コロナ禍での自粛生活を終えて、少しずつ外に出るようになってくると、自粛期間には感じなかった新たな悩みが生まれてくるもの。その一つに「体重増加による不安」があるかもしれません。

ボディサイズの変化を受け入れられないままに対面で人と会うようになり、人目が気になったり、周りの人と自分の状況を比べて落ち込んでしまったり…と、ジレンマを抱えている人も。

本記事では、そんな人たちに向けてセラピストや摂食障害の専門家が贈るアドバイスを <グッド・ハウスキーピング>からお届けします。


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ストレスに晒されていたコロナ禍の生活

時間の経過や心の状況、置かれた環境から、身体が変わっていくのは当然のこと。

特にパンデミックの約2年間、私たちは 終わりの見えない不安やストレスの中で過ごしてきました。自粛期間は私たちが望んで取った長期休暇などではなく、不安定な状況の中で生き延びるための措置だったのです。様々な制限から、運動の選択肢が減っていた人も多いはずです。

テイクアウトやデリバリーサービスが充実するなど、この数年で食生活も変化しました。思うように遊びにいけないストレスなどから、自宅での飲酒が増えたり、やけ食いに走ってしまった人もいるかもしれません。

中には、コロナ禍での派遣切りなどの経済的な理由で食事の選択肢が狭まり、買えるものだけを食べていたら体重が増えたということもあるでしょう。

実際に2020年に公開された研究によれば、コロナ禍での「食生活の乱れ」を訴える人が急増したといいます。               

厳しいダイエットが
「やけ食い」 の前兆に

運動量が減ったうえにストレスで食べる量が増えれば、体重が増えることは不思議ではありません。そんな状況に自分を責めてしまう人もいるかもしれませんが、食べることで不安な気持ちを癒すという行動自体は、理にかなった行動だと言えるんだそう。

摂食障害の治療を専門とするワシントン州の登録栄養士アミー・セバーソン氏は、「体重増加への不快感の正体は、ダイエット文化が植えつけた“ファットフォビア(太っていることや脂肪に対する異常なほどの嫌悪感)”にある」と言います。

むしろ、体重増加への不安がさらなる暴飲暴食を招きかねないことを、私たちは知っておくべきかもしれません。とある調査によると、厳しい食事制限やダイエットへの意識が「やけ食い」につながる前兆の一つであることが分かっています。

「太ったから食べすぎないようにしないと」 と自分に言い聞かせ、食事を抜いたり、不健康なほどに量を減らしたりしているうちに、何かのきっかけで暴食へとつながってしまうのです。厳しすぎる食事制限が原因であると気づけない場合には、「我慢ができない自分」を責めてしまうことにもつながり、悪循環に陥ります。

食事や体との付き合い方は、もっと穏やかであるべきなのです。

身体は変わるもの!コロナ禍での体重増加を悩まなくていい理由
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いまこそ自分に優しくしよう

最初にも触れたように、コロナ禍でライフスタイルの変化は避けられませんでした。だからこそ、その影響で変わった体に対して批判的になるのではなく、まずは受け入れることから始めてみてください。

こんな時間にアイスを食べるなんて私はだらしない」と思うのではなく、「このアイス、すごく美味しい! ストレスだらけの長い一日をおつかれさま」と考えてみる。「もうしばらくジムにも行けていない…」ではなく、「体を十分に休ませることができてよかった」と考えてみる。

パンデミックを乗り切るために行ったことはすべて、“健康のためだった”と考えるべき」と話すのは、ペンシルバニア州で摂食障害セラピストとして活躍するレイチェル・ミルナー博士。

「レジリエンス(困難に対する適応能力や、ストレスに対する柔軟性)という言葉がよく叫ばれますが、それはボディサイズとは何ら関係ありません。ベッドから出てシャワーを浴びるだけで、レジリエンスが発揮される日もあります。ビデオ会議にログインすることも、レジリエンスです」
「たとえ世間があなたに対して『〇〇でなければ魅力的ではない』『〇〇ができなければ能力がない』と思いこませようとしていたとしても、不完全な自分でいることを受け入れること自体、レジリエンスなくしてはできないことなのです」

言い換えれば、あなたは存在しているだけ価値があるということなのです。

体重だけに囚われない

大きくなった身体の美しさに満足したとしても、「健康を取り戻すためにはこの体重を減らす必要がある」と考える人もいるかもしれません。ただ、最近の研究結果によれば、その答えはノーです。

パンデミックの影響で運動や健康的な食事ができなかった場合は、体重の変化に囚われずに、ライフスタイルを緩やかに自分の心身に合ったものに移していくことに集中しましょう。また、医学的な理由で体重が増えたのであれば、減量で解決しようとするのではなく、根本的な問題を治した方が良いでしょう。

2012年に行われた「アメリカ疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention、通称CDC)」の国民健康・栄養調査データによると、体重よりも生活習慣全般の方が健康を予測するのに適しているようです。

その結果、体重に関係なく、禁煙、適量の飲酒、一日5皿以上の野菜と果物の摂取、月に12回以上の運動など、健康的な生活習慣を実践している人ほど長生きすることがわかりました。

ただコロナ禍では、生活習慣が乱れた人も少なくないはずです。“体を元に戻す”ことではなく、自分に合った生活習慣を少しずつ取り戻すことを試してみてください。

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Margo Ovcharenko//Getty Images

他人と比べてしまう人へ

ライフスタイルの変化は多くの人に訪れたことですが、身体の変化には個人差があります。そのため自粛期間が終わり、周りからどう見られるかが気になったり、他人と自分を比べてしまう人もいるかもしれません。

ミルナー博士は「まずは、あなたの心身がパンデミックを乗り越えられたことに感謝すること」を前提としながら、具体的なアドバイスを贈っています。

「自分の外見に不安を持ったときには、何が心配なのかを伝言ゲームのように言葉にしてみてください。もしかすると、『人付き合いが疲れる』など違った原因も出てくるかもしれません。そしてそれらは、体重の変化とは関わり合いがないことに気づいてほしいんです」

繰り返しになりますが、身体は変わるもの。失ったものを嘆くのではなく、コロナ禍を生き延びるために行ったすべてのことを受け入れることからはじめてみましょう。

※この翻訳は、抄訳です。
Translation:TOMOKO NOURRY
GOOD HOUSEKEEPING