「女性起業家」という言葉を耳にするようになった昨今。起業をするのに興味があるけれど、どこからはじめればいいか分からないし、ましてや海外でなんて遠い夢のようなお話…という人も多いはず。
そこで、日本の枠を飛び出し、海外で、それも自分自身が情熱のある分野で会社をおこし、最高のチャレンジを経験した先輩に起業までの道のりを伺いました!
シンガポールで起業した平野未来さん
渡航した年齢:27歳
起業した年齢:27歳
滞在期間:1年6カ月(ベトナム)、6カ月(タイ)、 3年(シンガポール)、 1年(台湾)
2012年に「シナモン(Cinnamon)」をシンガポールに創設、ベトナム、タイ、台湾などアジアの国々にも拠点を開拓してきた平野さん。スマートフォン向けのアプリの開発を経て、現在は人工知能(AI)事業を展開されているそう。海外でのコネクションがゼロの状態からスタートし、今では現地で精力的に事業を拡大させてきた彼女の道のりにフォーカス!
―起業されたきっかけを教えてください。
今の会社は私にとって2社目の起業なんです。以前は、東京大学大学院在学中にIT企業を立ち上げました。当時から海外で挑戦したい、という思いはあったのですがチームもクライアントも日本にいましたし、まずどのようにして海外でビジネスが展開できるのか分からず、海外進出は叶いませんでした。1社目は2011年にミクシィに売却し、私もしばらくミクシィで働いたのですが起業家としての働き方が自分には合っている、という思いがあり…。2社目の起業は最初からグローバルにビジネスを展開するべく、2012年にシンガポールに「シナモン」を創設しました。
―まず初めにベトナムに開発拠点をつくるために移られたそうですが…。
もともとシンガポールに移住するつもりだったのですが、起業する前にユーザー調査で訪れたベトナムに運命を感じ、アプリの開発拠点にするために移住しました。はじめは2週間ほどの滞在予定だったんです(笑)。ベトナムにはスキルの高いエンジニアがたくさんいて、人件費が安いということも開発拠点に良いと思いましたね。
日本に荷物を取りに戻り、その後にベトナムで開発をスタートしました。
―ベトナムで開発をはじめたときに大変だったことは?
やはり人事採用においては苦労しました。まず、現地の会社を通してエンジニアを採用したのですが、雇った社員の人たちがいきなり昼寝をはじめたり、仕事が終わっていなくても定時で帰ってしまったりと、ミスマッチばかりでした。モチベーションにギャップを感じることが多々ありましたし、なかなかプロジェクトが計画通りに進みませんでした。日本人は仕事に「やりがい」を大切にする人が多いと思うんですけど、それよりも大学を卒業してるから高額な給与をもらえる、という金銭のために働く人材に初めのうちは出会うことが多かったです。結局2、3カ月たってから最初に雇った社員全員に辞めてもらうことにしました。最初の1年間は失敗続きで、とても苦戦しましたね。
日本と違ってベトナムでは何もないゼロの状態からネットワークを作り上げていかないといけませんでした。現地のエンジニアのコミュニティーに入り込んだり、セミナーの機会を設けで登壇して話したり、ということを一歩一歩着実にやっていった結果、今はとても優秀で自社プロダクトに携わることへのモチベーションがある人材を雇うことができています。現地に住んで積極的に活動をしたからこそ、体制を立て直すことができたと思っています。
―その後、シンガポール、タイ、台湾にはどのように拠点を展開されていきましたか?
ベトナムと同様、実際に現地に住んで自分の足でネットワークを広げていく、という活動を各国でしていきました。あと、大切なのは自社のブランディングを高めていくこと。自分で人を集め、セミナーを開いて面白いトピックについて話すという活動をしていきました。そうすることで現地の人が興味を持ってくれ、素晴らしい人材にリーチできることが多かったです。やっぱり会社を運営していくうえで、人材が本当に命なので!
―なぜ本社をシンガポール、マーケティングをタイと台湾に設立されたのですか?
競争が激しいアメリカに武器なしで行くのは難しいこともあり、法制上外国人にとって起業がしやすい国であるシンガポールを本社に選びました。
タイと台湾にマーケティング拠点を置いたのは、特に日本文化がアジア圏の中でも浸透していて、日本人の感覚を活かしてサービスを普及させやすいと思ったからです。
現在、各地に社員は20人ほど、アルバイトを含めると30人ほどいるのですが、拠点間はビデオチャットなどでコミュニケーションをとっています。また、チームの結束を強くするために約3カ月に1度、メンバーを集めて合宿を行い、チームを組んでサービス企画のプレゼンをするなどのイベントを行っています。
―今後の目標を教えてください。
今取り組んでいるのが人工知能(AI)の事業なのですが、AIがビジネスなどの幅広い分野で活躍できる可能性を発信していきたいと思っています。ベトナムで150人以上の応募者の中から選び抜いた優秀な15人のエンジニアに、ビジネス特化型のAIスペシャリストの育成プロフラムを受講してもらい、開発に取り組んでいます。人材業界での面接のスケジューリング、法律、医療などマルチな場面で効率よく仕事を進めていただけるように、アジアで開発した技術を世界に広めていきたいです。
―海外で起業することに興味のある読者へメッセージをお願いします。
私自身、海外へは何のツテもなく、語学力も中学レベルの英語力で海外渡航しました。それでも今では各国にネットワークを築くことができ、英語を使ってビジネスができるようにもなりました。
現在の語学力や、海外に知り合いがいないし…と、心配する必要はありません。そして、実際に現地で得られる情報はネットや本から調べるものとは濃度やスピードがまったく違うので、日本で悩んでいる時間はもったいないと思います。まずは、ぜひ海外に飛び出してみてください!
平野未来
東京大学大学院修了。在学中にIT企業「ネイキッドテクノロジー」を創設し、2011年にミクシィに売却。2012年に共同創業者とシンガポールで「シナモン(Cinnamon)」を起業し、タイ、ベトナム、台湾にも拠点を開拓。自身も研究者時代に人工知能(AI)を専門にしていたことから、AIラボをベトナムに設立し、人工知能(AI)事業に取り組んでいる。