自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

GASTROMOTIVA(ガストロモティーバ)」代表取締役社長 ニコラ・グリツカさん

【私の生き方】「食」を通して社会問題に立ち向かう女性の強さに迫る

ブラジルを拠点に、食を通して世界各地の社会問題に取り組む会社「GASTROMOTIVA(ガストロモティーバ)」。そのCEOを務めるニコラさんは、以前は世界経済フォーラム、ジャーナリズムなどのキャリアを通して世界の問題に直面してきた女性。いつも笑顔を絶やさず自然体でありながら、物怖じせず新しいチャレンジに立ち向かっていくニコラさんの強さに迫ってみました。

―学校を卒業後、国際機関で働かれていたそうですが…。

生まれたのはポーランドですが、ドイツやアメリカで育ちました。その後、スイスのホスピタリティ・マネージメントの学校に入り、ファッション業界やホテルなどでインターンシップを経験しました。そして卒業して、はじめに就職したのが世界経済フォーラム(ジュネーブに本部を置く世界情勢の改善に取り組む国際機関)。そこでの私の仕事内容は、環境や社会問題の改善に取り組んでいる企業とコミュニケーションをとることでした。2年半ほど働いた時に、あるカンファレンスで出会ったジャーナリストの女性が私の仕事への態度や人間性を気に入ってくれ、「一緒に働かない?」と声をかけてくれました。それは、『TIME誌(ニュース誌)』へ世界の国々で調べた経済レポートを作成するという仕事でした。異業種からの急なオファーで驚きましたが、興味があることだったのでトライしてみることに!

―その後転職されたジャーナリズムでは、どんな経験をされましたか?

様々な国の現地の人たちと語り合うことで、人間性が豊かになった

各国の政府が、経済的にどんなことに1番力を注いでいるのか、その分野についてレポートを書くのが仕事内容でした。一番初めの任務先の国はヨルダン。現地に滞在して政府やビジネスマン、株主などいろんな人にインタビューをしました。仕事で学ぶことはもちろんたくさんありましたが、現地の人々と宗教や価値観について深く語り合った経験が、人間として私の内面を豊かにしてくれました。このとき、言葉も文化も違う国の人と打ち解けるのには「共通点」を見つけることが鍵だと学びました。これは、国同士だけでなく日常の上司などにも言えること。共通点があると、グッと親近感が沸くんです。

このジャーナリズムの仕事で他にもタンザニアやメキシコなどに滞在しました。メキシコでレポートの調査をしていた時に今の婚約者に出会い、ジャーナリズムのキャリアをやめて彼の都合でスイスに戻ることにしました。

―ジャーナリズムのキャリアを積まれたあと、以前の職場に戻られ、大学院にも通われたそうですね。

学んで、すぐ実践できる。社会人になってから大学院に通うのは、自分を効率よく高めることができる!

スイスへ帰国してから、はじめは人生の休暇のつもりで、ずっとできなかった趣味の絵画やスポーツを楽しんでいました。でも、やはり暮らすためには働かないといけなくて(笑)。以前働いていた世界経済フォーラムの上司がラテンアメリカを担当に働ける人を探していたようで、また働き始めることになりました。

今回は政府を対象に働くことになったのですが、学生時代に政治を専攻していたわけではないので、仕事のなかで知識不足に感じることがあり…。仕事後や週末に大学院に通うことにしたんです。当時はとても大変でしたが、今思うと自分を高めることができた時期でした。社会人になってから学校に通うと、学んだことをそのまま仕事で実践できるので、学生のときよりも知識が身につくんです。そして修士を取得した頃には、周囲からも成長が認められて昇格。社会人として大学院で学ぶのは、とても価値があるものになるのでいろんな人に勧めています。

【私の生き方】「食」を通して社会問題に立ち向かう女性の強さに迫る

―政治家の前でスピーチをする機会もあったそうですが、どんな人の前でも緊張せずに自分の意見を話す秘訣は?

ルールやマナーよりも自分の伝えたいことを心から話すことに意識すると、コミュニケーションの幅が広がる

もちろん感情が高ぶってコントロールするのが難しい場面もあります。でも、基本的にコミュニケーションのルールよりも、自分の伝えたいことを心で話すことに意識すると、たいていの場合どう評価されているか気にならなくなります。

グアテマラの大統領や政治家の前で、ドラッグ問題についてスピーチをする機会があったのですが、とても緊張して感情が高ぶってしまい…。こういった政府関係の公の場でのルールが分からず、開き直って自分が伝えたいことを感情豊かに話すと、最初は違和感を持って見られましたが、最後には会場が和んだ雰囲気になり、成功しました。

大きな会社のCEOや政府と働いているうちに学んだことは、結局みんな同じ「人間」だということ。家族のことを思う気持ちや、大きな課題に対して緊張する気持ちはみんな一緒。そう考えると、リラックスしてコミュニケーションの幅が広がります!

―当時、世界の課題に取り組む中で、情熱を持っていたことはなんですか?

「社会的不平等」を解決していくことです。世界経済フォーラムの仕事ではスイスの本部からに2カ月に1度ラテンアメリカへ行っていましたが、実際に問題が起こっているリアルな「現場」に身をおいて社会問題を解決に取り組みたい、という思いが強まっていました。そこで拠点をブラジルに移し、会社を退職をしました。

そんなときに、食を通して社会問題に取り組んでいる「GASTROMOTIVA」の創設者と出会い、「これが今、私のしたいことだ!」と感じ、会社を受け継ぐことになりました。

―「GASTROMOTIVA」で、食を通してどのように社会問題と向き合っているのでしょうか?

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主に、レストランなどでまだ食べれる状態で捨てられてしまう食材と、貧困層などの飢えに苦しむ人を繋ぐことです。

昨年のリオデジャネイロ五輪では、貧困層の人々を招待するレストランを設置しました。選手村などから回収した余った食材でつくった、3つ星レストランのシェフが考案するメニューの料理を貧困層に提供するという企画だったのっですが、好評でした。大切なのは無視されてきた貧困層の人々に『人間としての尊厳』を思い返してもらうこと。嬉しくも悲しくも、よく彼らから「久しぶりに『人間』として扱われて嬉しかった!」という声が返ってきます。

あとは、起業支援活動。たとえば貧困層や難民の人が、面白いコンセプトのレストランをオープンさせたい場合、彼達が起業して今の生活の現状を変えるお手伝いをします。最近では、シリア人難民に起業支援をし、ブラジルにシリア料理レストランをオープンさせることができました!

―世界を舞台に今後、取り組みたい課題は?

イスラエルとパレスチナ間の和平問題を食を通して解決する活動をしたいと思っています。パレスチナとイスラエルが使用している食材は、同じものも多いんです。そんな2国が同じ食卓に座って話をする機会を設けることができれば、「共通点」に目を向けてもらうことができます。その他は、ヨーロッパの難民キャンプでの活動も考えていますが、パートナーを見つけることがまず先です。

私たちのチームは少数しかいないなので、いつも世界各地のパートナーが見つかり次第、その国の社会問題に応じた計画を立てています。活動の規模が連鎖して大きくなるように、スキルを教えて世界中に広げていくのが私たちの仕事です。

―莫大な量のタスクをこなすニコラさんの仕事術を教えてください。

まず、優先順位を建てることがなにより大切です。もちろん、山積みの課題があればパニックになりそうなこともありますが、落ち着いて1つ1つ片付けていくこと。まず、仕事を種類に分けて、時間が掛かりそうな作業を朝1番のフレッシュな頭で取り掛かるようにしています。その合間にメールや電話などの対応を。そして、何より「人」が最優先。部下などが、自分を必要としてくれている時はいつでも優先して対応しています。

―最後に、今の夢を教えてください。

社会の「もったいない」ことをなくしていく活動をしていきたい

ゴールは、今の仕事の活動を通して、飢餓を少しでも減らすこと。あとは、世間一般の立場や職種への偏見を改善することです。たとえば上司が、部下に見下した扱いをするとします。すると、その人は威厳が傷つけられて自信を無くし、本来持っている能力が発揮できずに本当に仕事のできない社員になってしまいます。そういった社会の「もったいない」ことを常に失くしていく活動をもっとしていきたいです。


「忙しい中でも、人と過ごす時間をゆっくり楽しむ」というニコラさん。「人」が大好きということが、社会問題に立ち向かう強さや原動力かもしれません。

【ニコラさんから学んだ世界で活躍できる秘訣】

・新しいチャンスはどこにあるかわからない。人格やスキルをふだんから磨けば、素敵な仕事や活動のオファーがあるかもしれない

・緊張する場面では、相手を「同じ人間」と考えると、自分らしさを保てる

・考えすぎず、興味のある分野にフットワークを軽くしてトライする

ウェブサイトGASTROMOTIVA