ホワイトハウスが世界で最も有名な建物のひとつであることは間違いない。近年ではバラク・オバマ大統領&ミシェル夫人、ドナルド・トランプ大統領&メラニア夫人が居住し、現在は、第46代アメリカ大統領に就任したばかりのジョー・バイデン&ジル夫人が住んでいるが、当然それだけでは語りきれない。
1800年の竣工以来、現職の大統領が暮らし、働いてきた歴史的なランドマークであるのはもちろん、その背景にはたくさんの興味深い逸話があるホワイトハウス。ここにはさまざまなサービス、ショップ、幽霊(!)などが存在し、焼き討ちにあって全焼した後に再建されたという過去もある。
物議を醸した4年間に及ぶトランプ政権が終焉を迎え、新政権が発足したことを記念して、ホワイトハウスにまつわる歴史とトリビアをお届け。
Photos: Getty Images Translation: Masayo Fukaya From COSMOPOLITAN UK
1. もともとは別の名前だった
1901年以前、ホワイトハウスは「エグゼクティブ・マンション」と呼ばれていた。第26代大統領のセオドア・ルーズベルトが、州知事たちもエグゼクティブ・マンションに住んでいると指摘し、より特別な呼び名が必要と判断したことで名前が変更に。
建物の外観が白いことから民衆からはすでに「ホワイトハウス」と呼ばれていたが、公式には使われていなかった。
2. 新大統領を迎えるまでにスタッフが与えられる時間は、たった5時間
オバマ大統領のお気に入りデザイナーであるマイケル・S・スミスは、自著『Designing History: The Extraordinary Art & Style of the Obama White House(原題)』のなかで、引越しの日はとてつもなく多忙であることを記している。
マイケルとスタッフは、大統領就任式の当日の午前11時までホワイトハウスに入ることを許されず、午後3時30分までにすべてを整えなければならなかったそう。
3. とにかく広い!
報道によると、ホワイトハウスは6階建てで、132の部屋と、35の洗面所、28の暖炉、8つの階段、そして3基のエレベーターなどがあるとか。
4. 大統領の食費はすべて自費
食事は“大統領であること”の一部のように思えるが、残念ながらそうではない。年収は6桁で家賃を払う必要もないが、いまだに借金を抱えている歴代大統領もいる(ビル・クリントンの負債総額は228万~1060万ドルと言われている)。
5. ジャクリーン・ケネディは修復に2年を費やした
1961年に引越しをした後、ジョン・F・ケネディ大統領夫人のジャッキーことジャクリーンは、大規模な修復プロジェクトに着手。彼女はカクテルパーティの導入や、公演用のステージの設置、アンティーク家具の導入などを行った。
彼女は当時「ホワイトハウスにあるものは、すべてここに存在する理由があるはずです。単に再装飾するだけでは冒涜になってしまう。ホワイトハウスは修復されなければならないのであって、それは装飾とは何の関係もありません。これは学術的な問題なのです」とコメント。
その後ジャッキーはホワイトハウス内を案内するTV番組に出演し、8000万人もの視聴者を集め、“文化の鬼才”として名を上げた。
6. 一部は奴隷によって建てられた
この事実は、ミシェル・オバマがホワイトハウスに住んでいる間に、彼女を不快にさせたという。彼女は2016年の民主党全国大会で熱のこもった演説を行い、こう語っている。
「(奴隷制度の歴史は)この国の物語であり、今夜このステージに私が立つまでの物語であり、何世代にもわたる人々の物語なのです。彼らは自由を奪われた苦しみや、奴隷であることの不名誉、差別を感じながらも努力し、希望を持ち、なすべきことをしてきたのです」
「私は毎朝、黒人奴隷たちによって建てられた家で目を覚まします。そして、私の娘たち――2人の美しい知的な黒人の若い女性――が、ホワイトハウスの芝生で犬と遊ぶ姿を目にします」
7. 計10人が亡くなっている
10人のなかには、2人の大統領、3人のファーストレディ、1862年、腸チフスのため11歳で亡くなったウィリー・リンカーン(エイブラハム・リンカーンの息子・写真)が含まれる。
直近では、第33代大統領ハリー・S・トルーマンの妻ベスの母マーガレット・ウォーレスが1952年12月5日に亡くなっている。
8. 1814年にイギリス軍が焼き討ちした
イギリス軍による「ワシントン焼き討ち」と呼ばれる侵攻(アッパーカナダのポートドーバーを襲撃したアメリカ軍への報復)の最中に、ホワイトハウスは焼け落ちたが、その翌日に激しい嵐が訪れ火災は鎮火。
かつての栄光を取り戻すまでにはそれほど時間はかからず、3年で修復が完了した。
9. ボウリング場まである
132室もあるのだから、ボウリング場があってもおかしくない!?このほかにもジムや映画館、(ビル・クリントン大統領がサックスを練習するため、妻ヒラリーが作った)音楽室、花屋、歯科医院、チョコレートショップ、そしてその名のとおり、たくさんの豪華な陶器や花瓶などが飾られた「チャイナルーム」という部屋まである。
写真は1948年、作られたばかりのボウリング場でボウリングを楽しむ第33代大統領ハリー・S・トルーマン。
10. 有名な幽霊が住んでいるとのウワサ
ホワイトハウスで死亡したわけではないが、ここ数年、ゲストやスタッフ、そして大統領の家族がエイブラハム・リンカーンの亡霊に怯えていると主張する報告が複数あった。
足音が聞こえたり、犬も理由なく吠えたり、リンカーンの寝室のドアをノックする音が聞こえたりといった奇妙な現象が起きているそう……。
11. 元住人いわく「刑務所」
ミシェル・オバマは、詩人で親友のエリザベス・アレクサンダーと対談した際、ホワイトハウスでは自分で窓を開けることすら許されないと明かしている。
「ホワイトハウスに8年間住んでいたときは、自分で窓を開けることさえできず、バルコニーから出るときも3人のスタッフに知らせないといけなかった。外を歩くときも同じ。なぜなら私が外出するときには50人のスタッフが動かなければならなかったから」
ミシェルに限らず、ホワイトハウスに住むことでプライバシーや自由がなくなると不満に思っていた人は他にもおり、トルーマン大統領はかつてホワイトハウスを「グラマラスな刑務所」「巨大な白い監獄」と呼んでいた。
12. 1948年に崩壊しかけた
第二次世界大戦と世界恐慌の後、ホワイトハウスでは必要な維持管理が行われなかった。フランクリン・D・ルーズベルト大統領が1945年に入居した際には、足元の床板が動いて下階のシャンデリアが揺れたと報告され、1948年1月には調査の結果、2階の崩壊が差し迫っていると診断された。幸いその前に工事が行われたため、けが人は出なかった。
13. スタッフによるいたずらで大損害
2001年にジョージ・W・ブッシュがホワイトハウスに入る前に、クリントン大統領のスタッフがホワイトハウスにある複数のコンピュータのキーボードから「W」キーを抜き取ったという報道も。
また、机の下に接着剤をつけたり、アンティークのドアノブを盗んだりして、1万5000ドル相当の損害が発生したと報告されている。