技術の進化が目覚ましい「写真加工フィルター」。過度な使用の是非が問われる中で、TikTokが最近リリースした新たなフィルター「ボールドグラマー」が、従来のものとは一線を画するものだとして、物議を醸しています。というのも、その効果が絶大で、あまりに自然だから。

本記事では、この新たな写真加工フィルターの特徴と、ボールドグラマーを取り巻く議論について、<コスモポリタン アメリカ版>からご紹介します。

「ボールドグラマー」とは?

TikTokに新たに実装されたフィルター「ボールドグラマー」は、なめらかな肌、くっきりとしたあごのライン、鼻筋の通った鼻、ふっくらとした唇といった“画一的な美貌”へと加工を施していながら、これまで以上に“バレにくい”フィルターとして注目を集めています。

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これまでにも、似たような加工を施すフィルターは数多く登場していますが、 「ボールドグラマー」はユーザーの顔の造形を検出したうえで、顔に馴染むようにフィルターがかけられるという点と、手などで顔を遮ると多くのフィルターが外れてしまう一方で、顔を手で触っても加工にほとんど影響がない“自然さ”が特徴。

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ボールドグラマーの技術について

テック系メディア<The Verge>は、ボールドグラマーの“自然”なフィルタリングを可能にした背景にはAI技術が関わっていると推測。TikTok側に質問状を投げるも、返答は得られなかったと言います。

<The Verge>はここで引き下がらず、InstagramやSnapchatなどで加工フィルターの制作に携わったことがあるARコンサルタントのルーク・ハード氏に問い合わせ、今回の技術について取材をしています。

ハード氏によると、ボールドグラマーは機械学習技術、特にGAN(敵対的生成ネットワーク)を使っているそう。ハード氏は、「この2つの技術を互いに競わせることで機能している」と話し、ボールドグラマーの場合には、スマホのカメラで正確に捉えられたユーザーの顔写真と、人工的にプログラムした“理想”の顔を競合させていると言います。また、“理想の顔”を形づくるために学習させているデータの数は膨大とのこと。

フィルターが自尊心に与える影響

現在「ボールドグラマー」が議論の的となっている理由は、使用する人はもちろん、加工がほどこされた動画を見たユーザーたち両方の自尊心やセルフイメージに影響を与えるから。

TikTokを活動の拠点としているヒーラ・ムスタファさんも、このフィルターの登場に危機感を覚えている一人です。

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「私も一時期、フィルターを通したものばかり発信していた時期がありました。そうすると、実生活で鏡を見たときに自分の顔に不満を持つようになったんです。自己肯定感に影響があることを実感し、その頃からフィルターを使うことをやめ、フィルターを使って発信しているモデルたちのフォローも外しました。自分自身のメンタルヘルスのために、そしてあなたの投稿を見る人たちのためにも、フィルターを使わないことを勧めたいです」

美容やボディケア製品などで知られる「Dove」による自己肯定感に関する調査によれば、フィルターや画像修正によるネガティブな影響を受けやすいのは、特に若い世代の女性たちだそう。85%の女性が13歳までに画像修正アプリを使用したことがあり、メンタルヘルスに対する影響は甚大だと言われています。

この研究ではまた、多くの女性たちがSNSで表現される“美の基準”によってプレッシャーを受けていることや、2人に1人がSNS上のコンテンツが自尊心の低下につながることを認識していることが分かっています。

美容整形が必要だと思い込ませる可能性も

美容整形手術の是非については、日本はもちろん欧米でも盛んに議論されているトピック。自らの意思で選択する分には個人の自由である一方で、加工フィルターによる非現実的な“美”に慣れてしまったり、ルッキズムによる社会的なプレッシャーに影響され、「美容整形が必要」だと思いこんでしまう人や、身体醜形障害につながるケースも。

実際、こうした懸念には根拠があります。2021年の<American Journal of Cosmetisc Surgery(美容整形に関するレポート)>による研究は、「SNS上で顔を変化させるソフトウェアの使用は、その後に顔の整形手術を受けたくなる願望と強い関連がある」としており、米フェイシャル形成外科学会の報告によると、30歳以下(いわゆるジェネレーションZとミレニアル世代の間)で美容外科手術や注入治療などを受けようとする人々の数が増え続けているそう。

こうした理由から、ボールドグラマーはTikTokのエフェクトガイドラインに抵触するのではないか、という声も。そこには、「害をおよぼすような行為への参加を描写するコンテンツは奨励しません。また、他者を危険な行為に参加させるよう促すコンテンツ(たとえば、フェイスリフトや鼻形成術などの美容外科手術の描写と促進)は許可しません」との文言があります。

TikTokで活動する@JoannaJKennyさんは、識別できないほど彼女の容貌を変えたボールドグラマーについて「使うべきじゃない」と警鐘を鳴らしています。

「実際の私はこのような外見ではないけど、このフィルターはとても馴染んで見えますよね。恐ろしいことです。自分にこんな言葉をかけたくないですが、このフィルターを外した直後は自分の顔が醜く見えてしまいます。このフィルターを試すまでは、自分の容姿に満足していたにも関わらず…です。私たちの脳は、どう処理していいか分からず混乱してしまうんです。こんなフィルターはなくなるべき」
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※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto
COSMOPOLITAN US