待ち望まれてきた男性向け避妊薬(ピル)の開発が、ようやく実現しようとしているのかもしれない。マウスを使った実験で、一時的に精子の動きを止める薬の実用化につながる結果が得られたという。

現在市販されている女性向けのピルは、毎日のむ必要がある。だが、実験中の薬は、性行為の1時間前に服用し、効果が数時間続くというもの。薬の影響は、24時間後には完全に消えるとみられている。

イギリスの科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に発表された実験結果によると、研究チームは雄のマウスに、精子の動きを阻害する可溶性アデニル酸シクラーゼを投与した。効果が持続するのは数時間だが、精子が卵子に到達するまでにかかる時間からみて、十分な長さだという。

研究チームのメンバーのひとり、ニューヨークにあるワイル・コーネル医科大学のメラニー・バルバック博士は、この薬がヒトでも同じように効果を発揮すれば、男性たちは「必要に応じて服用する」ことができるようになると述べている。

ホルモンが配合されている女性用の経口避妊薬には副作用があるが、実験中のこの薬は非ホルモン性であるため、テストステロンなどの男性ホルモンに影響を与えない。男性用のピルが実用化されれば、これまで主に女性が負ってきた避妊に対する責任が、いくらか軽減されることになる。

ただ、実用化に向けては、ウサギを使った実験など、まだいくつもの段階をへる必要がある。

英シェフィールド大学のアラン・ペーシー教授(アンドロロジー学/男性学)はこの実験結果について、『BBC』 に次のように語っている。

「効果があり、可逆性(時間の経過とともに効果が消える)の男性向け経口避妊薬は、すぐにも必要とされているものです。長年にわたって数々の取り組みが行われてきましたが、発売に至ったものはありません」

「ヒトでの試験でも、マウスと同じ程度の有効性が確認できれば、この薬は私たちが探し求めてきた、男性の避妊の方法となりうるでしょう」

ワイル・コーネル医科大学の研究者は、より良い薬にするため、妊娠を防ぐ効果が12時間継続する経口薬(注射ではなく)の開発に向けて研究を行っているという。

──男性用の避妊薬が、ついに(近いうちに)、実現することになるかもしれない。

From COSMOPOLITAN UK