睡眠について語られるとき、必ずといって良いほど耳にする「レム睡眠」という言葉。「レム睡眠(REM: Rapid Eye Movement=急速眼球運動)」は睡眠時のサイクルの一つで、心拍が早まり、呼吸が活発になり、そして眼球が急速に動き出すという特徴があります。リアルな夢を見るのも、この時間帯なんだそう。

本記事では、専門家の解説に基づいて「レム睡眠のサイクル」について解説。レム睡眠にうまく到達できない理由や、快適な生活に必要なレム睡眠の長さなどを知り、睡眠習慣の改善に役立ててみて!

レム睡眠とノンレム睡眠の関係性

睡眠の専門家が長年にわたって蓄積してきたデータによると、脳はレム睡眠の最中に、数日間の短期記憶を長期記憶に置き換えるんだそう。また、レム睡眠は学習能力や気分のコントロールなど、認知機能の健康維持にも関係するという研究結果もあるとのこと。

ここまで聞くと、「レム睡眠が長い方が良いのでは?」と思えるけれど、それほど単純な話ではなさそう。

レム睡眠は、ノンレム(非急速眼球運動)睡眠と呼ばれる睡眠ステージ(1〜3)の後にやってくる長いステージ。そのため、レム睡眠で認知機能を高めるためには、その前の睡眠ステージの質が重要になってくるんだそう。

「ノンレム睡眠状態の1~3ステージは、推察力、持続力、記憶力をサポートすることで知られています」と語るのは、睡眠クリニック「Sleep Dallas」の創立ディレクターであるケント・スミス医師

「どのステージも約90分以上続きますが、ノンレム睡眠は全睡眠時間の最初の70〜75%を占めることが多く、このステージを飛ばして先にレム状態に到達することはありません。このサイクルは通常、一夜に3〜4回繰り返されます」
「(レム睡眠とは)脳の活動が活発になり、鮮明な夢を見たり体の筋肉が一時的に麻痺する状態を指します。脳が感情的な情報に処理するためには、心身の回復が不可欠です。十分な睡眠、およびレム睡眠が得られないと、日中の思考、感情、そして全身の健康や生活の質に悪影響を及ぼす可能性があります」
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なぜレム睡眠が重要なの?

夜の早い時間帯、身体は落ち着きを取り戻し、心身の体力を回復させようとするもの。レム睡眠は、最短の場合で眠りについてから数時間後に発生。通常、成人の場合、一晩に3〜5回のレム睡眠が発生し、夜が更けて早朝になるにつれてレム睡眠の時間が長くなるものなんだとか。

レム睡眠のサイクルは、就寝前の一般用医薬品の服用、慢性的なアルコール摂取、睡眠不足などで簡単に乱れてしまうもの。

睡眠医学の専門家であり、ニューヨーク大学ランゴン校のてんかん・睡眠センターのメディカルディレクターであるアルシビアデス・ロドリゲス医師は「レム睡眠の周期(またはその不足)が、不眠症の人が経験する身体的・精神的問題と大いに関係しているのです」と説明。

またスミス医師もロドリゲス医師とも、十分な睡眠がとれず、複数のレムサイクルをきちんと通過しないと、「慢性的な睡眠時無呼吸症候群や不眠症などの睡眠関連の問題に加え、心血管疾患、糖尿病、認知症、うつ病などのリスクが高くなる」という一致した見解を持っているそう。

「レム睡眠」と「深い睡眠」は違うものなの?

ロドリゲス医師によると、深い眠りは「N3」と呼ばれる睡眠ステージと関連しており、レム睡眠(=睡眠の最終段階であるN4ステージ)とは直接関連していないのだとか。

「深い眠りは、通常、レム睡眠の前に起こり、最初に眠りについてからかなりの時間が経過しています。この時点で体はリラックスしており、脳のパターンも目が覚めていたときとはまったく異なっています」

体は毎晩、これらのサイクルを繰り返し、通常は目を覚ますまでに3〜4回のサイクルを繰り返しているもの。

就寝中に繰り返される各睡眠サイクルは以下のとおり。

ノンレム睡眠・N1

このステージは非常に短く、うとうとしたり、心身の機能が低下したりしている状態。時間的には10~20分程度で、周りで何かが起こっているとすぐに目が覚めてしまう段階。

ノンレム睡眠・N2

「このステージの睡眠は、一晩を通しての睡眠時間全体の約50%を占めます」とスミス医師は説明。またロドリゲス医師は「N2ステージでは、筋肉は弛緩し、体温は少し下がり、脳はこの時に『遅い波』(またはデルタ波)と呼ばれるものを出し始めます」とコメント。

ノンレム睡眠・N3

このステージが、一般的に「深い眠り」と言われるもの。脳の活動は活発になるものの、体の動きがゆるみ、呼吸や脈拍もゆっくりとした状態に。

「このステージは体の回復と成長にとって、大変重要です」と、スミス医師。

レム睡眠

とても深い眠りのステージ。ほとんどすべての筋肉のコントロールを失い、呼吸も不規則になり、夢を見始めます。

レム睡眠はどのくらい必要?

乳児や幼児はレム睡眠時間の方が長いものの、大人は通常、ノンレム睡眠サイクルの時間が長くなるのは普通のこと。ロドリゲス医師は「ほとんどの成人は睡眠時間の少なくとも20%をレム睡眠に費やすべきです」と説明。

年齢層によって、毎晩達成すべき睡眠時間の目安は異なるそう。全米睡眠財団は、成人の健康的な睡眠時間の基準を毎晩7〜9時間としているので、平均8時間の睡眠であれば、その20%は約1.6時間(正確には96分)という計算に。

レム睡眠を自然に増やす方法

私たちの体は毎晩4つの睡眠ステージを何回か繰り返しているもの。レム睡眠は(適度な時間に就寝した後)最後に発生することが多く、「特にレム睡眠だけを確保する方法」はないのだとか。

睡眠の質を高めるためには、「睡眠習慣を改善することが大切」と考える専門家が多いよう。快眠のために身につけておきたい習慣や、寝る前に役立つツールやグッズはいろいろあるけれど、今回は今すぐできる睡眠習慣の改善方法をアドバイス。

起床時間を一定に

平日だけでなく、週末も同じ時間に起床すること。

「週末は、就寝時間が遅くなったり朝寝坊しがちです。でもそうすることで気分が悪くなり、心臓病のリスクが高くなることも。起床時間の乱れは、包括的に考えると健康状態の悪化に繋がることが研究でわかっています」と、スミス医師は指摘。

就寝前の軽食は適切なものを選んで

就寝前、スパイシーなものや甘いものを食べるのは控えて。体が自然に眠りにつくのを助けるような軽食を食べるのがベスト。

就寝前の飲酒は控える

アルコールは睡眠サイクルの中で自然に起こる身体機能を阻害してしまうので、就寝前の飲酒は控えて。

照明を落とす

就寝1時間前までに照明を暗めに落として(または完全に消して)おくと、体内時計に就寝時間を知らせることができるそう。「光は体内のメラトニンホルモンの分泌を抑制します。寝室の照明は落としておくことが重要です」と、スミス医師。

電子機器を寝室に置かない

就寝前の1時間は、スマホ、パソコン、テレビなどの電子機器を消すこと。ブルーライトは他の光と同様に、睡眠ホルモンに影響を与える可能性があるそう。この習慣を実践するのはなかなか難しいので、ある程度強い意思が必要かも。

「まず寝る15分前から始めてみましょう。その後30分前、1時間前と時間を前倒ししていくとうまくいきますよ」と、スミス医師はアドバイス。

寝たふりをしない

「『すぐには眠れないかも』と不安に思ったり、『眠くならない気がする…』と焦りを感じたなら、一旦ベッドから出ましょう」とスミス医師。

「ベッドに入ったけれども10〜20分たっても眠れないなと思ったら、そこで我慢しなくても良いのです。別の部屋に移動して、読書や瞑想など、リラックスできることをしてください」

この翻訳は、抄訳です。
Translation: 宮田華子
GOOD HOUSEKEEPING