誰しもが、日常生活のなかで、多かれ少なかれ不安を感じながら過ごしているもの。仕事のこと、多忙なスケジュール、パートナーや恋人、家族や友人との関係…。そして一度悩みはじめると、次から次へと負のイメージが湧いてきて、マイナス思考から抜け出せなくなってしまうことも…。

本記事では、今まさに不安な気持ちに駆られているあなたに、気持ちを落ち着かせるための方法を専門家の知見を交えてお届けします。

生活習慣を見直して予防する

    病気の最良の薬は「予防」だと言われますが、メンタルヘルスについても同じことが当てはまります。予防の第一ステップは、日ごろからの十分な睡眠、適度な運動、栄養バランスのとれた食事。

    とはいえ、心のバランスが不安定なときには、なかなか日常生活を立て直すのが難しいこともあるはず。無理に“完璧”を目指さず、まずは「美味しいものを食べて栄養をとる」など、自分にできることからはじめてみましょう。

    その日の目標を立てる

      不安を解消するための実践的な方法の一つが、朝のうちに「その日の目標を立てる」というもの。

      カリフォルニア州の認定セラピストであるキャサリン・アセンズ医学博士は、その効果について次のように話します。

      「起きてすぐにニュースや最新ドラマをSNSで見る代わりに、その日の目標を設定するための時間を少し取ってみましょう。たとえば、『今日は自分にも他の人にも優しくいよう』など、抽象的なものでも問題ありません」

      具体的にスケジュールを立てる

        一日の目標が決まったら、カレンダーか手帳に、運動タイムやリラックスタイムを含めたその日のスケジュールを書いてみましょう。

        アセンズ博士によれば、ToDoリストがあることで脳が具体的にやるべきことを認識し、余計なことを考えなくて済むのだとか。そして、決まったアクティビティに集中すると、不安も抑制されるそう。

        「頭の中を様々な考えが駆け巡っていると、自分が何をすべきか分からずに、不安を感じてしまいます。書き出すことで、自分が何をしようとしているのかが把握しやすくなり、重圧に押しつぶされずにすむようになるはずです」
        専門家が指南!不安な気持ちを落ち着かせるための12の方法
        MiMaLeFi//Getty Images

        5分間の「悩む時間」をつくる

          何時間も悩んでしまうという人は、むしろ悩むための時間を確保することで良い方向に働くケースも。

          ニューヨーク市で活動する臨床心理学者のアーネスト・リラ・デ・ラ・ロサ医学博士は、一見すると逆効果とも思えるこの手法の効果について、次のように解説します。

          「自分の感情と向き合う時間をあらかじめ決めておくと、不安な思いをある程度コントロールできます。心配事があると“今”に意識が向きづらくなりますが、後で悩む時間があると自分に言い聞かせることで、脳がその心配事を見逃しやすくなるんです」

          まずは、不安な気持ちについて考える時間を、1日5分ほど確保することから。他の時間に悩み事が頭の中をよぎったら、「後でちゃんと考える時間をとってある」と思い出しましょう。

          悩みタイムになったら、気になることを書き出すのがおすすめだそう。そして、きっちり5分間かけて熟考しましょう。いざ書き出して深く向き合うと、絶望的だと思っていた状況が、意外とそうでもなかったと気づく場合も。

            アセンズ博士によれば、心配事は書き出すことで「事実」を把握しやすくなるとのこと。

            「不安な気持ちは、最悪のシナリオを想像してしまうために生まれることもあります。その心配事が、あなたの脳の中で膨らんでいったものではないか、書き出した文章を前に自分に問いかけてみましょう」

            考え方の“クセ”を知る

              心配事を書き出すことで、自分の思考パターンや悩みの種となりやすいテーマを見極められるようになるそう。

              「自身のマイナスの思考パターンをより意識すると、いざというときに不安な気持ちを特定しやすくなります」と、デ・ラ・ロサ博士。たとえば次のようなパターンが挙げられます。

              • 何も起きていない時点で、ネガティブな憶測を立ててしまう
              • 目の前の事実に対し、ネガティブな思い込みをしてしまう
              • 自身の対応能力を過小評価してしまう
              • “すべき”ことについてばかり考えてしまう

              自分の“負の思考パターン”を特定できると、不安な気持ちから非論理的な想像をしていることが見極められるようになります。それらの思考パターンを、より合理的で論理的な思考パターンに置き換えるとダメージは減るはず。

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              「大丈夫」と、言い聞かせる

                不安を書き出すときには、そこに「過去に自分が行った対処法」を書き添えることも効果的です。

                デ・ラ・ロサ博士によれば、これまで似たような状況に置かれたときに、どう対処したかを思い出すことで「もうダメだ」という悪魔の囁きを打ち消すことができると言います。

                「この頭の体操をすると、不安で感情が高ぶっているときでも論理的に考えることができます。前にも困難な状況を切り抜けられたのであれば、今回も大丈夫だと自信が持てるでしょう」

                不安解消のための「3-3-3ルール」

                  瞬時に不安な気持ちを落ち着かせる方法として、多くのセラピストが推奨するのが「3-3-3ルール」。

                  臨床心理学者であり、うつ病研究財団「Hope for Depression」のメディアアドバイザリーグループのメンバーであるミシェル・ゴールドマン心理学博士は、それを発展させた「5-4-3-2-1ルール」をおすすめしています。

                  「部屋を見渡して、見えるものを5つ、感じることを4つ、聞こえるものを3つ、香りがするものを2つ、味がするものを1つ挙げてください。こうして五感を使うことで“今2を意識することができ、脳が上の空になるのをやめて、身体の中に戻ってきます」
                  「一人のときであれば、声に出して言うことで、さらに自分が今ここにいることに意識が剥きます」

                  連想ゲームをする

                    大きな不安に襲われて、即効性のある不安対処法を探している人もいるはず。デ・ラ・ロサ博士は、そういう場合には「連想ゲーム」も効果的だと言います。

                    「特定のテーマから連想する言葉を、頭の中でひたすらリストアップしていきます。たとえば、『80年代のバンドといえば?』や『アイスクリームのフレーバーをできるだけ挙げてみる』など。こうすることで脳をフル回転させることができます」
                    「そのテーマが楽しければ楽しいほど不安は解消され、きっかけとなった状況から気をそらすことができるんです」

                    どこにいてもできるので、公衆の場で不安に襲われた場合や、その場から離れられない場合にも有効です。

                    view from above alphabet soup in bowl
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                    不安を、別の感情と置き換える

                      可能であれば、不安な感情を他の感情とすり替えるというのも一つの手。たとえば笑えるYouTube番組を観たり、 背筋が凍るようなサイコスリラー小説を読むなど、不安な思いをよりもドキドキ・ワクワクする感情と置き換えてしまいましょう。

                      「心から笑うと、たとえ一瞬だけだとしても不安感が減ります。気が軽くなる瞬間が少しあるだけでも、気持ちがどん底に落ちるのを止められることもあるんです」

                      コメディであれサスペンスであれ、気が紛れることに感情的なエネルギーを向けることができる点では、同じ効果が期待できるとのこと。

                      体を動かす

                        「運動をすることで、不安のエネルギーが分散され、体の緊張もほぐれやすくなる」と、デ・ラ・ロサ博士。

                        研究からも、体を動かすことで不安に伴う症状が大幅に減り、気がかりなことから意識が離れ、負の感情に対する耐性が強くなることが示されています。近所を10~15分ジョギングするだけでも違いがあるのだとか。

                        「見えるもの、聞こえるもの、感じるもの、建物、木々、 周囲の人々、天気、あらゆる音に集中してみましょう。そうしているうちに、ふと不安な思いがよぎるかもしれません。そうしたらまた、五感にフォーカスして“今”に意識を戻すのです」

                        これを繰り返すうちに、意識を「今」に戻すことがどんどん楽になってきて、この頭の体操も時とともにより効果を発揮するようになるとのこと。

                        自然の中を散歩する

                        自然の中を散歩するのも効果的。

                        オープンアクセスジャーナル<International Journal of Environmental Research and Public Health(環境研究と公衆衛生の国際ジャーナル)>に掲載された2018年の調査では、森の中を散歩した被験者が、都会を散歩した被験者よりも緊張感、怒り、敵意、落ち込みの感情が減り、前向きな感情が高まったと報告されています。

                        もし外に出て自然に触れられるなら、メンタルヘルスに良い効果が期待できるはず。

                        冷たい水で気持ちを落ち着かせる

                          心配で押しつぶされそうなときは、体に小さなショックを与えることで和らぐことも。

                          ゴールドマン博士もデ・ラ・ロサ博士も、冷たいシャワーを浴びたり、氷を握ったり、手首に冷水を流したりすることをすすめています。

                          これは、冷たいプールに飛び込んだときに一瞬息をのむのと同じ原理。体が寒さに集中せざるを得なくなり、ストレス要因から意識が離れるという仕組み。一時的な対処法として覚えておくと良いかもしれません。

                          ※この翻訳は、抄訳です。
                          Translation: Takako Fukasawa(Office Miyazaki Inc.)
                          GOOD HOUSEKEEPING