自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

Woman&Crowd 代表取締役社長 石田裕子さん

今ではサイバーエージェントの関連会社「Woman&Crowd」の代表取締役社長を務める石田裕子さん。サイバーエージェント時代は、女性初のインターネット広告事業本部営業統括も務めたという経歴の持ち主。さぞ、明確なキャリアプランを描いていたのかと思いきや、就職活動でエントリーした会社は300社以上! 就活をしながら自分の行きたい会社を見つけようと思っていたという彼女が、受ける予定がなかったという、サイバーエージェントへ入社したことで得られた人生の楽しみ方は?

2004年の入社当時、まだ成長過程にあった「サイバーエージェント」への入社を後押しした、決め手は何ですか?

入社試験を受ける予定もなかったのに、入社1~2年目の若手社員が活躍している姿に感銘した"

いくら就職活動が大変だといっても、私のように300社以上エントリーしたという人は聞いたことはありません。友達からも「おかしい!」と言われていました(笑)。今後の自分の人生を見据えて就活をしていたわけではなく、やりたいことを明確に持っていたわけでもなかったので、就活しながら行きたい会社を見つけようと思っていたのです。だからか、気づけば300社以上にエントリーしていたという

当時の「サイバーエージェント」は、規模も小さかったですし、もともと名前も知らなかったので、正直受ける予定はありませんでした。ですが、会社説明会の時に、入社1、2年目の若手社員も大きなプロジェクトを任され、自分の仕事についてイキイキと語っている姿を目の当たりして、大手に就職することがゴールになりがちな就活の違った側面に触れた気がしました。その時感じた、自分の直感を信じたところもありますが、最終的には、入社後、どう働くかに焦点を当てて決めました。

入社後の具体的なプランはありましたか?

実はなかったんです(笑)。1年後、3年後のキャリアプランを立てることは皆無でした。なぜならば、IT業界は変化が速く、予想もつかないことが日常的に起こります。その中で、キャリアプランを立てるのは難しく、例えプランを立てたとしても、その通りにいくことはほぼありません。その頃は、足元の今月の目標をどう達成するかということに集中していたように思います。

当時は、広告営業をしていたのですが、今ほどインターネットが普及していなかったので、まず、インターネット広告について説明をする必要がありました。まさに、ゼロからイチを作り出す作業。体力的にとてもハードでしたし、大変だったといえば、大変だったのかもしれませんが、ベースがないところを自分たちで築き上げている実感がありましたので、大変さよりも楽しさが勝っていました。

もしかしたら"どうすれば楽しく仕事ができるか"という思考回路になっていたのかもしれません。大変なことをいかに大変じゃないことにするか、楽しんでいるとまではいかなくても、ツラいと思わないようにするなど、ちょっとした心の持ち方で、ポジティブに変換できることを、社会人になってから気づけたのだと思います。自分のマインド次第で、物事って違った印象になるんですよね。

―会社が著しく成長していく過程を、経験していますが、どのようなことが得られたと感じていますか?

自分たちで変えていこうという気持ちが、どんなことにも立ち向かえる原動力だったのかも"

自分たちでゼロから構築していたので、トライ&エラーを繰り返していました。大きな損害を出してしまった失敗もありますし、大小問わずトラブルは常に起きていました。今でこそ、笑い話として話すことができますが、当時は必死! 目まぐるしく変化していく中でも、すぐに思考も気持ちも切り替えて、損害を出した分、どうやって返していくかと、前向きに考えていたように思います。そんな風に考えられていたのは、チームメンバー全員が同じ方向を向いて仕事をしていたからかな。

会社の飲み会といえば、日頃の愚痴を言って、ストレスの発散だけで終わることもあると思うのですが、私たちは「それを改善するためにどうする?」と、前向きな話し合いを常にしていました。「自分たちで仕組みから変えていこう」と、まさにベンチャー企業らしいですよね。

全員が若いうちからさまざまなことを任されていたので、自分たちでできないことは、「上司にまかせればいいじゃん」とはならなかったのです。いつでも「自分たちでやる」と思っていることは、キャリアを重ねていくうえで鍵になっているように思います。

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Noriko Yoneyama

―切磋琢磨していく中で、プレイヤーとして、マネージャーとしてMVPを受賞し、さらには、女性初の局長、営業統括に就任しますが、その時はどのような心境でしたか?

賞をいただくことは単純に嬉しかったです。ただ、役職がついた時は、実力不足だと感じました"

賞がほしいから営業を頑張っていたわけではありませんが、はじめて受賞した時はやっぱり嬉しかったです。それと当時に、おもしろいぐらいに成果を得られていた時でもあったので、自己中心的なスタイルで仕事をしていることにも気づかされました。そのことは、お客様を自分の目標を達成するためのツールとしてとらえているような発言をした私を見て、上司が指摘してくれたことで気がついたのですが、「こんな営業スタイルではダメだ」と思い、お客様と一緒に考えられるパートナーになろうという気持ちで働き出し、賞を受賞することや、周りからの賞賛、営業成績に目を向けることを止めました。もし、その時、上司に指摘されなかったら、「私に売れないものはない!」といった感じの、とんでもない天狗な営業マンになっていたと思います(笑)。

上司の言うことは絶対だという風土ではありませんし、逆に、上司とケンカをしてしまうほど、言いたいことを言えるような、上司と部下の風通しのいい関係にも感謝しています。

若いうちからチャンスをもらえるのがこの会社のいいところでもありますが、役職がついたときは率直に、まだまだ実力不足なのにと思いました。会社的にも、「まだ早いと思っているけど、期待値も含めて」という意味でもあったと思うのですが、喜びや嬉しさよりも、不安や焦りのほうが圧倒的に大きかったですね。

そして、今でこそ女性がさまざまシーンで活躍していますが、当時はまだまだで、いわゆる事例作りのために選ばれたという側面もあったので、その部分では悔しさがありました。でも、結果を出さないと、いろんな声はなくならないので、早く結果を出したい思いも強かったです。

会社にいると、組織変革は避けては通れないので、自分自身に起きてしまったら、嫌な気持ちになることも、プレッシャーを感じることもあると思います。でも、なにごともやってみないとわからないので、逃げずに向き合うことは大切だと思います。

実際に、私も、管理職を経験して、想像以上におもしろいと感じました。

-立ち向かえる気持ちを作るコツはありますか?

自分の目の前にあることに打ち込むこと、そして、1日の終りにひとり反省会をすること"

どんな時でも、いろんなことを言ってくる人はいると思うので、目の前にあることに集中して、周りの声は聞こえないようにする。そして、寝る前にひとり反省会をするのもおすすめです。

「もっとこう言えばよかった」「あの時、こう対処すればよかった」と、ただただ猛省するのです。それと同時に、「もっとこうしよう」と、改善策を考えることをセットで行うのです。「もっとこうしよう」と思った事柄は忘れないようにメモすることもあります。

今日の気持ちを明日に持ち越さないための儀式が、ひとり反省会です。ひとり反省会後は、しっかり寝て、すっかり忘れる! 寝て忘れることも必要です。

あとは、結婚して気がついたことがあります。

結婚前は、オンとオフが切り替えられなくて悩んでいた時期もあるのですが、今は、意識的にあえてオンとオフを切り替えてはいません。時間が有限であることを認識するようになったので、自然とメリハリのある時間の使い方ができるようになったからだと思います。子育てをしているとより感じるのですが、1日24時間という限られた中で、やることがたくさんある状態だと、時間をいかに有効的に使うかを考えるようになります。

例えば、次のアポイントまでの5分間を、コーヒーを飲んで雑談しながら過ごすのか、もしくは、資料作りや顧客対応の時間にあてるのかで、時間の使い方は変わりますよね。つまりは、逆算をして、1日の中でいつまでに何をするかを考えることが決め手になります。もちろん、ゆとりの中で生まれることもありますので、時間の使い方を意識して、1つひとつの業務に明確なデッドラインを設けることが大切です。


プライベートでは2児の母。そして、「女性の"はたらく"を応援する」をコンセプトにしたWoman&Crowdの代表取締役社長として、忙しい日々を送る石田さん。「ますます女性が活躍する社会になっていくと思うので、キャリアと結婚や出産の狭間で悩んでいる方もいらっしゃると思います。でも、考えを巡らせて不安を募らせるよりも、まずやってみてダメなら違うやり方を考える。そうすることで自分の選択や手段が増えていき、これからにつながると思います」と。自分らしい仕事スタイル、ライフスタイルを見つけた石田さんをお手本に、キャリアもプライベートも、自分らしいスタイルを築いていこう。

【石田さんから学んだ仕事をより充実させるためのヒント】

・就職活動をしながら、やりたいことを決めるのもアリ

・どんなことでも、自分でやることを前提として取り組む

・時間は有限であることを認識し、メリハリある使い方を意識する

・寝る前にひとり反省会をして、今日の気持ちを明日に持ち越さない