著者は性暴力について取材しているライターの小川たまかさん。この本は私がまだジェンダーやフェミニズムなどという言葉を知りたての頃に読んだ本です。
私は2017年に自分が芸能界で経験したセクハラや性暴力について『#MeToo 「私も。」』という記事を書きました。その時にトークイベント出演のお誘いをくださって、以来個人的に絶大なる信頼を寄せているのがたまかさんです。
この本は、当時まだ女性差別の問題について何も知らなかった私にとっても非常にわかりやすく、読了後はピンとこなくても「このままわからないからといって放っておいてはいけない問題だな」と思えるような本なのです。
例えば「外見を褒められたら必死で否定しなければいけないあの雰囲気について」という章。この章では、バラエティ番組に出た女優の容姿を男性司会者が褒めたところ、「ありがとうございます」とさらっと受け、男性司会者が「否定しないんだ〜!」という会話が繰り広げられた話や、2017年に稲田朋美(元)防衛相が他国の女性大臣と自分について「私たち3人には共通点がある。みんな女性で、同世代。そして全員がグッドルッキング(美しい)!」と言い、フランスの女性記者が「まるで古臭い男性のようだった。女性である大臣自身が、女性差別的な発言をしたのに驚いた」と語った話が取り上げられています。
当時の私は、まだまだこの社会の価値観に洗脳されていたので、一体何がおかしいのかわかりませんでした。だけど、何かが引っかかっていたんです。そしてこの本を初めて読んでから1年半がたった今、やっとたまかさんの感覚に追いつくことができました。容姿は関係ない仕事の場で、女性のみが美しさについて言及されることのおかしさ。その後、女性のみにヒールを履かせて足を綺麗に見せようとする社会に疑問を持つようになって、やっと全てのつながりを理解したのです。
性暴力からフェミニズムの問題まで、丁寧に冷静に向き合う姿勢と、そしてたまかさん特有のなんとも言えない言葉のチョイスの面白さ。何かにモヤモヤしている人がいたら、ぜひ読んでほしい一冊です。(石川)