アシュリー・グラハムやイスクラ・ローレンスを筆頭に、プラスサイズモデルの需要が高まるファッション業界。そこには、「体型に関わらず誰もがファッションを楽しめるように、これまでの“美の固定概念”を是正してほしい」という声が高まったという背景が。また、フロリダ州立大学が発表した最新の研究によると、「プラスサイズモデルを見た女性はメンタル面の健康が向上する」という結果が出るなど、マーケットとしてますます注目度があがっていくことは必至。そんな中、イギリス発のグローバルブランドが、サイズ16以上の商品を15パーセント割高に設定していたことが判明。“プラスサイズ税”を設けたことで、賛否両論を呼んでいるよう。

1969年、イギリスで生まれたアパレルブランドNew Look」。現在はイギリスに約600店舗、ヨーロッパやアジア圏に300店舗以上を構え、世界で支持されるブランドのひとつ。そんな人気ブランドによる“プラスサイズ税”の設定は、瞬く間にネット上で議論の的に。

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最初に声を上げたのは、アパレル会社の監督者を務めるマリア・ワッセルさん。彼女が「New Look」のオンラインサイトで商品を検索していたところ、緑色のストライプのデザインが入ったボトムスが「スタンダードサイズ」では19.99ポンド(約2,980円)で販売されているのに対し、「サイズ18」は22.99ポンド(約3,430円)と、15パーセント増に価格設定されていることを発見。

これに気づいたマリアさんは、他の商品のプライスも確認。以前、同会社から12.99ポンド(約1,940円)で購入したというサイズ18のグリーン色のトップスは、サイズ16以下の“スタンダードサイズ”では、30パーセントを下回る9.99ポンド(約1,490円)で販売されていたのだとか。

自身も小売り店で26年間のキャリアを持つというマリアさんは、同ブランドの方針に納得いかず、メッセージを発信。

「これは、大きな体型のお客様への差別よ。私はアベレージより少し大きいだけなのに。イギリスの標準サイズは「16」。私は「18」だから、そんなに変わらないでしょ」
「しかも統計によると、3年前に比べて、プラスサイズの商品を購入する消費者が増えてきているのよ」

「プラスサイズの洋服には、スタンダードのものよりも多くの布が必要だから費用がかかるっていう声もあるけれど、そんなのいい加減よね。私、以前にプラスサイズのブランドで働いていたことがあるから、実際のカラクリはよく理解してるわ」

また、「New Look」で販売されている商品の丈は、スタンダードサイズもプラスサイズも同じであると説明し、反論を受け入れる気持ちはないと訴えたマリアさん。また、マリアさんに賛同するように、SNSではこんな意見も。

「プラスサイズの洋服には材料費がより多くかかるから、価格が高くなっても仕方がない? それならなんで、12サイズと6サイズの価格が同じわけ?」

一方で、プラスサイズの商品が割高に設定される背景について、合理的だと語る人も。たとえば、ロンドンに拠点を置く衣料メーカー「Hawthorn」のロブ・ウィリアムズ氏によれば、プラスサイズの洋服をつくる際には、材料費が問題なのではなく、デザインの過程がスタンダードサイズに比べてより大変なのだそう。

「プラスサイズの形をデザインするには、より時間がかかるんだよ。スキニージーンズとレギンスのように、同じサイズ感の中でデザインを変えるのとは訳が違う。ブランドの数を例にしてもそう。プラスサイズの正しいデザインを開発しているところは限られているんだ」
「サイズ10、12、14を例にすると、そこまで素材の消費に大差はない。でもサイズ10と20を比べて、商品の価格帯が変わってしまうのは致し方ないでしょう。そうなると、10-16での価格帯、16-24の価格帯…と区別することになりますね」

また、フィットネスウエアのデザイナーで「Locket Loves」というプラスサイズのアクティブウエアを経営するルーシー・アーノルドさんも、市場調査と顧客からのフィードバックに多くの時間を費やし、プロダクトが適切であるか確認しているのだそう。

「プラスサイズの洋服をつくるには時間がかかるのよ。消費者が求めているものがきちんとカタチにできているか確かめなければいけないから。サイズ表が良い例ね。私はサイズ26まで作りたいの。でも、そのサイズの平均値にまだ納得がいかないから、一歩踏み出せないでいるわ」

賛否両論が寄せられる中、今回のマリアさんの訴えに応じる姿勢を見せた「New Look」。同ブランドの代表が、今後の価格見直しについて発表。

「今後このような価格差が発生しないことを保証します。“プラスサイズ”カテゴリーの価格構成を見直しているところです。利益だけでなく、消費者の皆さまのに納得していただけるようなモノづくりを務めていきます。プラスサイズのお客様をはじめ、いかなる体型やサイズの方でも、私たちのブランドをご愛用いただいているお客様すべてに価値があると考えています」

需要の高まりと共に、アパレル業界にとっての課題が浮き彫りとなった今回の一件。両者が納得のいく解決策が見つかることを願うばかり。