日本で長年生活していた私の目に、ニューヨーカーの姿は、なぜだか眩しく映った。Tシャツにジーンズでもクールだし、何をしていてもなんだかカッコイイ。ニューヨークに住んで気が付いたことのひとつ、彼らは「自分の魅せ方」を知っているということ。そこがカッコ良さの秘訣なのだと――。そんなニューヨーカーの若者たちに囲まれて7年以上ニューヨークに住む日本人2人はどうやってこの街で生き抜いてきたのかを聞いてみた。

2人は、ファッション業界で活躍する27歳。1人はロン毛をなびかせた、フリーランスのフォトグラファー兼モデル。最近はwebにも興味がありディレクターとして活躍し始めている。もう1人は坊主頭。SOHOにあるラグジュアリーショップでマネージャーとして働く。働き方としては対照的に聞こえるフリーランスと会社員。しかし2人とも同じ街でサバイブする日本人、この街ならではの「自分の魅せ方」を習得してきたという。

「会社の仕事と自分のプロジェクトをどちらも両立させて、自分なりに生きていく」by坊主

まず、坊主は会社員。それだけ聞くと新鮮さはないかもしれないが、ニューヨークの会社員は日本とは少し違う。まず、定時を迎えると即効帰宅することが当然で、多くの人はその後、会社の仕事とは別の自分の仕事をする(日本でいうといわゆる副業)。坊主の場合はそれがライターやフォトグラファーとしての仕事である。

「就業時刻間際に頼み事されると、必ず『残業代つくの?』って誰もが聞くくらい個人が尊重されていて、そこはみんなかなりシビア。そうやって会社の仕事と自分のプロジェクトをどちらも進めて、自分の暮らしを自分の裁量で作っていく。僕もチームワークの会社の仕事を通して自分が何者で何ができるのか常に模索して、それが個人のプロジェクトに反映されている。どちらも大切な仕事だから、どう両立させるか常に考えています」 "会社員" はあくまで側面。そんなアグレッシブなスタイルがニューヨークらしい。

「趣味がどうやったら仕事に繋がるか。人に何か言われても、とりあえずやってみてる」byロン毛

一方でフリーランスのロン毛の経験談

「毎日趣味をどう仕事に繋げるか、いつも考えている。それが、チャンスが巡ってきたときにいつでも乗っかるための蓄えになってる。だから『とりあえずやってみよう』っていう、軽快さが自分のスタイルになったんだ」。

新しい刺激が溢れるこの街だからこそ、趣味と関わる機会も時間も多い。例えば、喫煙家の彼はニューヨークではポピュラーな電子タバコを日本に輸出するビジネスを計画していた。しかし、規制が厳しくウェブショップの立ち上げをしたところで求めているものとのギャップを感じてやめたという。

「やってダメだったら、きっと今じゃないんだなって感じる。だけど、とりあえず可能性を信じてやってみることが大事。貯金もない、若い世代のニューヨーカーが蓄えているものは "頭の中のアイディア" 。すぐに役立つアイディアじゃなくてもよくて、いつか仕事に役立つって信じられるように、いつも頭をフル回転させて考えておくんだ。情報が溢れていて、インターネットで何でも知ることのできる社会、自分の取捨選択次第で、きっとどんなことでも実現できるって思ってる。小さなアイディアがボツになったとしても、代わりにまた生み出せば良い。そうやって長い目で見れば、失敗した事実をすぐに受け入れて軌道を修正していけるしね」いかにも、デジタルネイティブ世代ならではの考え方だ。

すると、坊主が「基本的にみんな2枚目、3枚目の名刺持ってるしね」と挟む。若いニューヨーカーは、できる仕事別にいくらでも名刺を作り、アプローチを惜しまない。「とは言え、僕はアイディアがそんなに出て来ないタイプだから、コツコツ本を読んだり書いたりしてみてる」と、ロン毛とは逆で、じっくり向き合ってクオリティを追求していくタイプだという。アイディアを強化する重要な立ち位置を担うようだ。

アイディアマンのロン毛も、周りを見て自分の役割を見極めながら担っている坊主も、お互い真逆なタイプでありながら、ニューヨークの街ですりあわせるように「自分の魅せ方」つまり「スタイル」を探してきた。そういう自分の軸がある働き方があることで、何かにがんじ絡めになりがちな毎日をほどいて、方向性を明確でクリアにし、何にも捉われない毎日を作って行く。

最先端の街ニューヨークでの彼らの働き方は、何にも捉われない「社会」を作る兆しにもなり得るだろう。

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