心身における「良い状態」が続くウェルビーイングは、音楽をきいているときにも得られるもの。実は、音楽などから得られる感動・快感がピークに達すると、「フリッソン」という体への反応が現れます。
これは感動のあまり鳥肌が立ったり、背筋にゾクゾクとする感覚が起こったりすること。空間オーディオ・スピーカーなどを手がける「ソノス(Sonos)」は、このフリッソンという反応に着目。
「グラミー賞」などの受賞歴をもつプロデューサーのエリック・J・デュボウスキーとコラボレーションし、フリッソンが得られやすい特徴をおさえた音から新曲を設計するなど、音楽から得られる感動体験にこだわりを見せます。
ここでは、そんなフリッソンの正体を解説。音楽とウェルビーイングの関係性などを研究する、メルボルン大学音楽心理学者のソランジュ・グラッサー博士とともに迫ります。
【目次】
音楽を聞いて鳥肌がたつ理由
フリッソンとは、絵画や映画、音楽など、さまざまなアートへの感動のあまり、体に反応が起こること。 「現状、音楽から誘発されやすいということがわかっています」とソランジュ博士。
フリッソンは、「感情のピークの現れ」と捉えられているそう。感動が極限に達することで、以下のような感覚が体に出ると言われています。
- 鳥肌がたつ/身震いがする
- 首の後ろや背筋がゾクゾクする
- 瞳孔がひらく
- 心拍数が上がる
- 涙が出る/胸がいっぱいになる
語源はフランス語で、「美的な悪寒(Aesthetic Chills)」を意味するのだとか。
3つのメカニズムを解説
感動は日々多くのものから得られますが、その中でもなぜ音楽と相性が良いと言われているのでしょうか? 音楽からフリッソンが起こりやすい要因として、ソランジュ博士は3つの要素をあげます。
- 聴覚的な要素…テンポやボリュームが変わることなど。音楽が早まったり、徐々に大きくなる臨場感から、フリッソンが得られたと語る経験者も
- 音楽的な要素…いろいろな楽器を登場させたり、重なる音色でハーモニーを生むこと。転調など“予想外”の展開が感情の高ぶりにつながるそう
- 感情的な要素…音楽をきいてさまざまな感情が呼び起こされること。そのとき悲しかったり、ワクワクしていたりするかどうかで音楽の感じ方は変わってくるので、フリッソンの起こりやすさにも影響します
音楽は思い出や記憶ともリンク
個人的にすごく思い入れが強い音楽をきいたとき、特に高い確率でフリッソンが誘発されていると言います。そしてそれは、若いときに聞いていた音楽を、大人になって改めて耳にしたときに最も起こりやすいのだとか。
「10代の頃に、浴びるように音楽を聞いていた人も多いのではないでしょうか。特に思春期の頃は、アイデンティティや『自分が何者か』ということについてたくさん悩む時期。そのときに聞いていた音楽に対しては、特に感情や記憶があふれ出るようになると言われているのです」
こういった傾向のことは、音楽以外の場面でも「回想バンプ(Reminiscence bump)」とよばれています。多くの人は思春期や成人した初期のころの出来事や記憶に対して、大人になったときに強い感情をもつ傾向にあるそうです。
脳ではなにが起こっている?
フリッソンが起こると脳内では、 幸せホルモンの一つとして知られるドーパミンが大量に排出されています。
脳で何が起こっているかを理解するときに大切なのが、「期待」と「報酬」とソランジュ博士。実はフリッソンの前と後で、2回のタイミングでドーパミンがでているそう。
- 1回目:一定のリズムや繰り返しなどのパターンを感じたとき
「脳が何を音楽と認識するかというと、それは繰り返すリズムやメロディー、ハーモニーなどを感じたとき。それに対する心地よさから、脳の尾状核(大脳にある、学習や記憶システムに大事な役割をもつ部位)がドーパミンを出します」
- 2回目:意外性のある音楽パターンがあったとき
「予測する力に長けている側坐核(前脳にある神経細胞の集団)が刺激されると、いい意味で“期待”が裏切られます。そうすると脳は、その驚きが与えられたことへの報酬として、大量のドーパミンを排出するのです」
たとえば音量を徐々に大きくするなどのグラデーションを音楽に加えることで期待感を高め、そのあとクライマックスを迎えるような音楽を聞くとします。流し始めた時点ですでに心地よさは生まれていますが、その後の一番盛り上がるところまでの流れや積み重ねが、より一層大きい感動体験を作るのです。
なお、ドーパミンの放出は食事中に強くおいしいと感じた瞬間や性行為、あるいはドラッグの使用で起こることが知られています。ただし音楽で得られる感覚には、「生活に支障をきたすような依存の症状はない」という違いがあります。
「ASMR」と「フリッソン」の違い
「ソノスの開発チームとも、ASMRとの違いについて語り合いました」とソランジュ博士。ASMR(autonomous sensory meridian response)は今や、SNSで人気なコンテンツの一つとなっています。
ASMRはたとえば、ささやき声や何かを壊す音、爪で何かをたたく音など、特定の音に対して脳がくすぐられるような感覚になるもの。それを「心地よい」と感じる人が多いと言われています。
ASMRは聴覚と触覚の共感性を利用しているとも考えられていて、何かを触る音をきくだけで触れているような感覚が呼び起こされることで、快感を覚えるんだとか。フリッソンと同様に鳥肌などの反応が体に出るそうですが、2つの違いはその反応がでるまでの仕組みにあると言います。
「ASMRによって鳥肌がたつような感覚に襲われるのは、『恐怖』に基づく原理だからだと考えられます。本来ならば鳥肌は、怖さを感じたときや寒いときにたつものですよね。たとえば動物たちは危険にさらされたとき、毛が逆立つことでより大きく体をみせられます」
「こういった体の働きは現代人には不要ですが、進化の過程で恐怖体験と鳥肌が結びついていたと言えます。すなわちASMRはその名残で、ヒトがゾクゾクする部分を刺激されて鳥肌がたっていると読み取れるのです」
ASMRは聴覚的な要素だけを使って刺激するのに対して、「音楽によるフリッソン」は、感情の高ぶりと結びついているのが大きな違いだとソランジュ博士は説明します。
フリッソンに体は慣れる?
驚きや意外性から生まれることが多いため、フリッソンを得られやすいように体を慣れさせることなどはできないとソランジュ博士。人生で何回も体験する人もいれば、一度も感じない人も。
ただ、起こりやすい自分の傾向を分析することはできると言います。
「たとえば音楽を友人たちと一緒に聴くのが好きな人もいれば、ひとりで漬かるように聴くのが心地いい人だっています」
「フリッソンはすごくパーソナルな体験と結びついています。家で音に囲まれて、心地のいい環境に身を置くこと。目をつぶって、音楽の流れに身を任せるように聴いてみるーー。それがフリッソンを誘発するものになるかもしれません」
音に包まれる体験をソノスで…
カリフォルニア生まれのオーディオ・ブランドであるソノスは、アーティストとのコラボやエンジニアらとの密な提携によって、深い感情を呼び起こすようなサウンド体験を生むことに力を入れています。
そしてこのほど、その取り組みを強化すべく空間オーディオを追求した新モデルSonos Era 300と、リニューアルした定番モデルSonos Era 100を発表しました。
Sonos Era 300はDolby Atmos(ドルビーアトモス)対応のサウンドシステムを搭載。これは映画館や劇場でも採用されている最新の立体音響技術のことで、前後左右あらゆる角度から音が流れる感覚を誘います。ベストセラー製品であるSonos OneをさらにアップグレードしたSonos Era 100は、高精細なステレオ・サウンドとインテリア性の高さを実現。
ソノスが音楽体験にこだわって作成した、フリッソンが起こりやすいとされる音楽パターンを取り入れた楽曲「フリッソン トリガー(Frisson Trigger)」をSonos Era 300で聞くと、家でもこの感動体験が味わえるかも。
問い合わせ先:Sonos Japan カスタマーセンター 0120-635-220
解説:ソランジュ・グラッサー博士