バイセクシャルという言葉に対する認知度は向上している一方で、未だに社会からの誤解や偏見が存在することも事実。またバイセクシャルの人々は、LGBTQ+コミュニティ内でも疎外感を抱きやすいと言われています。

そこで本記事では、<コスモポリタン アメリカ版>のライターでバイセクシャル当事者であるザカリー・ゼインさんが綴るエッセイをお届け。彼が考える、コミュニティの大切さとは――。

文:ザカリー・ゼイン

バイセクシャルの認知度の変化

大学生の頃から、自分のことを「ストレートではないのかもしれない」と思うようになりました。でも、女性のことは好きだし、デートやセックスはもちろん、女性と感情的につながることにも関心があったんです。恋愛・性的指向が同性だけに向いているわけではなかったので、自分をゲイだと定義するのは適していない気がしました。

当時大学2年生だった私は、自分のセクシャリティのヒントを得ようと、寮の中でネット検索に励んでいました。でも、「バイセクシャル男性」と検索をしても、私が欲しているような記事は見当たりませんでした。

12年が経ち、今「バイセクシャル男性」と検索すると、その光景は大きく変化しています。バイセクシャルに関する記事も数多く存在していて、自分の存在を認めてもらえていると感じられるだけでなく、デートの手引きやカミングアウトのアドバイス、そしてコミュニティの見つけ方などを学ぶこともできます。

また、多くの著名人たちがバイセクシャルやパンセクシャル(相手の性的指向や性自認を問わない)であることを公言していますし、 メディアやポップカルチャーで取り上げられることも増えてきています。『ビッグマウス』や新『ゴシップ・ガール』はもちろん、2018年にはHuluで『The Bisexual(原題)』というドラマまでありました。

この変化に喜びを感じる一方で、まだ満足できていない部分があるのも事実です。

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バイセクシャルに対する誤解

Bi Women Quarterly>のエディターであり、アクティビストの顔も持つロビン・オクスさんは、バイセクシャルに対するよくある誤解について、次のように話しています。

「悲しいことに、バイセクシャルは存在しないと考えている人や、バイセクシャルは一つのジェンダーにコミットできない、あるいは欠点だと思っている人もまだ存在しています。この数年で大きな進歩はありましたが、まだまだ改善の余地があるのです」

この意見に、私も同意です。未だにバイフォビア(バイセクシャルに対する嫌悪や偏見)の問題はあるし、「Current Sexual Health Reports」によれば、バイセクシャルの人は、他のセクシャリティに比べて、うつや不安などのメンタルヘルスに苦しんでいるという統計もあります。

これはバイセクシャルの人がストレートとゲイ、どちらのコミュニティにも属せず孤独を感じやすいということも原因だと言われています。

知ることが最初の一歩に

一方で、先ほど挙げたような時代の変化によって、「知る」ことへのハードルが下がったことはバイセクシャルコミュニティにとって大きなチャンスだと思っています。もちろん知るだけで問題は解決しませんが、最初の一歩にはなるはず。

知ってもらうことで、「私たちは本当に存在している」ということや「存在を尊重してほしい」というメッセージを伝えることもできますし、悩んでいる当事者に仲間がいることを伝えるチャンスでもあるのです。

記事を読んでいるだけで、勝手に友達ができたりパートナーが現れることはありませんが、自認をきっかけに一緒にコミュニティを築いていくことには繋がると思います。

認知度が高まると、そこからどんどん世界は広がっていきます。(バイセクシャルは)もう簡単には“いない”ことにされないし、たとえ消そうとする人がいてもそうはならないのです」と、「American Institute of Bisexuality」の事務局長、イアン・ローレンス・トゥリーニョさんも説明しています。

portrait of smiling male and female friends relaxing in living room
Maskot//Getty Images

バイセクシャルの居場所はどこ?

現在、バイセクシャルのコミュニティはネット上がメインの場になっています。ハッシュタグで世界中のバイセクシャルの人と繋がれますし、私もたくさんのバイセクシャルの友達を見つけることができました。

でもネット上だけでなく、実際に集える場所も必要です。バイセクシャルのためのバーや、クィアな居場所が。たとえば私が女性を恋人としてどこかの場所に連れていったときに、「ストレート」だと偏見を抱かれないようなところです。

Bisexual Men Exist(原題訳:バイセクシャル男性は存在する)』の作者であるバニート・メータさんも、この点について次のように説明しています。

「セクシャルマイノリティに開かれた場に参加する人の多くが、ゲイやレズビアンを自認する人で、特にゲイ男性がメインになっています。さらに残念なのが、そういった場でバイセクシャルの人が受け入れられないこともある…ということです」

自ら行動を起こす大切さ

だからこそ、バイセクシャルの人は自分たちで場所を作る必要があります。

私にとっては、NYブルックリンでバイセクシャルの男性とそのパートナーのための「BI SLUT」というイベントを開いたことは大きな経験となりました。バイセクシャルの人が初めて自分らしくいられる場所を提供できたことが何よりうれしかったです。

バイセクシャルの認知度が高まった先には、愛とサポートと楽しみにあふれたバイセクシャルのコミュニティができるはずです。こういったコミュニティはメンタルヘルスの改善につながるだけでなく、自分を受け入れることにつながります。

また、多くの研究でセクシャリティを受け入れることが心身に良い影響を与えることが分かっています。ただし、カミングアウトはしなければいけないものではありません。自分の安全性が確保できる友人やコミュニティ、環境が必要です。

カミングアウトをすることが、友人や家族を失ったり、住む場所を奪われたりすることに繋がってはいけないのです。若いバイセクシャルの人たちの中には、カミングアウトしたことで家族から追い出され、サポートを必要とすることもあることを知っておいてください。

※この翻訳は抄訳です。
Translation: Haruka Thiel
COSMOPOLITAN US