ありのままの自分を愛することを指す、“ボディポジティブ”という言葉。「表皮水疱症(ひょうひすいほうしょう)」というまれな皮膚疾患を生まれたときから抱えるジャーナリストのマイラ・アリさんも、そのような価値観を大切にしているひとり。

表皮水疱症は、表皮と真皮を接着させるタンパクの異常により発症する遺伝性の疾患で、重症の場合にはⅡ度熱傷(表皮および真皮に水ぶくれやびらんができるやけど)に似た治癒が困難な跡が残ったり、手や足の指が癒着することがあるもの。

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本記事では、厳しい治療や世間からの偏見を乗りこえ、マイラさんが自分の体に自信をもてるようになるまでのストーリーを<グッド・ハウスキーピング>からお届けします。

ーー あなたの人生や自分の体を愛することに対して、表皮水疱症はどのように影響してきましたか?

これまでの私の人生は、ずっと痛みに耐えるものでした。

傷を覆うための包帯の交換、そして手やまぶたの傷跡を減らすための再建手術を定期的に受けています。疾患の影響により手がミトンのような形になっているので、毎日包帯を取り換える際、長くて一時間以上かかることも。看護師に毎日自宅にきてもらい、手伝ってもらっています。

私にとって自分の体に自信がもてるようになるまでは、長い道のりでした。自信のなさを乗りこえるために、“欠点”を認めて受け入れなくてはなりませんでした。でもそうやって、包帯を巻いていてもほかの女性たちと同じように魅力的だし、完璧な肌を持っていなくても美しいということに気づいたのです。

ーー 自分の体や自尊心に関係する、子どもの頃の記憶は?

子どもの頃から、包帯を巻いている自分は他人と見た目が違うのだと認識していたことを覚えています。

ティーン時代は見た目の理由以外にも、ほかの女の子たちは私より自立しているように見えて、私もそうなりたいと思うことがありました。私は包帯を巻くのにいつも助けが必要でしたし、学校で字を書くときには誰かに手伝ってもらわなくてはならなかったから。

パキスタン系イギリス人のコミュニティで育ったことは、自分に自信を与えるような環境ではなく、むしろ障壁のように感じられました。私はよく何かしらの形で劣っていると見られ、私のような女性は普通の人生は送れないだろうと思い込まれたのです。そのことは時にとても私を苛立たせ、自尊心にも確実に影響を与えました。

この疾患を抱えているだけでも十分大変なのに、そのうえ“病人”として扱われるのは余計に心の負担になっていました。どのような出身だったとしても、女性で障がいのある人は多くの場合、ほかの人とは異なる扱いを受けます。そしてそのことが、私たちの自己肯定感に悪い影響を及ぼすのです。

ーー 一番大変だったことは?

大学に通っていた20代、主に恋愛に関する不安、そして一生結婚できないだろうという考えに苛まれたことにより、重度のうつ病に悩まされました。

長い間、ほかの女性たちと違うから自分はダメなんだと考え、自身をすごく追い詰めていました。一番つらかったのは、親戚たちが「親族の中でどの女の子たちが結婚しそうか」という会話をしていたときに、私が含まれていなかったこと。障がい者だから省かれたのだと感じました。

誰とも恋愛はできないのかもしれないという不安によって、私は消耗していました。実際にいざデートをしても、一部の男性は私に対して上から目線にならずにはいられないようでした。

ある男性と一緒にデザートのブラウニーを食べたとき、食べおえた私の手を見ながら彼が「よくがんばったね」と言ったんです。どんなに善意にあふれていたとしても、こういったコメントは恋愛に発展するチャンスをすべて奪い去ります。

ーー どのように自分を愛するようになっていきましたか?

誰にでも苦労する時期というのはあると思いますが、私の場合はいくつかのことが支えとなってくれました。心理カウンセリングが立ち直る強さを育ててくれ、ジャーナリストになって自分の話を共有するようになると、それはとてもエンパワリングでした。

私はソーシャルメディアを通して自分の経験していることをできるだけオープンに語るようにし、あらゆる形の“美”をたたえています。そして、世界中の数多くの人々がSNSでメッセージをくれるんです。その中には、持病を抱えていたり、つらい思いをしたりしている人たちもいます。

彼らは私の活動を見て、たくさんの力をもらったと言ってくれます。私は非常にやっかいな疾患を抱えていますが、私だけに起きていることではありません。だからこそ、たとえ難しい境遇でも、楽しく暮らしていい人生を送ることができるということを示したいのです。

30代を迎えた今、昔よりずっと自分に自信がもてるようになりました。自分が何者であるかを理解していますし、愛しています。 まだ独身だけれど、自分自身を受け入れられるようになった今、運命の人がいつ現れたとしても心の準備はできていますよ。

 
MYRA ALI

ーー 自分の体にもっとも自信を感じるのはどんな時?

ハリウッド俳優などへのインタビューを、華麗にこなしている時。

そういう時は、ただメイクをばっちりと決めているだけではなく、自分が好きなことをしていますから。私の見た目とは関係なく仕事の内容が称賛されたとき、自分に一番自信がもてるんです。

ーー 自分を愛するのに苦労している人たちに向けて、どのようなアドバイスを贈りますか?

自分の体に対する本当の自信は、美は内側から生まれるものだと知ることにより得られます。“欠点”を受け入れ、それらを抱えていることも一種の美しさであると気づくことが大切です。

その欠点こそ、私たちのこれまでの人生の物語や困難を生き抜いてきたことの証。そしてそれこそが、誰もが追い求めている永遠に続く美しさなのです。

ーー 障がい者や自分の体に自信を持つことに関して、社会はどう変わっていけると考えますか?

女性で障がいのある人たちは、社会によって自身を美しいと感じる権利はないかのような気持ちにさせられることがあります。でも、私はすべての女性に自分のありのままの姿に喜びを見いだす権利があると思うんです。

女性障がい者のメディア露出の拡大は、女性たちの自信を高めることにつながるでしょう。社会によって決められた“伝統的なの美の基準”を、見直す必要があるのです。

自分自身がほかの女性たちと同じように、魅力的な存在だと認識することはとても重要です。障がいのある当事者たちを、もっと話の仲間に入れていきましょう。

 
MYRA ALI

※本記事は、Hearst Magazinesが所有するメディアの記事を翻訳したものです。元記事に関連する文化的背景や文脈を踏まえたうえで、補足を含む編集や構成の変更等を行う場合があります。
Translation: 平田三桜(Office Miyazaki Inc.)
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