「今年はこんな年にしたい!」という目標を立ててスタートした人も多いのでは? ぜひとも年の始めに見て欲しい映画をラインナップ。
まわりを気にせず、女だけの野球リーグ作りに挑む姿が素敵!
『プリティ・リーグ』(1992年)
第二次世界大戦中のアメリカ。野球選手たちが次々と戦地に出征したため、リーグ戦開催が不可能になったメジャーリーグ。そこで女子によるプロ野球リーグを作られることになり、オレゴン州の片田舎で活躍するソフトボール選手だったドディ(ジーナ・デイヴィス)と妹のキット(ロリ・ペティ)のもとにスカウトマンが訪れる。全米各地から集められた64名の女性たちが4球団に分けられ、女子リーグが誕生。姉妹はロックフォード・ピーチーズに入団する。
戦時中、女子野球リーグが作られた事実をもとに製作された作品。出征中の夫を待つ女性やすでに家族が戦死しているなど、選手たちの背景はさまざま。「女性の野球なんて」とヤジを飛ばされながらも選手たちは本気でプレイする姿に、まったくやる気のなかった監督(トム・ハンクス)、そして観客たちも次第に心を動かされていきます。単なるスポ根ものではなく、心の機微を丁寧に描いている点が秀逸!
歩んできた人生があるからこそ、花開くときが来る!
『エリン・ブロコビッチ』(2000年)
エリン(ジュリア・ロバーツ)は3人の子どもを抱える無職のシングルマザー。学歴も技術もないため就活がままならないある日、交通事故に遭遇。被害者だったにも関わらず裁判で敗訴してしまう。憤った彼女は担当弁護士エドワード(アルバート・フィニー)に「私を雇って」と直訴し、弁護士事務所に何とか就職。担当した不動産案件のファイルから、彼女はある疑問を持つようになる。史上最高額の和解金を企業から勝ち取ったある実在の女性エリン・ブロコビッチを描いた作品。
自暴自棄になりそうだった女性が、ひょんなきっかけから巨大企業の闇を解明していく敏腕調査員に! しかしこれは単なる成功物語ではありません。どこまでも弱者に寄り添い、一歩も引かずに真実を突き止めようとするのは彼女自身がこれまでに経験した生活があったからこそ。どんな経験も必ずいつか生き、そして才能はどこに眠っているか分からないことを教えてくれる作品です。エリン役のジュリア・ロバーツの演技が絶賛され、米アカデミー賞主演女優賞を受賞!
女性の「人生の選択肢」を広げるために…!
『未来に花束にして』(2015年)
舞台は1912年のロンドン。洗濯工場で働くモード・ワッツ(キャリー・マリガン)は夫のサニー(ベン・ウィショー)と息子のジョージの3人暮らし。過酷な環境で子どものころから働いてきたモードだったが、「それが当たり前」と思ってきた。しかし同僚が婦人参政権を求めて婦人社会政治連合(Women's Social and Political Union)にしたことから、少しずつ自分の置かれた状況に疑問を持つようになる。
原題『サフラジェット(Suffragette)』は女性参政権を求めて活動する人たちを指す言葉。生活のためにひたすら働きづめだったモードが「人生の選択肢」の存在に気づき、少しずつ運動にのめりこんでいく様を描いた作品です。モードは架空の人物ですが、当時運動のリーダー的存在だったエメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)やエミリー・デイヴィソン(ナタリー・プレス)は実在の人物であり、実際に起こった事件がストーリーのベースになっています。逮捕や投獄、世間からの冷ややかな目を恐れず、未来のために戦った勇気ある女性たちの物語。
どうしようもない現実に直面しても、生きる。
『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年)
移植コーディネーターの女性マヌエラ(セシリア・ロス)と17歳の息子エステバンはスペイン・マドリードに暮らしていた。息子に父のことを聞かれたマニエラは、別れた夫について息子に話すことを決意するが、その矢先に息子は事故死してしまう。悲しみにくれつつも、息子の死を元夫に伝えるため、マニエラはバルセロナへと旅立つ。
マニエラの「元夫探しの旅」を通じ、キャラクターの濃い登場人物が次々に登場。皆、悲しみと「どうしようもない現実」を抱えています。人生は悲しくて不条理に満ちているものですが、同時に人間は苦しみを受け止め、耐えられる強さを与えられた存在なのだと思わせてくれるのがこの映画の醍醐味です。"息子を亡くす"というこれ以上ない悲しみを抱えながらも、優しさと包容力で人と人とをつないでいくマニエラの姿には憧れのような気持ちを抱く人も多いはず。ラストシーンまで衝撃の場面が続きますが、マニエラならそれも乗り越えられる――そんな、強い母の愛の物語です。
愛する彼のため、とにかく走る…!
『ラン・ローラ・ラン』(1998年)
恋人を救うため、20分以内に10万マルクを手に入れなくてはなないローラ(フランカ・ポテンテ)。ベルリンの街を全力疾走で走り、金策に走り回る。
映画というより、まるでゲームを見ているかのような作品。金が必要な理由や2人の背景はまったく説明されず、ローラは金を目指してひたすら走り、失敗すればそこで終わり。そしてまたまったく同じシーンからやりなおす、という「スタート」「ゲームオーバー」「リセット」そして「再スタート」を繰り返す構成で物語は進みます。テクノポップに加え、途中差しこまれるアニメーションの効果もあり、観客はローラになりきって街を駆け抜けることに。同じこと繰り返しているつもりが、結末は同じにはならないことの不思議さを感じつつ、愛する彼のために走り切る爆発力に圧倒される81分。見終わった後は軽い疲労感を感じるかもしれないけど、それ以上にきっと走り出したくなるはず!
自分はなんだってできる!そう信じている少女の物語
『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年)
アメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキに暮らすオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)は7歳の女の子。ミスコン女王になることを夢見てるが、カリフォルニアで行われるキッズ美人コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」の予選を通過したことを知り大喜び。自己啓発講師のパパ(グレッグ・キニア)、いつもイライラしているママ(トニ・コレット)、空軍士官学校に入るまで沈黙を通すと決めた15歳の兄、ヘロイン中毒の祖父、自殺未遂をしたばかりの文学研究者の叔父―― 風変りな面々で構成された家族6人全員が壊れかけの小さなバンに乗り1,300キロも離れた大会会場を目指して旅に出る。
登場人物全員がユニークすぎる点が見どころだけど、なかでも少女オリーヴの「まっすぐさ」と「強い意志」はアッパレ! 自分の思い貫くためにどこまでも進もうとする、まさに"最強少女"。しかしそんな彼女が映画の中でたった一度だけ弱音をつぶやきます。彼女の言葉には誰もが抱える悩みや本音が集約されており、強さの裏にある弱さと優しさが垣間見えるシーンに思わずホロリ。笑えて、ちょっと泣けて、そして最後には笑顔になれるヘンテコ一家の愛の物語。低予算映画ながら世界中に配給され、2007年の米アカデミー賞に4部門ノミネートされ、脚本賞と助演男優賞を受賞。
約100年前、女性の経営者が奮闘する姿を描いた作品
『愛と悲しみの果て』(1985年)
第一次大戦直前の1913年、デンマーク。カレン・ディネーセン(メリル・ストリープ)は裕福な未婚女性。「結婚しなくては」との思いから、資金難に悩むブロア・ブリクセン男爵に「便宜上の結婚」を持ち掛ける。2人はカレンの持つ土地で農場経営をするためにイギリス領ケニアに移り住むが、夫は仕事をしないばかりか浪費家で浮気性。彼女は経営者として1人奮闘しながら、少しずつ現地で知己を得ていく。そんなある日ハンターのデニス(ロバート・レッドフォード)と出会い、親交を温めるようになる。
デンマーク人作家アイザック・ディネーセンの自伝的小説を映像化した作品。圧倒されるスケールのケニアの大地で、農場主として強く生きるカレンが美しい! 植民地時代の上下関係を描きつつも、人権や平等を尊重し、従業員や現地の子どもたちと共にコミュニティーを作り上げていくたくましさに心が熱くなる人も多いはず。デニスとのとろけるような恋物語や美しい調度品など、見どころたっぷりの大河ロマン。1986年米アカデミー賞で10部門にノミネートされ、作品賞、監督賞を含む7部門を受賞した名作。