メディア界で最も影響力がある女性のひとり、アリアナ・ハフィントンさん。ニュースサイト「ハフィントン・ポスト」を2005年に創設し、わずか10年も経たないうちに世界的なメディアに成長させた、まさにメディア界のカリスマ的存在。

そんな誰もが憧れるキャリアを持つアリアナ・ハフィントンさんですが、2007年、人生観を一変する出来事が。それは「ハフィントン・ポスト」を創設して2年が経った頃、1日18時間、1週間7日働いていたアリアナさんは過労のため倒れ、机の角で頭を打ち、気が付くと血が流れていたのだという。

そこでアリアナさんは病院でMRI検査やCATスキャンなどを受けながら、ある疑問を自分に問いかけていたそうです。

「これが本当の意味での“成功”なの?」

それから約10年後、アリアナさんは2016年に「ハフィントン・ポスト」を退社し、同年に「Thrive Global(スライブ・グローバル)」を創設。「燃え尽きは成功の代償」という定説を覆すため、「人々の生き方と働き方を変える」ことを目的に取り組んでいます。同社のウェブサイトには睡眠の大切さ、スマホ依存から解放すること、ワークファッションを楽しむことなど、健全な働き方、ライフスタイルを実践するヒントが満載!

ギリシャに生まれ、イギリスの名門ケンブリッジ大学で学び、その後アメリカで成功を収めたアリアナさんが今、ミレニアル世代(1981年~1996年の間に生まれた世代)に心から伝えたい「究極の成功」のためのアドバイスとは?

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――アリアナさんの1日のスケジュール例を教えてください。

完全に充電して翌日をスッキリした気分で始めるため、8時間は睡眠をとる

朝起きたらまず2、3分深呼吸をし、感謝の気持ちを感じます。そして、その日の目的を設定。起床時に携帯電話は見ません。その後20~30分間瞑想をし、30分間フィットネスバイクで汗を流します。また、ヨガをすることも。

職場に着くと、仕事内容の多くはミーティングへの参加。私たちのミーティングでの原則は、「デバイス(スマホなどの装置)フリー」。そのメリットはたくさんあります。参加者にその場に参加している感覚を持ってもらうことと、お互いきちんと交流すること。それに、参加者の集中力が増して生産性が高まるので、結果的にミーティングが短時間で終わる。

仕事の後は、友達、ビジネスパートナー、もしくは子どもたちとディナーへ出掛けます。

そして就寝前の夜の習慣は、まず携帯電話の電源をオフにし、ベッドの外に置くこと。メール受信箱、TO DOリスト…、携帯電話は良い睡眠をとるために避けるべき情報の貯蔵庫。ベッドの外で携帯電話を充電することは、100%自分のエネルギーを充電することに繋がります。

その後、翌日をスッキリした気分で始めるため、8時間は睡眠をとります。

―― 多忙な毎日のなか「8時間の睡眠」や、「家族や友達との時間」を確保するなど、アリアナさんは仕事と私生活をバランスよく両立しています。仕事において、一定の時間内で生産性を高める「時間管理」の秘訣を教えてください。

大きく分けて、下記の3つのステップをお勧めします。

1.優先順位を頻繁に見直す

誰にとっても一日は24時間しかない。だから、まず時間管理ではその都度「優先順位」を立てることからはじまります。「何が一番自分にとって大切か」、「何が重要で、逆に重要でないか」、「どの仕事が方向転換を必要としているか」と常に問いかけ、優先事項を明確に分ける。

そうすると自分のなかに新しいスペースと時間が生まれます。

2.仕事の終了時間を決める。そして、一日の仕事の終わりに「“未完成”でもいい」と思えること

第2のステップは、どんなに優秀な人でも、毎日仕事をすべて完成して一日を終えることができる人なんていないと気付くこと。

もし一日の終わりにTO DOリストを見返した際に、仕事をすべて完成していたとしたら、それはあなたが自分自身に充分に挑戦していないということ野心的で大きな意味のある仕事をするには、「未完成」な状態を認めてあげることが大切

一日の始まりにスケジュールを立てるときは、終了時間を決めて予定を組み立てること。重要な優先事項を処理することができたら、あとはすべて終わらせなくてもいい。リフレッシュして完全に充電することで、翌日新しく挑戦に取り組むことができます。

3.仕事の集中力が続くよう、アプリを活用する

一日の中で、最大限の集中力を要する仕事に取り組むことがあると思います。ある研究では仕事を一度中断した後、再び取り組むのに25分かかると言われているんです。

だからこそ生産性をあげるため、効果的な時間の管理が必要。でも、スマホなどに囲まれて「いつでもONの状態」の私たちの生活では、中断しないことは難しい…。だから、私は「Thrive away」という自社のアプリを使用しています。このアプリは集中したいときに、自分が選択した人以外のメッセージ、電話、お知らせをオフにしてくれます。だから仕事を中断することなく、黙々と続けられるはずです。

――“過労”が習慣になると、“人生の美しさ”へ目を向けることが難しくなりがちだと思います。そんな状態を変えるためには…?

「バーンアウト(燃え尽き)は成功の代償」という文化を変えないといけない。そのため、自身の幸福を優先している社員を褒めて昇進するような会社に、今後スポットライトを当てていくことが大切

この20年間、「幸福」と「仕事の成果」の直接的な関係を示す多くの研究結果が発表されました。それらは、「バーンアウト(燃え尽き)と睡眠不足は、高い成果を挙げるのに必要な過程」という考えを真っ向から否定しています。

それに、適度な睡眠を得ることで、優先事項リストも進捗します。

それでも、「バーンアウトは成功の代償」という神話を信じ続ける人もいるでしょう。だからこそ、社会に浸透してしまっているこの文化自体を変えないといけない。そのためには、バーンアウトしている社員ではなく、自身の幸福を優先している社員を褒めて昇進するような会社に、今後スポットライトを当てていくことが大切です。

――アリアナさんが毎日を「幸せな気持ち」で過ごすためにしていることはありますか?

まず、一日のはじめと終わりを携帯電話なしで過ごすこと。それだけで、本当に大きな違いが感じられます。その他にお勧めなのが、「感謝日記」をつけること。これは娘の習慣を取り入れたのですが、本当に大きな効果があります!

方法は簡単。ただ毎晩、「有難い」と感じることをいくつかノートに書きます。そうすることで意識が「日々の恵まれていること」に集中します。友達や家族のこと、誰かがあなたを笑顔にした瞬間、花など自然を見て心が喜んだ時のこと、もしくは生きていることの感謝など…ぜひ、書きはじめてみてください。

――アリアンナさんが20代、30代だった頃に比べ、現代ではテクノロジーが広く社会に浸透しています。便利な一方で、今のミレニアル世代が失っているものはあると思いますか?

テクノロジーに囲まれている生活では、心が休む時間を持つことが難しい。今日私たちは仕事外でも、スマホなどの電子機器に多くの時間を費やしてしまいがちです。

でも、退屈を味わったり、自由気ままに思い耽ったり、自分自身と向き合ったり…そういう時間は、メンタルヘルス(心の健康)や創造力を高めるためにも大切です。そして研究によると、すべての年代層のなかで、今日の若い世代は最もストレスで疲れているそうです。

――SNS(ソーシャル・ネットワーク)の使い方において、ミレニアル世代に伝えたいことはありますか?

研究ではSNSの多用は鬱、不安に繋がり、心の健康に悪影響と言われています。だからこそ、テクノロジーやSNSとの関係を自分自身でコントロールしないといけない。SNSは、私たちの頭の中に不安や疑いなどの騒音を増やします。私はこういったノイズを、頭のなかの“不快なルームメイト”と呼んでいます。

SNSを頻繁にチェックしている人は、その癖が自分の心の中の騒音を増やしていることを認めることが大切。そのうえで毎日スマホと距離を保ち、自分自身を充電することが重要です。

――もし20代の自分自身にアドバイスをおくるなら、一番伝えたいことは何ですか?

バーンアウトと消耗は成功するための代償じゃないと伝えたい。実際、もっと毎日自分を充電する時間を持つようにすると、より生産性が上がって、もっと成功し、充実した人生が送れると伝えたいですね。

――最後に、アリアナさんが人生において学んだ「幸せになるための究極の秘訣」とは?

失敗は成功の反対ではなく、成功への足掛かりということ。これは、母が教えてくれたことです。


メディア界の第一線で活躍してきたアリアナさん。そんな彼女が過去を振り返り学んだレッスンが、「燃え尽きる」よりも「充電する」ほうが、仕事で高い成果を挙げることができ、充実した人生が送れるということ。習慣を変えることは簡単ではないけれど、一度しかない人生を最大限に活かすために彼女のアドバイスを実践してみると、きっと大きなステップアップへの第一歩になるはず!