「女性起業家」という言葉を耳にするようになった昨今。起業をするのに興味があるけれど、どこからはじめればいいか分からないし、ましてや海外でなんて遠い夢のようなお話…という人も多いはず。

そこで、日本の枠を飛び出し、海外で、それも自分自身が情熱のある分野で会社をおこし、最高のチャレンジを経験した先輩に起業までの道のりを伺いました!

ニュージーランドで起業した鳥塚ルミ子さん

グローバルに起業をした日本人女性に聞く起業のイロハ

渡航した年齢27

起業した年齢27

滞在期間9

1人目は、ニュージーランド初のリフレクソロジーサロンをオープンし、その2年後にはオーストラリアでも起業した鳥塚ルミ子さん。現在は海外での経験を活かして東京で社団法人国際オーガニックセラピー協会を設立するなど、行動力溢れる彼女が海外での起業の経験を語ってくれました。

―海外で起業するまでの道のりを教えてください

リフレクソロジーの文化がない国で、その国のスタンダードを築きたかった!

もともとは日本でごく一般的なOLをしていました。何回か職も変りましたが、基本的には営業や受付など、人と接することが多いお仕事。ほぼ定時で仕事をあがれる受付業務をしていた25歳の頃にリフレクソロジー(足裏や手などに施すマッサージ)を学びました。

なぜリフレクソロジーを学んだかというと、これから高齢社会になっていく中で、予防医学、代替医療などの需要が増えると思ったこと、私自身のキャラクターを活かせるのではないかと思ったから。それまでの仕事の中で『ルミ子 さんとお話すると元気になる!』と言っていただける機会があり、そういった自分の特性を最大限に活かせるものはないかと探していた時に出会ったのがリフレクソロジーでした。

実はそれに加え、当時婚約をしていた人から破棄され、それも起業の1つのきっかけとなりました。

起業するならリフレクソロジーの文化がない国でしたい、鳥塚ルミ子のリフレクソロジーが、その国のスタンダードになれたら!と思ったんです。当時少なかった情報を調べた結果、最終的にニュージーランドにいきつきました。

―起業するまで、また海外渡航されるまでの準備を教えてください

思い立ってから渡航するまでは2か月半、渡航してから起業(サロンのオープン)までは3カ月です。

渡航前準備としては、まず大使館に行き、情報収集。英語の勉強も少ししました。あとは、友達の家に住まわせてもらいながら、必死にお金を貯めました。初めて行くニュージーランド、情報を集めようにも今と比べて圧倒的に情報が少なく…。

ニュージーランドは当時、ワーキングホリデーのビザは、無制限発行、申請後約2週間で取得できたんです。それに、他国と比べてワーホリからビジネスビザや永住権が取得しやすかったのも魅力でした。

―渡航されてからはどのようにして起業されたのですか

所持金50万円で行っているため、そもそもお金が足らず、開業軍資金としてアルバイト先でNZD5,000(当時の為替レートで約28万円 ※1NZD55円)を借り入れました(起業して2カ月後に完済)。

現地に到着し2か月後、交渉の末、なんとか3畳くらいのスペースを確保し、どこに何がどこにあるのか全くわからない中、運営に必要なリクライニングチェアやフットバスなどを、デパートや雑貨屋などとにかく片っ端からあたりました。日本と違ってモノが豊富にあるわけではないので、100%の理想のものとは到底出会えず、妥協点を見出しながら購入しました。

そして、1年間のワーホリ期間中にオークランド、クィーンズタウンと2店舗オープン。最初の数カ月は個人事業主、ワーホリが終わる前に現地法人化しました。

サロンオープン1か月後から、国際派セラピスト育成のためのスクールも開校し以降、約500名の受講生を輩出しました。

―起業し始めたときに大変だったことは?

グローバルに起業をした日本人女性に聞く起業のイロハ

自分の常識は世界の非常識と考える柔軟さや、それを想定して動く、という今でも活きている能力が身に着いた

まず、語学力の問題。This is a pen」レベルの英語で渡航しているので、語学の壁にはすぐにぶち当たりました。接客で必要な英語は覚えてどんどん使って身に着けながら、交渉などの高度な英語に関してはできる人を雇用しました。

そして、常識の違い。例えば、日本人は締切というものは基本守ろうとするけど、ところ変わればそうではないことも知りました。

当時、自分の常識を覆させられる出来事が頻繁に起き、自分の常識は世界の非常識と考える柔軟さや、それを想定して動く、という今でも活きている能力が身に着いたと思います。

―海外で事業が成功した秘訣はどこにあると思いますか?

冷静に物事を捉えて進み続けることと、やると決めたら達成できるまで粛々と淡々とやることですね。

ニュージーランド滞在時に「地域に貢献できることを」と考え、老人ホームへリフレクソロジーを提供するボランティアを実施したのですが、最初はタダでもいりませんと何カ所も断られました。それでも挫けずにアプローチをし続け、最初の1カ所が決まり、そこから2カ所、3カ所とどんどん増えていきました。アジア人で言葉もままならない私たちが、当時現地で知られていないリフレクソロジーという、体に触れるマッサージのボランティアをする、というのはいろんな意味でハードルがとても高かったんです。ただ、そこを乗り越えていったことで、自信がつきました。

ここでの経験がきっかけとなり、現在運営する協会では、認知症やストレスマネジメントにも役立つ手を使ったセラピー「ハンドコミュニケア」を取り入れるようになりました。

人と人とをつなぐコミュニケーションツールとして、今では企業研修などでも導入されています!

グローバルに起業をした日本人女性に聞く起業のイロハ

―海外で起業したいと思う人にアドバイスをお願いします。

人生は一度しかありません。自分の人生を自分自身がプロデューサーとなり、涙あり笑いありのドラマを作り上げて!

大切なのは未来像であるビジョン、ポートフォリオ、その後は日常生活の中で目の前のことや人にしっかり意識を集中させつつ、自分の心の動きを俯瞰するマインドフルネスの3つだと思います。

例えば将来海外で起業したいと考えるとすると、まず、そこに向かうために必要なことを書き出します。スキルや資格、人とのつながりなどなど。それから、ビジョン達成するためにポートフォリオを組み立て、1つずつ取り組みます。

ただ何となくやるのではなく、意識を今ここに集中させ、自分の持ちうる力をあちこち分散させずにそこに一点集中させる。その時の状態、自分の心の動きや気づきなどを俯瞰で見て、私は今ここにまた1つの点を打ったのだという感覚を持つことが大切だと思います。

それを意識的に、継続してやっていく中で、自分を取り巻く周囲の人、環境が変わっていくと思います。「今ここ」に全力を投下できる人は強いです。勉強も仕事も、もしかしたら恋愛にも同様のことが言えることかもしれませんね。

そして、そうやって自分が意識してうってきた点(知識・技術・経験、人との出会い、その時々の想いや気づき)が、全ていつかタイミングが来たときに繋がって、1本の太い線となります。その時がビジョン達成なのか、新しいビジョンへのスタートラインなのか、達成するための大きな道筋になるかは人それぞれですが、いずれにせよ、自分の中でビックバンがはじけるような感覚を覚えるはずです。

今、悩んで立ち止まっている方や、将来への不安がある方もいらっしゃると思います。

でも、人生は一度しかありません。自分の人生を自分自身がプロデューサーとなり、涙あり笑いありのドラマを作り上げていって下さい。努力と偶然の曲がり角に幸運はあると思います。


グローバルに起業をした日本人女性に聞く起業のイロハ

鳥塚ルミ子

社団法人国際オーガニックセラピー協会、代表理事。

予防医学療法オーガニックセラピーの教育をする、会員数約2,600名の国内最大手オーガニック教育団体。オーガニックセラピスト、ハンドコミュニケア療法士の2つの資格制度で、身体と心を美しく健康に育む知識と技術を習得する。三菱地所運営「丸の内朝大学」のオーガニック、ハンドコミュニケアクラスの講師も務める。その他、世界で活躍できる国際派セラピストの育成にも尽力。

また、日本の伝統文化を学んで、遊んで、発信できる大和なでしこを育成する和女子コミュニティのTOKYOなでしこ塾、塾長としても活躍中。