同性カップルの結婚や養子縁組が公的に認められるなど、セクシャルマイノリティと呼ばれる人々が市民権を得つつあるロサンゼルス。そんなLGBTQフレンドリーな街に拠点を構え、ハリウッド女優として活躍する祐真キキさんが、レズビアンを公言する滝沢ななえさんと対談。コスモポリタン編集長の紹介がきっかけで親しくなったという二人が、海外のLGBTQ事情からセックスに対する本音まで、赤裸々に話します!

――お二人はどうやってお知り合いになったんですか?

キキ:きっかけは(コスモポリタン編集長の)白重さんのご紹介です。「絶対に気が合うと思うよ!」って言われて、一緒に食事に行って以来の仲ですね。

ななえ:今では一緒に2丁目に飲みに行ったりもするよね(笑)

キキ:不思議なくらい、すぐに打ち解けられたよね! ななえちゃんはレズビアンであることを告白してからしばらく経つけど、自分のセクシャリティをオープンにしてから何か変わった?

ななえ:生活が大きく変わったということはなかったけど、自分の中で殻が破れたという感覚はあった。以前は職場で自分のプライベートについて触れられたくなくて、距離を取ってしまうようなところがあったんだよね。でも、オープンにしてからはそんな必要もないし、素の自分でいられるっていうのは大きい。生きやすくなったと思うよ。

キキ:本来なら隠す必要がないことなんだけどね…。日本の社会全体で、早くそういう流れになればいいのにな。

ななえ:ゲイの友達いわく、男性同士の同性愛者に対する偏見の方が根強いみたい。男社会の中で自分がゲイだってオープンにするにはまだまだ偏見が強くて、会社では隠すしかない…って。逆に女性の同性愛者に対しての方が社会では寛容なんじゃないの? って話してた。

キキ:その辺りに関して言うとアメリカはすごいオープンだし、私のいる業界についてはおそらく半分以上が“セクシャルマイノリティ”と呼ばれる人たち。トランスジェンダーの方も多いしね。カミングアウトという概念すらないから、仕事相手に恋人を紹介するのも普通だし、同性のパートナーや養子縁組した子どもを現場に連れてくる監督もいるよ。ただ、アメリカも地方によっては話が違ってくると思う。宗教上、同性愛が認められない地域もあるぐらいだから。

――ハリウッドにはLGBTQを題材にした作品が多くある一方で、LGBTQの当事者から「演じる役者が当事者じゃないからリアリティがない」という声もあります。お二人はこの意見をどう感じますか?

ななえ:私は当事者として、LGBTQの役をその当事者の人に演じてもらいたいとは特に思わないかな。ストレートの役者さんが演じることによって、逆に同性愛に対する理解が深まる場合もあると思うし。

キキ:この話って逆も然りで、ストレートの人がLGBTQの役を演じられないのであれば、LGBTQの人はストレートの役を演じるなって話になりますよね。もちろん、同性愛をバカにしたような作品は論外ですけど、これに関しては私は何の問題もないと思う。LGBTQに限らず、例えば日本人が中国人を演じてもいいと思うし、中国人が日本人を演じるのだってあり。役者って、何者にでもなれる存在ですから。

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Cédric Diradourian

――世界的に見れば、結婚や養子縁組が認められるなど、同性カップルが公的に市民権を得られる流れが広まりつつありますが、日本においてはごく一部の自治体が同性カップルのパートナーシップ制度を導入するに留まっている状況です。ななえさんには女性のパートナーがいらっしゃいますが、当事者としてこういった制度についてどうお考えですか?

ななえ:まず、私自身や私の周りにいるLGBTQの友人たちの中では、まだそういった制度を利用している人の話は聞いていません。日本がまだカミングアウトできない状況にあるから、そこまで踏み出すに至らないんだと思う。でも、今のパートナーとの将来を考えると、パートナーシップ制度が導入されることでお互いに安心感が得られるというのはあるかもしれませんね。以前はそういった制度などについてはあまり深く考えず、ただただ、LGBTQの存在を世間に認めて欲しいという程度だったんですが、ある時、母から「なぜ同性愛者であることを世間に告白してまで、メディアに出たりしているの? もし、あなたが死んだらパートナーの子はどうするの?」って、はっきり言われて。その一言で考えが変わりましたね。

キキ:パートナーとか結婚とか当事者同士の話なのに、国の制度によって規制されている。でもこれって、規制をなくしたところで誰も損しないし、救われる人が増えるだけのような気がするんですよね。LGBTQの当事者はすごく窮屈で生きづらいだろうから、ストレートの人達と同じように生きられるようになって欲しい。

ななえ:幸い、私の周りには理解のある人が多くて救われているけど、でもやっぱり、バレーボール選手時代には自分がレズビアンであることを言い出せなくてきつい思いをしていました。今では地元の友達の多くが私のセクシャリティを知って、認めてくれているので、とても有難いと思っています。一方で、真剣交際であることを伝えるのはなかなか難しいんですよね。もしパートナーシップ制度があれば、分かりやすい形にはできるのかなと思います。人それぞれの幸せの形を認め合っていける社会になればいいですよね。

――日本ではカミングアウトができない分、同性愛者同士の出会いの場がすごく限られているように感じるのですが、ななえさんは現在のパートナーの方とどうやって出会ったんですか?

ななえ:以前は、出会いといえばSNSやマッチングアプリがほとんどでした。でも、自分がレズビアンだとオープンにしたことで、今のパートナーとは自然に出会うことができたんですよ。彼女はストレートだったということもあって最初は拒まれたんですけど、それを1カ月間ぐらい追いかけ回して(笑)。私自身も、相手がストレートというのは初めてだったけど、最後は受け入れてくれました。交際を始めて、今ちょうど1年ぐらいになりますね。

キキ:自分のセクシャリティって、意外と曖昧なものなのかもしれないですよね。私も中2の時にすごく気になる女性の先輩がいて、その時はただの憧れだと思っていたんですけど、今考えたらあれは恋だったなって。だって毎日会いたかったし、褒められたかったし、それって男性に対する想いとまったく変わらないじゃないですか!

ななえ:自分はレズビアンを公言してるから、ストレートの人からセックスに関する質問をよく聞かれるんです。「同性同士って、どうしてるの?」なんて聞かれるんですけど、同じですよ(笑)。自分も同じカラダをしてるから、どうしたら気持ちいいとかなんとなくポイントがわかるんですよね。もちろん人ぞれぞれの部分もあるんですけど。

キキ:私は、レズビアンやゲイの友達とごく普通にセックスの話をしますね。そこはストレートの人とそういった話をする感覚とまったく変わらないかな。ななえちゃんは男性とのセックスはまったく無理なの?

ななえ:男性とのセックスはまったく無理で…。自分がレズビアンであることを意識する前から、男性とカラダを重ねるみたいなことは本当に嫌だった。二人で遊びに行ったり、手を繋いだりするのはいいんですけどね。学生の頃に付き合った男性に「俺の彼女がセックスを嫌がるんですけど、どうしたらいいですか?」って、病院に相談しに行った相手がいて! 相手は努力をしてくれたのに私がはっきりしないために応えることができなくて、今は本当に申し訳ないことをしていたなと思っています。

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―― ななえさんのInstagramを拝見して気づいた点があるのですが、以前と比べて、最近はすごくボーイッシュな格好をされていますよね。何か環境や心境に変化があったのでしょうか?

ななえ:今お付き合いしている彼女が元々はストレートだったから、相手の好みに合わせている部分はあります。私は見た目に関してこだわりはないので、それで二人の関係がうまくいくんだったらその方がいいなって。まだ髪が長くてお化粧していた頃に、かわいいね、きれいだねって言われるのも嫌じゃなかったし、今のボーイッシュな自分も好き。

キキ:好きな相手に好みを合わせたくなるっていうのは、もちろん男女関係なくある想いだもん。固定概念に捉われずに好きな格好で、愛する人と堂々と愛し合える、境界線のない世界で生きていきたいよね!