自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

リポーター/鈴木 祐子さん

「楽しいことが好き!」を大切にして、人生の幅を広げる

ロンドンを拠点にジャーナリスト、リポーター、ディレクター、コーディネーター、イベントのMCなどマルチに活躍される鈴木祐子さん。京都大学卒業後、ロンドンへと渡るという決断をし、立派にキャリアを築く…。自分らしいスタイルを見出し、ポジティブに働く姿が印象的だけれど、海外でキャリアを築くなかで数々の試練や葛藤を乗り越えてきたそう。そんな鈴木さんに、今までの道のりを伺いました!

―京都大学に通われていたそうですが卒業後、ロンドンに渡ろうと思ったきっかけは?

大学院の進学でロンドンへ行きました。私にとって、ロンドンという街はヨーロッパの縮小図というイメージがあったんです。イタリア人、フランス人、ドイツ人…などいろんな国の人が集まっていて。その多国籍の友だちと食卓を囲み、イベントなどに一緒に行って、さらに新しい国際的な人と出会っていくというライフスタイルが自分にあっていたんだと思います。この環境に身を置くと、日本で就職活動をして遅くまで働く、というのは私の求めているスタイルとは違うかなと感じていました。

大学院卒業後の就職先は、トヨタのF1チームのスポンサーエージェント。F1のチームを運営する会社やスポンサーをしている会社の社長などをご案内するホスピタリティの仕事をし、世界中各地のグランプリを回りました。そのほかにも、20代前半は「面白そうなことは、なんでもやります!」というスタンスでモデルやミュージックビデオの出演など、いろんなことに挑戦していました。当時は世界を見たり、様々な経験をするということを何より大切にしていたんです。

でも、そんな時にF1の仕事である国の大使と話をする機会があり、「ちゃんと自分自身が打ち込めるキャリアを築かないと、将来困ってしまうよ」と言われたんです。他にも「このままじゃいけないよ」と声をかけてくれる人が多く、 "キャリア"について真剣に考え始めました。それがきっかけで「特別なスキルを活かせるキャリアを築こう」と思い、以前から興味のあったメディアでの仕事を始めることにしたんです。

―その後、イギリスのメディアの中でキャリアを築くのは大変でしたか?

今の自分にはネイティブの人と肩を並べてメディアで働く力はない、ということをはっきりと見せつけられたというのも正直なところ

あるコンサートに行った時にBBC(英国放送協会)の子会社であるBBCワールドワイドの社長さんがいらしていたので、話しかけてメディアに関心があることを伝えたんです。すると、BBCワールドワイドでインターンを経験させてくれることになって!

撮影所での車磨きから、取材先のリサーチまで幅広く経験し、メディアの仕事がどういうものかというのを見させていただきました。でも同時に、今の自分にはネイティブの人と肩を並べてメディアで働く力はない、ということをはっきりと見せつけられたというのも正直なところです。

―海外でキャリアを築くことの難しさを感じたタイミングなのですね。

そうですね。そのときが、キャリアを築くうえで1番悩みましたね。国際的なメディアで働くということを目標にしていたけれどネイティブでないことは不利、日本で就職をしなかったので日系の放送局で今から働くのも不利だろう、と。

そんなとき、ロンドンとパリにオフィスを置くNHKの子会社で働くことになりました。それでも、自分がやっていることに誇りがもてなかったんです。国際的なメディアで働くことができなかった、という思いがどこかにあって。

でも、周囲が「凄い仕事をしてるね!」と言ってくれ始めたときに、ふと「私って、なんて恵まれた仕事をしているんだろう」ということに気付き始めました。実際、世界のあちこちに取材にいって、様々な人に話を聞かせてもらっているのですが「確かに、私は海外をベースに日本のメディアと仕事をしているからこそ、今こんなに素敵なチャンスがたくさんあるんだ」と。

そして、自分がしていることが「日本人だからこそできる仕事」と思えるまでにも時間を要しました。今、そう思える1つの理由は「日本人だからこその目線」ですね。イギリス人のジャーナリストとは違う、自分にしか見れない視点があるのではと思っています。

主流にはまらないことをコンプレックスに思っていたんですけど、それは日本を離れた時点で自ら選んだことだから、もうやめることにしたんです。

こうして、私にしか見られない目線で番組や記事を制作しようというスタンスではじめたことで、もっと仕事にやりがいを感るようになりました。

―仕事をしているときに映し出されるイキイキとした表情が印象的です。どういうときに仕事のやりがいを感じますか?

誰かと「心が繋がった!」と思った瞬間にいい仕事ができる

仕事をしてる時は、本当にとっても楽しいです! 取材相手はだいたいが海外の人なので「日本の放送局から来ました」というと、外国人である私たちにだからこそ見せてくれる反応がある。そういうときにはすごく面白いと思うし、ネイティブのイギリス人ではなく私が来てよかったかなと感じます。

また、私が前に出ることで輝く仕事とは思っていなくて、誰かと「心が繋がった!」と思った瞬間にいい番組がつくれると思うんです。テレビだと私のことを信用してもらえないと良い表情が撮れないので、私のほうも「心を開いて話してくれるように」っていつも準備をしています。それが「できた!」と思う時に、1番楽しそうな顔をして仕事をしているんだと思います。

―印象に残ってる仕事はありますか?

「楽しいことが好き!」を大切にして、人生の幅を広げる

2015年に中東のカタールで行われた「ドーハ障害者陸上世界選手権」と、イギリスのグラスゴーで行われた「障害者競泳 世界選手権」の取材ですね。インタビュー、動画と写真撮影、ブログの記事執筆まで幅広く担当しました。やりはじめると楽しくて、できる限り多くの選手にインタビューをさせてもらい、体力の限界まで取材をしました! これから盛り上がっていく、というスポーツ大会を取材するのが好きで、そこで良いストーリーが見つかると「やりがいのある仕事ができた!」と感じます。

それに、スポーツの世界って「世界一を目指す!」という意気込みの人が多くって。そういった素敵な人達のお話を聞かせてもらうことで、勇気をもらえるんです。「自分も、それぐらいこだわりを持って仕事をしたい」って思わせてくれます。結局、私は "人"が好きなんだと思います。特に、スポーツをしている人には刺激を受けます。「くじけるようなことがあっても、負けずに前に進む」という強さがイキイキと取材中に伝わってきて、自分も同じような状況になった時に実践しよう!と感じさせられんです。

それに、スポーツを見ていると自分もやってみたくなるんですけど、何年か前に「ツール・ド・フランス」の盛り上げレポートで、ロードバイクで100キロ走りました!

―とてもチャレンジ精神旺盛でポジティブな鈴木さんですが、仕事で落ち込むこともありますか?

「傷つきやすいところも、人と心で繋がって良い表情を引き出すことができるコツ」なのかもと思い始めたら、楽になった

私、結構繊細で取材相手に邪険に扱われたりするとすごく傷ついてました。その度に「この前冷たくされたから取材にいくのイヤだ」と思ったり、知らない人に声をかけるのが怖くなってしまうこともあって。でもある時、友人が「祐子に話をしてくれるのは、祐子が繊細な人間だからだよ」と言ってくれて。それがきっかけで「傷つきやすいところも、人と心で繋がって良い表情を引き出すことができるコツ」なのかもと思い始めたら、強い人にならなくてもいいんだ、と楽になりました。

―仕事を通じて学んだことはありますか?

「楽しいことが好き!」を大切にして、人生の幅を広げる

贅沢な仕事をしているということに気付いたんです

私のしていることは、人生を楽しんでいるだけでそれが仕事になってしまうことが多い、と思っています。特に1年のうち3分の1は出張なんですが、自分の家を離れて仕事の人と過ごしていると、仕事が楽しい生活の一部のようになっていて。どれだけお金が儲かる仕事があったとしても、今の仕事と絶対に交換しないだろうなと思った時に「生きていること自体を楽しんでいることが仕事だ」という気持ちになり、心から感謝が沸いてきました。だからワクワクすること、取材を通して心で繋がることのできた人への感謝の気持ち、そういうもののために仕事をする。そんなスタンスでいかないと、いつか人生自体が楽しくなくってしまうんだろうな、と感じています。

―過去を振り返って、していてよかったなと思うことは?

バラエティが人生にないと、退屈してしまう!

目標に向け、アフターファイブの学校に通ってスキルを磨いたことです。実は、語学はもともと苦手だったんです。だからこそ、社会人になってから英語の発音に取り組んだ学校に週1回、約10ヶ月間通いました。イギリス英語に存在する音の全種類を脳で理解し、それを新しい言葉に出会ったときに、どの音に当てはまるかということを考えながら話す。しばらくは意識しすぎて不自然な発音をしてるって言われていましたけど(笑)。イベントで英語のMCをするお仕事などにも役立ったスキルかなと思います。

そして、映像学校などに通ったからこそ、今自信をもってテレビの仕事ができているところはありますね。

あとは、趣味でアルゼンチンタンゴやサルサ、バレエをしているのですが、出張などから帰ってきたときの居場所ができてよかったと思います。その他、ピアノ、水泳、テニスなどもしています。バラエティが人生にないと、退屈してしまうので!

―海外で働くことに興味のある読者に、メッセージをお願いします!

「これをやりたい」というものに固執しないのもありかな、と思います。海外に行ったからといって、必ずしも思い描いたような生活があるわけじゃありません。だけど、そのなかで出会うチャンスに身を任せていくのもなかなか面白いよ、と。1番の目標と直結していなくても、小さなことからはじめてみればいいのでは、と思います。たとえばサッカーの試合を見るためにイギリスに行ってみるとか。そこから、思い描く方向に向かって広がっていくものがあると思います!


自身のキャリアに関して「目指してやっていたというわけじゃなく、やっているうちにそうなった」という鈴木さん。「楽しいことが好き」という純粋な心が、いつもワクワクとしながらバラエティ豊かな人生を送られている秘訣では?と感じました。

【鈴木さんから学んだ、自分らしいスタイルの働き方を見つけるヒント】

・自分の中の「ワクワクする気持ち」を大切にする

・繊細で傷つきやすくても、大丈夫!

・「主流にはまろう」とする考えを諦めると、道が広がる

・「自分の持っているスキルを活かす」という考えで、幅広い仕事に挑戦する

・楽しそう!と思ったことはしてみる

・仕事相手との「心の繋がり」を大切にする

ウェブサイト:YUKO SUZUKI