【私の生き方】性犯罪から子どもたちを守る!

PTAとPTSDを経て…。フランスで性犯罪の法律を改正するために闘う女性の道のり

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自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

ジャーナリスト コヒヤマミエさん(45)

【私の生き方】性犯罪から子どもを守る!

フランス在住、日本人の父とフランス人の母の間に育ったコヒヤマ ミエさんは、5歳の頃に親戚から性的暴行を受けた。その後、封印された悪夢が扉を開いたのは事件から32年が経ってから。それからはPTSD(心的外傷後ストレス)の症状にも苦しんだ。警察や裁判所に告訴をしたものの、時効が過ぎていたため工程を進めることができない…。それ以降、子どもたちを性犯罪から守るために法律の改正を求めて闘っている。

同じ苦しみを抱える被害者たちに勇気を与え続ける、彼女の強さに迫りました。

―コヒヤマさんは5歳の頃に性犯罪の被害にあい、30年以上事件についての記憶をなくしていました。このような症状は、よく起こる現象でしょうか?

子ども時代に性犯罪の被害にあった38%の女性が、記憶をなくしてしまう

特に小さな子どもが性的暴行をうけた場合に多くみられます。子どもにとって辛すぎる出来事を、自動的に脳がトラウマを深いところに隠そうとする。その後大人になって、身近な人の死など、なにか精神的なショックがあったことをきっかけに記憶を急に思い出すことがあります。この「記憶を忘れさせる」現象をPTAPost Traumatic Amnesia)と呼び、その後に起こりうる、強い恐怖やトラウマの追体験などの精神障害をPTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼びます。このPTSDは強い精神的衝撃を受けたことが原因で起こる症状で、紛争地からの帰還兵にも多く見られます。

また、1996年のアメリカの精神科医Daniel Schacterによる研究では、子ども時代に性犯罪の被害にあった38%の女性がPTAをおこしたというデータがあります。

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―性的暴行の記憶がなかった10代、20代は、特に違和感なく過ごしていたのでしょうか?

女性としての幸福を味わうことができなかった10代、20代

正直、その頃「女性としての幸せ」を満喫することはありませんでした。10代、20代の頃は彼氏ができても、なぜか短期間の関係で終わってしまい…男性と本物の愛情を築くことができなかった。そして、母親になる機会を得ることもありませんでした。

当時を思い返すと、トラウマを思い起こさせるようなことには、自分から自然に避けていましたね。

―コヒヤマさん自身が5歳の頃、被害にあった性的暴行について教えてください。

レイプをした犯人は親戚。妻子もいる男性

1977年の夏のこと。妹が産まれた直後、5歳の私は1人で大叔母の家に預けられていました。そこに、親戚の男性が1人で泊まりに来て。

彼は到着するなり、自転車の乗り方を教えてあげると言いました。とても粗野な態度で、早く自転車の乗り方を覚えてもらいたいようでした。そして昼食の前に、私を乱暴に家の近くにある小道に連れ出し、そこでレイプをしました。そして、その日の午後にまた自転車の乗り方を教えると言って私を連れ出し、2回目のレイプを実行。その後も、大叔母のワイン貯蔵庫で3度目の暴行を受け…。

ちなみに、この男性には妻子がいました。

―そのあと、32年を経て、そのときの記憶が蘇ったそうですね…。

突然、ビデオを見ているかのように32年前の記憶が蘇った

ある日、新しく職場に来た女性の同僚に出会ったとき、突然感情のショックに襲われたんです。5歳の頃に性的暴行を受けたときの記憶が、まるで映像をみているように鮮明に現れました。

その時は、なぜ30年以上前の出来事を急に思い出したのか理解ができず、催眠療法(リラックスした状態に誘導し、潜在意識に働きかけるカウンセリング)を受けに行きました。すると、先生が治療を始めて3分もたたないうちに、5歳の頃の事件の記憶が意識の中で爆発したように、すべての場面や細部まで現れました。その瞬間、本当にショックで…犯人の名前を大声で叫んでいました。

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あとからこの同僚と友達になってから分かったことなのですが、彼女も6歳の頃、心に深いトラウマを負ったそうです。脳が鏡のように反応し、感情が爆発したのかもしれません。

―性的暴行の記憶が蘇ったあとに、PTSD(心的外傷後ストレス)の深刻な症状に苦しまれたのですね…その時の様子を教えていただけますか?

自殺を考えることも…。恐怖や苦しみは"今"起こっている。だからこそPTAを理解し、時効を伸ばすことが必要

5歳の頃に受けたこのレイプの感情や記憶が鮮明に頭に現れ、追体験しているような感覚に襲われました。そのほかも罪悪感、恥、不安、悪夢、強い恐怖や不安感、激しい怒り、社会的な孤独、男性への恐怖…そしてこれらの強い感情から自分を守るためにアルコールを大量摂取したり、自殺を考えたりすることもありました。

その当時は、本格的に精神療法をうける必要があると気付かず、2年間仕事を続けました。しかし、性的暴行の記憶が頭から離れず、感情がコントロールできなくなり…。警察に告訴をしたときには、犯人が逆上して私を殺しに来るのではないかという、強い恐怖感に襲われるなど、本当に精神状態が悪化していました。

そこで、会社の上司に相談し、休養をとって精神療法を受けるためクリニックに入院することに。先生が私の精神のバランスを取り戻す手伝いをしてくれたおかげで、3年後にはだいぶ精神状態がよくなり、また働き始めることができました。

トラウマの記憶が長い月日を経て蘇るとき、まるで今起きていることかのように鮮明に思い出します。その感覚、感情、すべてがリアルなんです。

この恐怖や苦しみは"今"起こっている。だからこそ、時効を伸ばすことが必要です。被害者が受けた人生への影響は大きく、時効はありません。今のフランスでは未成年への性犯罪における時効は、被害者が38歳になるまでです。

もしこの時効を廃止することができたら、現在、そして未来に起こりうる性犯罪の被害者を守ることができるんです。

―精神療法を受けながら、裁判で闘われたそうです。周囲の反応はどうでしたか?

裁判では勝てなかったけど、世間のサポートを勝ち取ることができた

警察や裁判署に訴え、警察も犯人に取り調べを行ったのですが、時効が過ぎていたため工程を進めることができませんでした。

そんな中、2013年になってやっと最高裁判所で私の事件が審理されました。

その時は各メディアに取り上げられたのですが、特にラジオでは「私も子どもの頃レイプされ、同じように苦しんでいる」というメッセージが多数届き、多くの人々が、私の闘いを応援してくれました。それに、私自身、多数の被害者の声や想いを届ける大きな役目があると感じていました。i

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結果、裁判では勝てませんでしたが、PTAの認識をフランス中に広めることができ、世間のサポートを勝ち取ることができたと思っています。

また、これらの結果を経て、法律そのものを変える必要性があると思い、闘いの場を政治へと移しました。

―自分自身の苦しみと葛藤しながらも、同じ問題を抱える多くの人の力になるために性犯罪の法律の改正に力を注がれていますね。長い闘いを通じ、ご自身の中で起こった変化を教えてください。

トラウマとの葛藤は私を成長させ、自分がどういう人間かということを深く理解させてくれました。困難な経験をしてきましたが、人の心や感情をより理解できるようになりました。今、もし友人が辛い出来事に直面していたら、どうやって話を聞けばいいか、何を話したらいいか、どうすることが本当に彼女の心の支えになるのかということが、前よりもわかるようになったと思います。

今はもう、ほとんどネガティブな感情におびえることもなくなりました。そして、精神科の治療を受けたおかげで、男性と関係を築くことにも前向きになりました。少しずつですが、女性としての人生を楽しみはじめ、積み上げているところです。

【私の生き方】性犯罪から子どもを守る!

―今後の展望を聞かせてください。

誰かの助けになることが、今の私の人生にとっての願望

児童の性犯罪の時効が廃止されるまで、闘い続けます。今年の秋、この事件に関するドキュメンタリーを撮影する予定ですが、それ以降は、私生活も充実させたいと考えています。そして、私はジャーナリストとしての仕事が大好き。PTSDに苦しむジャーナリストをサポートするアソシエーションをつくる企画も立てています。誰かの助けになることは、私の今の人生において、とても強い願いです。

―同じ経験にあった人たちへ、メッセージをお願いします。

日本で性的暴行にあった被害者たちが、社会や周囲の目により、声を上げにくいという環境をとても悲しく思います。ただ、私はサポートしている、ということを言いたいし、被害にあった方の苦しみに寄り添っています。タブーの要素が強い話題で、それを壊すことは簡単ではないかもしれません。でも、希望を失わないでください。日本でもこの問題に関して少しずつ、変わっていくはずです。日本でSNSに多くの被害者が無名で苦しみについて証言している、という記事を読みました。書きだすことは、痛みを心から出すのにとても効果のある方法です。みなさん、頑張ってください!


性犯罪と闘う団体「Le Ruban Vert Pomme」のメンバーの一員として街角でキャンペーンを行い、自身の体験談「Le petit vélo blancCalmann Levy)」を執筆するなど、精力的に活動を続けるコヒヤマさん。辛さを痛いほど味わったから、人の助けになりたい…。この想いこそが、彼女が社会を変えていくための原動力かもしれません。

【コヒヤマさんから学んだ強く生きる秘訣】

・心が痛い時は、精神科医の力を借りることで、状況が改善する

・目標を達成するために、折れずにあらゆる角度から活動し続ける

・辛い状況は、将来の自分の強さや人間としての成長につながる

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