「『こうあるべき』を超えていく」をテーマに、セクシュアリティやジェンダーを中心としたさまざまな生き方や人権について、マンガや記事でわかりやすく紹介することを目指しているメディア「パレットーク」。

実話に基づくストーリーでLGBTQ+やフェミニズムなどについて紹介しているSNSやnoteは、これまでも多くの人の“学び”へとつながっています。

今回は「パレットーク」の編集長を務める合田文さんに「プライド月間に読みたい、LGBTQ+に関する本」を聞きました。

文:合田文さん

欧米諸国はじめ、世界各地で虹色の旗がひらめく6月。この頃になると「LGBTQ+についてのお祭りがやっているらしい」なんて知っている方も多いのではないでしょうか。去年と今年は新型コロナウイルスの影響で中止となってしまったものの、代々木公園から出発するプライドパレード​の行列を見たことがあるという方もいるはず。

1969年のニューヨークでは、警察によるゲイバーへの踏み込み捜査が行われていたそう。その年の6月28日にはゲイバー「ストーンウォール・イン」に警察の手入れが入り、その場の「ゲイ」たちが対抗。暴動が起こりました。

後に「ストーンウォールの反乱」と呼ばれたその暴動は、LGBTQ+の人権運動への転換点や象徴として捉えられ、それをきっかけに6月はプライド月間と呼ばれるようになったと言われています。

それから約50年。まだまだ「LGBTQ+だから」という理由だけでからかいの対象になったり、国から非当事者と同じ選択肢を許されなかったり、あからさまな差別のつもりがなくても傷つけられてしまったり。そんなことは日本でも毎日起きています。

だからこそ、声は止まない。表舞台のハッピーなレインボーフラッグ、ポジティブなプライドパレードだけでなく、その裏側では、傷つきながらも自分や大切な人たち、次世代のために声を上げてきた人の歴史がある…とはいっても、多くの人が学校でもよく習わないこのトピックス。「勉強してみたいけど、どこから情報をゲットしたらいいか分からない…」そう思う人も多いかもしれません。

この記事ではそんな人にも読みやすいLGBTQ+に関する本を紹介。プライド月間だからこそ、ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。

『マンガでわかるLGBTQ+』

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この本をチェック

TwitterとInstagramのフォロワー総数11万を超えるLGBTQ+メディア「パレットーク」から、2021年のプライドウィーク間際に出版された新しい本。マンガをメインに読みやすさに振り切った入門書で、LGBTQ+当事者だけでなく、今までまったくLGBTQ+について触れてこなかった人にもおすすめ。

体験談として寄せられた実話を元にした19もの短編マンガストーリーを基軸に、セクシュアリティやジェンダーのこと、男らしさや女らしさのこと、同性婚やパートナーシップ制度のことなどが図解などで解説されています。

ストーリーは思わず「あるある」とうなずいてしまうものから、「本当にそんな差別が起きてるの?」と疑いたくなってしまうものまで…。FAQコーナーやコラム、本に直接書き込めるワークも充実しているため、ただ読むだけでなく「これから自分に何ができるか」を考え、行動するきっかけになる一冊になるかもしれません。

『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』

ビジュアルも多く子どもたちにもわかりやすいように、LGBTQ+の権利を求めて闘った人々の100年にわたる歴史が描かれています。

今でこそ「同性同士の両親とその子どもたち」のような家族のかたちも多く見かけるアメリカですが、現在に至っても差別や偏見は消えていません。しかしながらこの100年という長い歴史の中でLGBTQ+の権利についての運動は着実に、一進一退を繰り返しながらも進められてきたということが実感できるのがこの本の魅力。

冒頭でも紹介した「ストーンウォールの反乱」をはじめ、断片的に知られている歴史の1ページも、「同性婚を可能にした最高裁の判決」やこれからの未来に向けての大切な一歩で、決して忘れてはいけないことなのだと思える一冊になっています。

『3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん』

トランスジェンダー男性の著者杉山文野さんは、本書のなかで戦友とも語るゲイの友人から精子提供を受け、パートナーの女性との間に子どもを持つことを決意。現在はふたりの子どもと杉山さん、パートナーの女性と4人で暮らし。そしてゲイの友人、「ゴンちゃん」がたまに遊びにくるという形で生活を送る彼らのファミリーエッセイです。

子どもを持つきっかけやその経緯、3人で親をやっていくという中でのすれちがいや、自分たちの親のこと。まだまだ日本ではロールモデルを見つけづらいあり方だからこそ直面する問題のようで、家族ってなんだろう? 親子ってなんだろう? 子育てってなんだろう? という問いについて考え続けるというのは、どんな家族にとっても大切なのかもしれません。

日本にいる家族は、いわゆる「異性同士の夫婦と、その間に自然妊娠で生まれた子ども」のような形だけではない。「家族とはこういうものだ」という先入観をこえて、とにかくやってみる。ダメだったらまた考え直す。そんな杉山さんたちの姿に勇気をもらう人も多いのではないでしょうか。

『ぼくのほんとうの話』

ゲイ当事者のマンガ家、うさきこうさんの初恋を描くコミックエッセイ。瑞々しくやさしいタッチで描かれる小学三年生の「こう君」のリアルな心情や、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる情景描写、そして自身のセクシュアリティへの不安な気持ちが伝わってきます。

「男の子が男の子に恋をするだなんて、大人は誰も教えてくれなかった(本文より)」著者が大人になった現代でも、そんなふうに思って小さな胸を痛めたり、自分はおかしいんじゃないかと自責の念にかられてしまったりする子どもは本当にたくさんいます。

LGBTQ+の存在を知っていても「当然自分のまわりにいる子どもは異性を好きになる」、そんなふうに思い込んでしまう人は多いのは事実。実際は異性を好きになるかもしれないし、同性を好きになるかもしれない。誰のことも好きにならないかもしれない。そんな認識が広がって、「こう君」と同じ胸の痛みが社会から少しでもなくなることを願って。ティーンや普段は文章を読まない方にもおすすめ。

『みんな自分らしくいるためのはじめてのLGBT』

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¥902

2021年に発売されたこの本は『はじめてのLGBT』と書かれているものの、ゲイやレズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーの当事者が直面しやすい問題や、持たれてしまいやすい誤解などに関する知識や考え方だけでなく、個性を大切にするってどういうことなのだろうか? 恋愛では、絶対にモテたほうがいいんだろうか? 親子関係でもわかり合いきれないこともあるのだろうか? …というところまで話は展開します。

「LGBTQ+についての話を読んでいた」つもりが、セクシュアリティやジェンダーにまつわる話を越えて、自分がLGBTQ+の当事者であろうがなかろうが、共感できることがある本なのではないでしょうか。性のあり方だけではなく、常に私たちを取り巻いている「当たり前」というものは、私たちを「私たちらしいままで」はなかなか居させてくれない。そんな「当たり前」に疲れてしまった人に読んで欲しい一冊。


合田 文さん(パレットーク編集長)

lgbtq+に関して「勉強してみたいけど、どこから情報をゲットしたらいいか分からない…」そう思う人も多いかもしれません。この記事ではそんな人にも読みやすいlgbtqに関する本を「パレットーク」の編集長を務めるayaさんが紹介。
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平成4年生まれの起業家。「らしく生きるを、もっと選びやすく」をテーマに、メディアやマッチング事業を展開。マンガでわかるLGBTQ+メディア「パレットーク」編集長をつとめる傍ら、ダイバーシティ&インクルージョンやフェミニズムに関しての執筆や登壇を行う。

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