欧米では、家族や親族と集まることが慣例となっていることも多いホリデーシーズン。一方で、LGBTQ+当事者の中には、家族と会っているときに疎外感や居心地の悪さを感じてしまう人も。そんな時、その人らしさを理解しようと努め、寄り添ってくれる存在が一人でもいたら――。
そんな願いを込めたコマーシャル動画をウイスキーブランドの「J&B」がYouTubeで公開したところ、たちまち話題に。すでに260万回以上再生され、多くの好意的なコメントが寄せられています。
おじいさんがメイクを練習しつづけた理由
注目を集めたのは、ウイスキーブランド「J&B」のスペイン支社がクリスマスを前にYouTubeに投稿したコマーシャル動画。
物語は、一人のおじいさんがこっそりとメイクを練習するところから始まる。最初は上手くできなかったものの、熱心に研究や練習を重ね、ようやく納得がいくメイクができるように。そして、ついに家族が集まるクリスマスの日。おじいさんは孫にそっと声をかけ、洗面所に連れていく――。
トランスジェンダー女性の孫を勇気づけようと、自らがメイクを研究し、寄り添う姿勢を見せたおじいさん。その姿に、孫のアナは涙を浮かべます。 動画の最後には、「魔法は、クリスマスにだけ現れるのではない。私たちの中にも存在するのです」というメッセージが。
動画制作の背景
「J&B」スペインの公式サイトでは、性別移行を経験したトランスジェンダーやノンバイナリーの人の77%が、「家族と過ごす時間が最も辛かった」と答えたという、スペイン平等省による統計を紹介。
そして、動画を制作した意図を次のように説明しています。
「J&Bは、誰ひとり取り残されることなく、全ての人にクリスマスを祝ってほしいと願っています。一方で、LGBTIQ+当事者の中には、家族に受け入れられていないと感じたり、気まずい空気を感じることがあるのです。そういった背景から、家族とお祝いをできない人もいます」
「今回、おじいさんとその家族というストーリーを作ったのも、そこが理由です。また、トランスジェンダーのアーティストで、コミュニティの声を発信しているエジャ・ディ・アモーレさんによる解釈を伝えています。このストーリーを通して考えてもらいたいのです。クリスマスのような時期に、受け入れる心と敬意、そして祝福の気持ちを持っていてほしいから」
動画を見た人々の反応
動画への反応の多くは好意的なもので、2万件を超える「いいね」がついているほか、5000件近いコメントが寄せられています。
「愛と思いやりにあふれたCM」、「受け入れただけではなく、自らが学び、他の人にもサポートしている姿勢を表明しているところが素晴らしいと思う」といった声のほか、「トランスジェンダーの子供を持つ者として、涙と笑みが同時にこぼれました」といったコメントも。
また、スペインの女優で、トランスジェンダー女性として初めて議会議員になったカルラ・アントネッリ氏も「素晴らしいコマーシャル。愛と共感を呼び、私たちの人生にもリスペクトを示しています」とツイートしています。