先週末に、米ロサンゼルスで開催された「米国女性サミット」で講演を行ったミシェル・オバマ前大統領夫人。夫バラク・オバマ氏の退任後、政治的な発言を避けてきたミシェル夫人だけれど、出馬については予定がないことを明言。また、政治参加を呼びかけるオーディエンスの声に対し「やめなさい」と制する一幕も。そこに込められた彼女の想いとは…?

「米国女性サミット」で、プライベートでも親交があるという女優トレイシー・エリス・ロスと対談を行ったミシェル・オバマ前大統領夫人。幅広いトピックについて語り合った二人だけれど、中でも注目されたのが、2016年に行われた米大統領選挙と、未だアメリカに蔓延る性差別について。

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ミシェル夫人が特に語気を強めたのは、次期大統領選への立候補について質問された時のこと。オーディエンスからも期待の声が上がる中、「その話はやめて。私に期待しないで」と訴えたのだ。

「私の夫バラクが掲げた「私たちならできる(Yes, We Can.)の意味を理解しなければいけないわ。私たち女性が一つのコミュニティとして団結しなければいけないの。誰か一人の代表者が女性全体の問題を解決する前にね」
「あなたが立候補すべきよ」という声が寄せられるけれど、それこそが問題の一部なんです。出馬する“誰か”に焦点を当てる前に、すべきことがたくさんある。だって、その“誰か”が私たちなのだから」
「だから、救ってくれる“奇跡的な誰か”を待つのではなく、それぞれが向き合いましょう。私たちを救えるのは、私たちなのよ。まずは自分自身が、周囲の女性や女の子たちをエンパワーするのに何ができるか、何をしているのかを考えて」

さらに女性たちの意思や発言が一体になった時の方が、ミシェル夫人自身が代表となって行動するよりもはるかに影響力があるとも語り、その理由の一つとして、夫バラク氏の政権時の事例を挙げた。

「バラクを支持してくれた多くの人々は、彼が“救ってくれる”と期待していたでしょ。でも結局のところ彼は、人種差別を無くせなかったわ」

「女性一人ひとりが立ち上がり、行動する勇気が必要だ」と訴えたミシェル夫人。米国初の女性大統領の誕生を期待されていた2016年の大統領選についても自身の見解を明らかに。

「あの選挙のことを考えると、女性の一員として、私たち自身のことが心配になるわ。大統領に最もふさわしい候補者が女性だった時、私たちが何をしていたか振り返って欲しい。その結果が、現在のアメリカを物語っているのよ」

<ワシントン・ポスト>によれば、同大統領選で白人女性の52%がトランプ氏に投票したとのこと。この現実を目の当たりにしてミシェル夫人は、草の根活動でも周囲の女性をエンパワーすることが先決だと感じたのだそう。ミシェル夫人は、この講演をこう締めくくっている。

「笑われるかもしれないけど、私にとって一番重要な使命は、母として自分の娘であるマリアとサーシャがどんな女性に成長するかなの。だって自分の娘を満足に育てあげられなければ、他の人たちを導くなんてできないでしょ。つまり私が言いたいのは、まずは自分の家族や子どもたちに目を向けてほしいってこと。その中に、食卓で言いたいことを言えずにいる女性がいるかもしれない。父親や夫の意見に逆らえずにいる女性がいるかもしれない。そこから始めましょう」

たった1人の正義の味方を切望して待ち続けるのではなく、まずは女性として自分自身ができることを見直してみる。そしてそんな女性たちの発言や行動が一体化することこそが、女性の権利向上に大きなパワーとなってくれると説いたミシェル夫人。彼女のメッセージは、きっと多くの女性の心を動かしたはず。