多様性や包括性のある社会を目指す動きが進むなか、多くの広告で多様な人種や性別、体型、バックグラウンドを持ったモデルを見かける機会が多くなりました。人種の坩堝でもあるアメリカ・ニューヨークはその流れをいち早く取り入れ、ファッション、ビューティ業界、そしてモデル業界も変化を遂げつつあります。

今回はニューヨークを拠点にモデルとして活動をする、森優里さんにインタビュー。多様な個性が受け入れられるようになってきたモデル業界で奮闘するお話を伺いました。

これまでのキャリアを教えてください。

福岡出身なのですが、19歳の時に地元でスカウトされてモデル事務所に入って活動をしていました。それまでは特にやりたいこともなくて、表現するのが楽しかったし、初めて面白いなと思えたのがモデルでした。

福岡にいた時はファッションショーや広告のモデルとして活動をしていたのですが、仕事の幅を広げるために東京と行き来することに。東京コレクションにも出ましたが、上京した際にイベントで会ったフォトグラファーの方に「君は個性的だし、万人ウケはしない」と言われて泣きながら帰ったこともありました。

その後、「東京は怖いところ」というイメージを持ってしまい、結局福岡を拠点にしたのですが、仕事も少なくなり、結婚を機にモデル業からはフェードアウト。それからはアパレルの販売員などをしていましたが、当時は自分に自信がありませんでしたね。

アメリカでモデルを目指そうと思ったきっかけを教えてください。

ハネムーンでニューヨークに寄ったときに夫婦で街を気に入り、「住んでみたい!」と盛り上がっていたんです。それから夫はニューヨークでの仕事を見つけ、2人で2017年に渡米しました。

最初はニューヨークに住むこと自体が目標だったので、私の仕事は全く決まっていませんでした。しばらくして日系の旅行会社で1年ほど働いていたのですが、自分の人生を考えていた時に「これでいいのかな? このままでいいのかな?」と思うようになってきて。モデルの活動をやめてしまったことも心残りだったし、これまでで一番打ち込めたのもモデルだったので、「もう一度やってみよう」と決心したんです。

多様性や包括性のある社会を目指す動きが進むなか、多くの広告で多様な人種や性別、体型、バックグラウンドを持ったモデルを見かける機会が多くなりました。今回はニューヨークを拠点にモデルとして活動をする、森ゆりさんにインタビュー。多様な個性が受け入れられるようになってきたモデル業界で奮闘するお話を伺いました。
Yuri Mori
▲タイムズスクエアのビルボードを飾ったことも

それから、社員として働いていた旅行会社をアルバイト契約にしてもらい、時間のある時にフォトグラファーと作品撮りを始めたんです。その作品を持って自ら現地のモデル事務所にあたってみたけれど全然ダメで、知り合いもいなくて手探りの状態が続いていて…。

フリーランスのまま、作品撮りの写真をInstagramに上げるなど試行錯誤していると、あるとき、SNSを通して事務所から声がかかったんです。その後は有名なフォトグラファーが私のポートフォリオを見てくれて、「Yuriの魅力を最大限に出すならもっとこうした方がいい」などアドバイスをくれたこともありました。

今ではビューティブランドやライフスタイルブランドの撮影、ハンドモデルの仕事もしています。最近では、憧れていた「ロレアル」のモデルに起用されたり、タイムズスクエアのビルボードを飾ったり、少しずつ夢を叶えています。

多様性や包括性のある社会を目指す動きが進むなか、多くの広告で多様な人種や性別、体型、バックグラウンドを持ったモデルを見かける機会が多くなりました。今回はニューヨークを拠点にモデルとして活動をする、森ゆりさんにインタビュー。多様な個性が受け入れられるようになってきたモデル業界で奮闘するお話を伺いました。
Yuri Mori
▲ハンドモデルとしても活動中

これまでのキャリアのなかで壁にぶつかったことはありますか?

モデルという仕事は急に大きな仕事が入ることもある一方で、波があります。仕事が入らない時は不安になったり落ち込んだりもしますが、「フリーランスは波がある。待っていたらまた波が来る」と割り切るようにしています。アメリカに来てからは、メンタル面が強くなったと思います。

SNSでは自分の髪の毛にコンプレックスがあったと投稿されていましたよね。

私の髪の毛って、量が多くて硬いんです。単純に細くて柔らかい髪に憧れていたのですが、撮影の時にヘアメイクさんから「あなたの髪の毛って本当に綺麗!」って言ってもらえて、そこからは「ありのままでいいんだ」と思えるように。

アメリカに来てからは自分の髪が好きになったし、今では自分の武器ですね。ニューヨークでは誰もが自由で、人と違うことが当たり前。自分の嫌いだったところが好きになれて、強みに変えられるようになりました。

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時代に合わせて変化しているモデル業界ですが、課題に思うことはありますか?

私がニューヨークでモデルの仕事をし始めた時よりも、今はダイバーシティ・インクルージョンの流れは加速していると思います。確実に機会は増えているものの、アジア人モデルはまだまだ少ないのが現状。

アジア人がメインのモデルになる機会はなかなかないし、オーディションに行ってもアジア人は私だけ、というのはしょっちゅうです。人口に対する割合などもあると思いますが、そういったことは肌で感じますね。

多様性や包括性のある社会を目指す動きが進むなか、多くの広告で多様な人種や性別、体型、バックグラウンドを持ったモデルを見かける機会が多くなりました。今回はニューヨークを拠点にモデルとして活動をする、森ゆりさんにインタビュー。多様な個性が受け入れられるようになってきたモデル業界で奮闘するお話を伺いました。
Yuri Mori
▲「ロレアル」での撮影

モデルの仕事を通してファッション・ビューティ業界の変化を感じることはありますか?

より、リアルなものを見せようという傾向にはなってきていると思います。たとえばビューティブランドでも「フォトショップはしない」というブランドが増えました。あえて修正せずに、ありのままを表現しようという流れです。

あとは動画関係の仕事も確実に増えましたし、テクノロジーと融合している仕事は増えたと思います。

TikTokでは「モデルの裏側」を発信していますよね。

ちょうど2年前、パンデミック中の3月にTikTokを始めました。TikTokではTipsを紹介する動画がよくあると思うのですが、私だからこそできる内容にアレンジしようと思ったんです。

「身長が低くてもできるモデルの仕事」という動画を投稿したら、55万回再生もされて。モデルに関するTipsは少ないし、私自身が「こういうことを知りたかった」と思う内容をメインにしていて、私の知識が誰かの役に立てばいいなと思って続けています。

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

今後の目標を教えてください。

モデルの仕事をもっと頑張っていくことはもちろんですが、もっと発信力をつけられるようになりたいですね。アジア圏モデルの希望になりたいし、年齢に関係なくモデルはできると伝えたい。自分に自信がない人をエンパワーするような存在でいたいし、不可能なことを可能にするようなモデルになれたらなと思っています。