2019年6月に、アメリカで大人気のオーディション番組『アメリカズ・ガット・タレント（AGT）』への出演が、日本のみならず現地でも話題を呼んだ芸人のゆりやんレトリィバァさん。自分らしさを貫き楽しんでみせるその姿勢は、まさにフィアレス！
そんな、世界的に注目の集まるゆりやんレトリィバァさんが、2020年１月のコスモポリタンのカバーガールに登場！ 彼女“らしさ”がどうやって育まれてきたのか、その秘密に迫ります。
芸人を目指した理由を聞かせてください。
小学生の頃から吉本新喜劇が好きで、放送の翌日は学校でマネをしてました。地元の小学校は同級生が男女6人ずつしかいなくて、給食も「合コンや！」って言いながら食べてたくらい人数が少なかったんですが、みんなが笑ってくれるのがめっちゃ嬉しくて。もともとなりたかったアイドルは、子供心にも「無理やん」と思ったんですが、吉本なら私でもスポットライト浴びれるとこありそうやん、って。
大学では映画専攻だったんですね。演技もそこで勉強したんですか？
芸人になると決めていたから「大学は好きなこと勉強しよ」と、映画評論をやっていました。でも以前、占い師さんに「前世は中世ヨーロッパのオペラ歌手」と言われたことがあるんです。その人曰く、めちゃめちゃエンタテイメントな人だったけど、あまりに美人でコメディだけ上手くできず、今そこに再チャレンジしているってことで。「いろんな声が出るのは、前世がオペラ歌手だったからよ」って。出そうと思ったら誰でも出せるやろ！ って感じですが（笑）。
「アメリカズ・ゴット・タレント（AGT）」への出演は、何かきっかけが？
芸人は何だって仕事にできるから、好きなことやっていいんちゃうかと思って。子どもの頃からアメリカに行きたかったし、ピースの綾部さんとか渡辺直美さんとかが道を切り拓いて下さったのに、私はこのままやったら口だけや…と。それで調べた時にAGTを見つけて、去年の春くらいにエントリーしました。
途中の審査は何回もあったんですか？
最初に動画を送って、その審査を通過したあとに11月にニューヨークでオーディション。その後に面談とスカイプ審査があって、収録は今年の3月でした。その時に「今回の収録には120組くらい残っています」と言われて、「結構残ってるなあ」と思ったんですが、応募総数は4万人もいたみたいで。日本のお笑いの賞レースでは3000組くらいでもすごいんですけど。
勝ち抜くための戦略はあったんですか？
全然なかったです。言葉が通じないことを考えたくらいで。そもそも勝ち抜くっていうより、ただ行ってみたいっていう思いだけで行ったので。占い師さんの話ばっかりになっちゃってヤバイ奴みたいですが、「あなたは勝ちたいと思ったら勝てない。楽しいとか、勝ち負けじゃないと思った時には結果がでる」と言われたことがあるんです。今回もそんな感じでした。
笑いは文化によって全然違うから、笑いで国を超えるのは大変ですよね？
アメリカでもお笑い好きな方は、やっぱりちゃんとした笑いがほしいやろと思うし、「ゆりやんは笑わせたんじゃない、笑われただけ」みたいに言う人もいるんですが、「うん、そうや」って思ってるんです（笑）。でも私はお客さんに笑ってもらえたら、そんなんどっちでもいい。自分自身がハッピーなものを提供させて貰えるなら、それでいいかなって思います。
故郷の小さな町から、テレビのお笑いの世界に飛び込むのは、怖くなかったですか？
逆に知らなかったから怖くなかったです。テレビで「食えない」と言ってる若手芸人は、毎年500人いるNSCの卒業生のうち、吉本の若手の劇場で勝ち上がった頂点の人なんです。そんなんなんも知らずに、テレビ見て「あそこにすぐ行ける」と思ってたんで。
あと地元は人数が少ないから、家族も学校の先生も「この子はこういう子やから、こういう役割がある」みたいに一人一人の“らしさ”を認めてくれていたし、自分もそれを疑わなかったというか。だから自分が「こうなりたい」と思えば、そうなれるんやって思えたのかもしれません。
NSCを首席で卒業しここまでとんとん拍子ですが、それはご自身にとっても予定通りですか？
確かにまだ7年目で、こんな風にいろいろさせてもらって、「泥水すする」みたいな苦労はしてません。でもNSCの首席なんてものは別に一生使える何かではないし、ちゃんとネタができるとこを見てもらわなあかん…R-1頑張ろう！ と思って、でも優勝できなくて。次の年も出なあかん、でもまた優勝できない、3年も優勝しなかったらこれどうなんねん…って、自分はこうあらないとあかん、みたいなプレッシャーがずっとありました。
自分で次を考えていかなきゃいけないのが、すごく大変ですね。
次、次、次…って、最初は焦ってました。同世代の女芸人さんたちがすごく注目されて、私がやりたいと思ってるようなネタめっちゃやってるし、なにこれめっちゃ面白いやん…と思って、勝手に意識して。1000人が入るなんばグランド花月の舞台に何も考えないで出て、客席からすごいブーイングされて―― ハッ！ と起きる、みたいな悪夢ばっかり見て。
なんでこんなにしんどいねん、ってことを先輩に相談したら「ゆりやんが頑張れば仕事は来るし、頑張れへんかったらなくなる。他人が売れてようが売れてまいが、考えんでええんちゃう？」って言われて、ホンマやと。勝ち負けより、楽しいと思うことやらしてもらう方がずっといい。人が頑張ってたら、私も頑張りたいって思えばいいんやと。
ご自身の中で「自分の笑い」というのはあるんですか？
自分で自分のキャラが全然わからなかったんですよ。それも別の先輩に相談したんです。テレビに出始めた頃に、ちょっと絡みずらいボケ方をしてしまって、他の方々が「何この人…」みたいな反応してはったから、「もうちょっと違う形がいいんですかね？」って。
そうしたら「やり続ければ『そういう人や』って分かってもらえるから、ゆりやんはそのままでいい」って言って下さって。そこからはどんな時でも「心ここで折れず」で、自分が思うように「これや！ 今や！ これが楽しい！」っていう感じでやろうと。周りに「心臓どないなっとんねん！」と言われるんですが、そういうのが自分の好きなところではあります。
女芸人で困ったこと、逆に良かったことはありますか？
良かったことはめちゃくちゃあります。最初の頃は「女だからと特別扱いされたくない」と思っていましたが、今は「女だと目立ってラッキー」とも思いますし。
「あんまり自虐しないで」と言うファンの方もいますが、それも違うんですよね。「ずっと隠してることあるんですけど、私、実はデブなんですよ」「見たらわかるわ！」って、自分はそんなのが楽しくて。テレビとかでもモデルの方と一緒に並んだりすると、人によってはちょっと引け目を感じたりするかもしれないけど、自分はどうボケようかなって思える。女芸人だから楽しく生きられるんです。
恋愛のことも聞かせてください。最近は恋はしていますか？
今はまったく恋愛がなくて。付き合ったことはなくても、これまでずっと好きな人がいたんですけどね。恋愛してない生活ってしょーもないなー、おもろないなーと思ってます。
好きなタイプはどういう人ですか？
一緒にいて楽しい人が好きなので、身近な人を好きになるタイプです。
霜降り明星のせいやさんのことなど、これまでは恋心をオープンにされていましたよね。
それ以前の好きな人には、本人に直接伝えてたんです。今までちゃんと交際したことがないので、好きな人に好きになってもらう方法がわからなくて。
小学校の頃に見たドラマ『おそるべしっっ!!!音無可憐さん』の主人公は、彼女のいる男の子に「好き好き好き～」って言いまくり、最終的に「ほっとかれへんな」となって結婚するんですけど、それが刷り込まれてるんですよね。
でもいろいろ聞いたり考えたりして、最近は水面下で動かなあかんとわかってきました。あともうひとつは、一人の人をずっと思い続けるのはしんどいから、3人ぐらいに分担してもらって…。
分担というのは…？
3人くらいいたら、のめり込み過ぎないんじゃないかと。こっちの人が無理そうやったら、こっちの人がおる、それができたらいっちゃん楽しい。実は男の人もみんなそうやってる…と聞いて「なるほど！」と。でも29歳にもなって、そういう人が現れるのを待っているのもちゃうなと思うので、もっとスポーツ感覚で動いていかないといかんなと。
やっぱり相手も芸人さんがいいんですか？
ずっとそう思ってたんですけど、最近はそうでもなくて。ボケて突っ込んで、わはは！ っていう芸人さんの面白さだけじゃなく、その人の仕事の話を聞いて「そうなんや、すごいなあ」とか、一緒に映画を見て「楽しい」とかそういうのもあるし、全然関係ないなって思ってきました。
キャリアでは海外進出も挑戦されていますが、国際恋愛はどうですか？
それも憧れますが、日本在住の外国の方と恋愛しようってなったら、この人は健康保険のこととか分かってるのかなあとか、現実的に考えてしまって。いや、マジメに言ってます。
SNSにたくさんのフォロワーさんがいる中で、絡まれたりした時はどうしていますか？
恋愛相談とか弟子入り志願とか、いろいろ来ます。返事はほとんどしないのですが、結構読ませてはいただいてます。いろんな方がいらして楽しいです。言葉を選んでいない悲しいものもあり、最初は結構ショックだったんですが、最近は「そんなん知らんがな」と。ここで言ってへんで、もっとやることやりや、って思ってます。
冷静ですね。
「SNSの怖さがわかってないなあ」と思うこともありますよね。あとは街中で写真や動画を勝手に撮ってくる人も、マナーを少し勉強せなあかんのちゃうか、と。それは相手を「モノ」として見すぎてることやと思うから。そういう場合は「勝手に撮ったらダメですよ、言ってくれたら撮るから」って私は言うようにしています。
逆にご自身がフォロワーとして楽しんでいるアカウントはありますか？
女性のトレーニング動画とか、ダンス動画とかが好きです。カッコいいな、こうなりたーいと思って、食事を抑えたりとか。太っている自分を「いややなー」と思ったことはないんですが、最近は太ってるのに飽きてきて。キャラなくなるやん、って言われますが、一回そのキャラなくしてみようやとも思って。痩せるというより、筋肉のついた身体にしたいです。
今年30歳を迎えますが、どんな心境ですか？
このあいだ30歳になられた先輩が「30代になれてめっちゃうれしい」って言ってはって、カッコいいなと思いました。皆さん楽しく仕事してる人ばっかりですし、年齢なんて意識してない方々ばっかり。私もめちゃめちゃ楽しみにしています。
文字通り世界中を笑いに包んだ、ゆりやんレトリィバァさんの2019年。2020年もますますパワーアップした彼女の活躍が見られること、間違いなし♡
COVER GIRLゆりやんレトリィバァのアザーカット集
Photo／KOICHIRO INOMATA Styling／Izumi Machino Makeup & Hair／Rei Fukuoka（Tron） Model ／Yuriyan Retriever Text／Shiho Atsumi
イヤリング／9,000円、チョーカー／10,000円、ブレスレット／18,000円 ※2本セット、ブレスレットにしたチェーンネックレス／10,000円（すべてビジュー アール・アイ）シューズ／16,800円（イエロ）ジャケット、ボディスーツ／スタイリスト私物 ※全て税抜価格
