時間がかかってもいい

――最後に、コンプレックスに悩んでいる方に向けてメッセージをお願いします。

「もしかしたら自分を一番責めてるのは、自分自身かもしれない」と伝えたいです。人と違う自分を許してあげてほしいですし、愛してあげてほしいです。

とはいえ、明日からすぐに自分を愛せるようになれるかというと、そんなに簡単な話ではないですよね。難しいことだからこそ、真剣に向き合う甲斐があるのかなと思います。

すぐに出来なくても絶対に責めないでほしいし、時間がかかるものだから焦らなくて大丈夫。この記事を読んで、「私はこうはなれないな」と感じてもいいと思います。ゆっくりで良いので、日々自分を認めて、愛してあげて下さい。

人間は工場で作られているわけではないから、みんな違うのは当たり前です。人と違う=劣っているわけではない。それは、“個性”なんだと私は思います。

そして個性は“チャームポイント”として、堂々と前向きにとらえてもらえたらと思います。一緒に真っすぐ前を向いて行きましょう!