SNSや本、雑誌などでよく目にする「自己実現」という言葉。自分らしく生きていくために実践したいと思っている人は多いはず。しかし、口で言うのは簡単だけど、実際にはなかなか難しいものです。

「想いを形にしたい」「理想の未来を叶えるために何かしたい」と、自分のブランドやショップをもつことを夢や目標にしている人もいるのでは?

そんな声に応えるように、ブランド設立・企画から商品販売までのプロセスを通じ、クライアントの自己実現を叶えるサポートをしているのが、ブランド立ち上げ支援サービスの「FEMMA(フェマ)」。

この記事では、同サービスを立ち上げた株式会社 KOHAKU代表・YUKIMIさんに、サービスが誕生した背景や自身の自己実現、事業を進めるなかで大切にしていることなどについてお伺いしました。

お話を伺ったのは…

株式会社 KOHAKU 代表取締役
YUKIMIさん

 
YUKIMI
1996年熊本生まれ。鹿児島大学医学部医学科に入学後、休学し自身のブランドとして「FEMMA(フェマ)」を設立した後、クラウドファンディングにて初期資金を集め、復学後株式会社KOHAKUを起業。現在は事業内容をブランド立ち上げ支援サービスに変更し、D2Cブランド及び企業のブランド立ち上げを包括的に支援。好きなものはコーヒーとお酒。

――「FEMMA(フェマ)」はどんなサービスですか?

「想いがあればブランドをつくれる」をコンセプトに、個人や法人に向けてブランドの構想から販売までの一括支援を行なっています。

そのプロセスは、まずブランドの理念を固めることから。続いて商品を企画したら、込めた想いを一言で表すコンセプトを策定。その後の商品デザインや製造する工場探し、サンプル作成からPR戦略のプランニングまで、リリースに向けたすべてのフローを一括サポートしています。

ブランド立ち上げに興味をもつ方が増えてきている一方、「立ち上げるのが不安」「売れなかったらどうしよう」と一歩を踏み出せない方も依然多い印象。だからこそ、「絶対に売れます!」という保証はできませんが、クライアントの心配事をできるだけ少なくするために環境を整えることが私たちの役目です。

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実際立ち上げまでに踏む過程はクライアントによって様々。たとえばアパレルブランドを立ち上げたいという方の場合は、「なぜアパレルがいいのか」「ブランド・商品を通してどのような想いを伝えたいのか」を深掘りし、一緒にコンセプト化していきます。

「何が作りたいのかわからないけど、自分のブランドを始めてみたい」という方もいて、その場合はシンプルに自身の「好きなこと」からスタートし、立ち上げプロセスを通して「どんな自分になりたいか」を見つめていただく。私たちからは、「こういうものを作っていきませんか?」というご提案を対話を重ねながらしています。

今、いわゆるインフルエンサーブランドと呼ばれるものが増えていますよね。以前よりブランド立ち上げが一般的になったからこそ、小手先で売っていくのってすごく限界があるなと思っていて。

作り手が熱意をもって取り組めるようなコンセプト・ブランドであることが、結果的に消費者に選んでもらえること、つまりビジネスとしての成功にもつながっていくのではないかと考えています。

 
YUKIMI

――「ブランド立ち上げサービス」を事業にしたのはどうしてですか?

大学では医学部で学んでいたのですが、そのなかで「医療がアプローチできない領域がある」と感じました。

自己肯定感や自己実現達成の実感を数値で表したとき、日本人の平均は他の国と比べて低いと言われますよね。幸福感をあまり感じないという人が多いのではないでしょうか。

そういう状況って病院で治療できるものではなくて。その人がやりがいを感じられることに挑戦し、それに取り組みながら生きていくことが必要なのかなと考えています。ただ現状としては、「挑戦したいことはあってもできずにいる」という人が多い。

より多くの人が自己実現をし幸せを感じながら生きられる世の中を実現するために自分にできることを考えたとき、過去にブランドを立ち上げた経験を活かし、そんな人たちの「一歩」を後押しするサービスを始めようと思ったんです。

「どうして医師にならなかったの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、医学部生としての経験を通して培った医療の知識や経験、患者さんとの出会いは、今の仕事に取り組みながら日々息づいているので、起業の道を選んだことに後悔はありません。

 
YUKIMI
医学生時代のYUKIMIさん

――「FEMMA」にしかない強みを教えてください。

「FEMMA」の強みは、大きく分けて3つあります。1つ目は、ソーシャルグッドな領域を得意としていること。

リリースされているものでは、ジェンダーレスコンドームケースの「Cosmos」さんや抜毛症の方向け固形シャンプーの「jiu-慈生-」さんのプロジェクトがその例です。今まさに準備中のブランドのなかにもアップサイクル関連のものが控えています。

 
YUKIMI
「jiu-慈生-」の抜毛症の方向け固形シャンプー。

「ソーシャルグッドであること」って単純ではなくて。サステナビリティの観点に立つと、もの作り自体がゴミを出すことにつながっているという事実からは目を背けてはいけないと思うんです。その認識をもちつつ、いかに環境負荷を少なくできるかを真摯に追求しています。

また、エシカルな商品を関心をもってもらえる層に届けるための施策であるブランディングの部分も私たちが自信をもっているところです。

2つ目は、Z世代の価値観に合わせた商品作りやブランディングができること。私自身も1996年生まれでZ世代ですが、時代の流れが変わってきていることは日々肌で感じます。

人々が自分の「幸せ」を実現するのに、以前は身の回りことだけを考えれば良かったとしたら、最近では同じくらい社会との関わり合いも重視する人が増えてきているように思います。

だから、単なる見た目の良さや便利さだけでなく、その商品を購入することにどんな社会的インパクトがあるのかを訴える見せ方も、次世代の消費者に向けたブランディングには必要だと考えています。

3つ目は、大学で医学を学んだ私のバックグラウンドです。医学生として得た知識や経験を活かしてクライアントをサポートしています。

ビューティやウェルネスのプロジェクトでは特に役に立てている実感があります。

――確かに「FEMMA」が手掛けるプロジェクトの多くが、サステナブルなコンセプトですね。

正直なところ、今の世の中では「サステナビリティ」という言葉がトレンドのように扱われている印象で、定義がすごく曖昧です。もちろんサステナビリティの実現を目指すのは大前提だけど、現実的に自分たちにすぐできることと難しいことの両方がありますよね。

そんななかで私たちは、「まずは自分たちの得意な分野からできることに取り組んでいこう」というスタンスをとっています。

また、サステナビリティという言葉をより広い意味で「社会システム全体の持続可能性」として捉えたとき、「女性の働きやすさや雇用の改善」に向き合っていくことも一つの大切なテーマだと考えていて。

これに関しては会社として社内向きに取り組んでいます。たとえば、女性の働きやすさを追求するうえで考えなくてはいけないことの一つが、生理に関する悩み。

人によってはコントロールできない腹痛や不快感に悩まされる生理期間ですが、私自身も生理のときは気分にムラがでることがあります。

そこで私たちが導入しているのが、社内のコミュニケーションに使っているSlackの「保健室チャンネル」。スタッフが体調のことを安心して話せる場所として使っていて。

例えば私は生理の日に「今日は生理ですごくテンションが低いですが、元気なので気にしないでください」と言うことがあります。このように自分の状態を素直に共有できれば、自分も同僚もコミュニケーションがストレスレスです。

人間、生きていればコンディションが悪い日があるのは当たり前。全員が本音を言える場所があることで、生理などで辛いときも「みんな頑張っているのに自分だけ弱音を吐けない」と無理に我慢する必要がなくなるんじゃないかと思っています。

女性の働きやすさ向上には、今後も積極的に取り組んでいきたいです。

 
YUKIMI

――プロジェクトを進めるなかで大切にしていることは?

ブランド立ち上げのプロセスでは、クライアントとのコミュニケーションにおいて「何がしたい」「何が大切」といったその人の想いを引き出すことが重要だと考えています。そして、それを実践するために医学部での経験が活きているなと感じるところがあって。

特に今の仕事に役立っていると感じることの一つが「医療面接」の練習で学んだこと。患者とのコミュニケーションを通じて病気を推定するのですが、「今日はどうされました?」という質問から始めて、患者の説明を聞きながら症状を判断するというものです。

その際、患者さんが言うことを絶対に否定しないことがポイントで。医療従事者はよく「傾聴する」と言いますが、まず患者さんの訴えを受け入れることが肝心なんですね。

クライアントとの会話でもこのことを意識して、私たちが積極的に何かを提案するというよりは、本人の想いを掘り下げていくことに注力しています。

たとえば「日本の性教育をアップデートしたい」という想いをもつクライアントがいたとして、私たちが「そんなこと無理だと思います」とか「そのためにはこういうものを作るべきです」と考えを一方的に伝えることはしない。最初から決めつけることはせず、それを叶えるためにどんなブランディングや施策が必要なのかを一緒に考えるんです。

もしかしたら「FEMMA」を立ち上げたときの自分自身の経験も影響していているかもしれません。

「FEMMA」の設立当初、自社の商品としてタトゥーシールを展開したときのこと。クラウドファンディングで資金調達をしたのですが、いざ募集を開始するというときに臆病になってしまって。

当時一緒に住んでいた友人に弱音をこぼしたら、「負けんな!」と背中を押してくれたおかげで投げ出さずに済んだのですが、結局クラウドファンディングでは一日も経たずに目標金額を達成。何事もやってみないとわからないと、改めて感じた経験でした。

とは言え、私たちはクライアント本人が「できるかも」と思えるような環境を整えることに徹し、あくまでもその人自身の意志で進めでいくことが何より大切だと思います。

――印象的だったプロジェクトは?

ジェンダーレスコンドームケースのブランド「Cosmos」さんのプロジェクトは、私たちにとっても分岐点でしたね。

 
YUKIMI
「Cosmos」のジェンダーレスコンドームケース。

最も手軽な避妊・性病予防のためのツールとしてセックスの際に不可欠なコンドーム。しかし同ブランド独自の調査によると、コンドームを持ち歩いていない人の割合が7割以上に上ることが明らかに。

また、コンドームをそのまま持ち歩くと小さなキズや破れてしまう危険性があることが十分に認識されていないのも実態です。

この現状に課題を感じた「Cosmos」のオーナーのお二人。彼女たちの「人々が自分の生き方や性を自らコントロールするために、コンドームを安全に持ち歩く文化を根付かせたい」という想いから出発したのが、このプロジェクトでした。

商品の販売に向けて準備を進めるなかで、お二人が「誰からも見向きされなかったらどうしよう」という不安をもちながらも、同時に強い覚悟も決めていらっしゃった姿も印象的で。

私たちも全力でサポートさせていただき、最終的には売上にも貢献できてとても嬉しかったです。私自身、自己実現が果たせた経験になりました。

――自分でも「何がしたいのか」「何ができるのか」がわからず悩んでいる人に向けてのアドバイスは?

行動しないとわからない未来や見えない世界ってやっぱりあるんですよね。

元々は私も行動までに時間がかかるタイプでした。それで「行動を起こすためには何が必要なんだろう?」と考えてみたときに、自分自身と向き合うアクションが大事だと気づきました。

私にとってそれは、心のなかにあるものを文字にして書き出したり、同じような感性をもっていて安心して話せる友達とご飯に行ったりすること。自分の内側にあるものを言語化して一つの形に落とし込む作業を何回か続けていくと、自分のやりたいことや、方向性が具現化していくんです。

「行動しなきゃ!」って肩肘を張る必要は決してなくて、「私って本当は何がしたいんだろう?」と、仲の良い友達と話してみることもとても素敵なんじゃないかなと思います。

――「FEMMA」としての今後の目標は?

巷で「FEMMAって知ってる? いいよね~」という会話がされるような、誰もが知っているサービスにしたいです。

また、私たちのビジネス自体がサステナブルでソーシャルグッドであることが前提ですが、同じ方向性でブランドを立ち上げたいという方々の支援をしながら、その輪をどんどん広げていきたいです。

数値目標ももちろんあってそれを達成するのも一つのゴールですが、多くの人から「FEMMAってめっちゃいいよね!」と思ってもらえる存在になりたいという想いのほうが強いです。

今はまだスタートアップの段階なのでガツガツと仕事をしなくてはいけないのが現実ですが、自分自身が自己実現をできている状態でいることも大事だと思っていて。

眠いときは寝て、休みが必要なときは休む。「FEMMA」の価値観を体現するためにも、自分のペースを大切に楽しみながらやっていきたいです。