雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン ドイツ版 編集長:アニヤ・デラスティック】

アニヤ・デラスティック(42歳)は、長年雑誌に携わってきたものの、コスモに携わることに対しては気後れしたのだとか。「私は旧東ドイツで育ち、西側の雑誌に触れることはありませんでした。ですから、誰かが国境の向こうからこっそり一冊持ち込むと、私はいつもじっと見入っていました。ティーンエージャーの頃に最初に手に取った雑誌の1つが英語版のコスモポリタンで、私の生きている狭い範囲の、その向こう側の世界の象徴のようだったのを覚えています」。そんなアニヤが、コスモ ドイツ版で働くうえで必要なことや、ケルンで大晦日に起きた集団性的暴行事件が、ミレニアル世代の女性の間でどのように議論を巻き起こしたかを語ってくれました。

――雑誌業界で働いてきた中であなたが得た、最も重要なキャリアアドバイスは?

私が最初に大きな仕事のオファーを受けたときに、よりによって私の"元夫"が言った言葉なんですが、「誰でも水を使って料理をする」。どうやって訳していいかわかりませんが、「そんなに難しいことはない」ということです。その言葉はいつも心の中にしまってあります。私は何でも学ぶことができる。私は挑戦して成長することができるって。

もうひとつのアドバイスは、前コスモ ドイツ版の編集長からのもので、彼女は私が常にキャリアアドバイスを受けていた人でした。私がある仕事を引き受けるのが恐いと言うと、彼女は言いました。「恐いっていうのは、いいことよ。恐くないなら、あなたは傲慢だということだから。そういうとき(傲慢になっているとき)は、仕事もうまくいかないわ」。彼女はまったく正しいし、いいアドバイスをもらったと思いました。

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――オフィスでの1日について教えてください。

週に2回チーム全体で会議をします。普段の日だと、まず仕事にとりかかり、みんなで話しながらパソコンを動かし、メールをチェックして、10時になるとその時々のテーマについて制作会議をします。その日と翌日にやらなくてはならないことを話し合ってから、個々人が話します。1日中、私は様々なエディターとたくさんのミーティングをしています。彼らが話を投げかけてきて、そのネタに加えたい専門家は誰か、どうやって進めるかなどを一緒に話し合います。時には、PRの人たちと一緒にランチミーティングをすることもありますし、広告主とミーティングをすることもあります。もちろん時折、追加の仕事が入ることもあります。ファッションウィークやイベントに出かけたり、過去10年間は、テレビ番組『Germany's Next Top Model』とコラボしたりもしています。

――コスモで働くことを夢見ている若い女性たちに、アドバイスはありますか?

恐いもの知らず(fearless)になること! 恐いもの知らずというのは、子どもでいることやこれまでの人生を忘れるという意味ではありません。もしあなたが、「この道は正しい」と確信できることがあったら、自分の身をその中に投じて、見習いに徹し、できるかぎり将来の仕事について学ぶことです。自分の力を100%出し、自分の仕事を愛して、コスモガールにならなければなりません。

――読者に人気のあるセレブは?

他国のコスモ読者に比べて少し年齢が上だということもあり、彼女たちにはジェニファー・アニストンやサラ・ジェシカ・パーカー、アンジェリーナ・ジョリー、シャーリーズ・セロンといったセレブがとても人気です。ビッグネームは一番売れますが、そうでもないセレブに表紙を飾ってもらい、とてもよい売り上げを記録したこともあります。例えばケイリー・クオコは、ドイツではあまり知られていませんが、彼女が表紙の号はよく売れました。

――読者が少し年上というのは?

ドイツの読者はおよそ35歳くらいなんです。ですから、彼女たちはもう学生ではありません。仕事をしていて、すでにキャリアを積んできて、自分のお金もあり、自立していて、子どももいるような人たちです。でも平均年齢が35歳ということは、それよりもずっと年下の読者もいて、ずっと年上の読者もいるということなので…つまり私たちの読者は、20歳から49歳ぐらいまでと言えるでしょう。これは幅広いです!

――35歳前後の女性たちが、コスモで読みたがっているものは?

私たちのDNAの中で最も重要なのが、キャリア、愛と性、恋愛、そして美容です。ファッションももちろんですが、ドイツ版では美容が強いです。コスモ アメリカ版を見ていると、私たちの記事のトーンの方が少し大人ですが、それでも同じDNAです。お出かけを楽しみにして、おもしろいことをし、自分のベストを尽くし、よりよい自分になる。お金にしてもキャリアにしても、自分にふさわしいものを得ることや、仕事と恋愛をどう両立させるかなど。どこでも同じですが、私たちは少し年齢が上なんです。

――同性パートナーシップ制度はありますが、同性婚はいまだにドイツで合法化されていません。雑誌ではLGBTについての問題をどのように扱っていますか?

ここではあまりに受け入れられていて普通なので、あえて考えることもないのがもどかしいんですよ。伝統的な意味で結婚はできないけれど、パートナーシップは登録できるんです。もはやタブーではありません。私たちは様々なジェンダーの問題を取り上げています。読者はトランスジェンダーの動向に関心があります。ドイツのコスモ読者は、本当に柔軟です。

――ケルンで新年に恐ろしい事件が起こりましたが、同じドイツにいてどのようにごらんになりましたか?

新年には、私たちは事件を知りませんでした。ケルン以外の場所にいた人々はみんなそうです。2日ぐらい経って、ようやく人々が事件について話し始めました。あらゆる情報を処理して、そこで起きたことを理解するのにしばらく時間がかかったのです。けれども後に、起きてはならないことが起こりました。それは、2つの別々の問題が結びつけられたことです。女性への暴力と人種差別問題が、ケルンで起きたことを正当化するために混同されたということです。というのも、ここドイツでは難民についての議論が行われていて、一部の人々が自分たちの目的(人種差別について訴える)のためにこうしたことを直ちに利用したのです。これは恥ずべきことです。

雑誌ではまだこのことについて議論する機会を持てていません。ウェブ版と違い、出版は時間がかかるものなのです。ですが、私たちがちょうど今取りかかっている「もうたくさん!:女性が誰1人として耐える必要のないこと」という企画があります。あなたがどこから来たのであろうと、やったのが誰であろうと、決してしてはいけないことがあるし、我慢しなくていいことがある、と伝える企画です。「例外なし」というハッシュタグキャンペーンもやっています。人生のあらゆる局面における性的暴力と人種差別に反対するものです。この事件が起きるまで、女性に対する性差別と性暴力はドイツのメディアであまり取り沙汰されて来ませんでした。恥ずかしいことです。

――ドイツ版の読者たちは、自分たちをフェミニストと位置づけていますか?

フェミニストというと、ドイツのほとんどの人はいまだに、魅力のない、男性嫌いの女性だと思っています。でも、言葉の核心までとらえるなら、もちろん私たちの読者はフェミニストだと思います。平等のために闘っているのですから。就職においても平等な機会を求めていますし、男性が子どもと家にいて、女性が働きに出るというように、伝統的なジェンダーの役割も変わり始めています。私は彼女たちがフェミニストだと思います。たとえ、彼女たちがその言葉を使わなくても。

――読者が最も答えを求めている、セックスに関する疑問は?

去年のドイツ版35周年記念号(10月号)の記事で、ドイツのテレビ局TLCと大々的なセックス調査を行いました。そこでわかったのは、ドイツ女性は性欲や性生活についてはおおむね順調だけれど、セックスを阻む最も大きな要因として"ストレス"が問題視されているということ。あまりにストレスが多すぎるときがあるようです。脱マンネリに関する企画も好評です。あとは、実験系の企画も人気ですね。この前はエディターの1人が、売春を目的とした新しい出会い系サービスを覆面取材したんですよ。

――それはどうなったんですか?

彼女は写真を投稿して、「同伴はしたいけれど、セックスはしたくない」と書き込みました。すぐにたくさんの男性から連絡が来て、彼女はそのうちの1人と会いました。もちろん、私たちは全部監視して、彼女が確実に安全なように気を配っていました。彼女が男性とコーヒーを飲み始めてすぐに、男性はこう言ったんです。「僕はもっと君が欲しい、君が好きだ、君とセックスしたい、フェラチオしてくれないか」などなど。ちなみに、その男性にはガールフレンドがいたことが判明しました。とにかく、私たちの読者はこういったことをいつも読みたがります。

――雑誌とウェブ版の関係性はどうですか?

定期的に情報交換していますが、私たちは1つのチームではありません。私たちは異なる部署を持っていて、彼らはオーディエンスにどうやってクリックさせるかを知っているし、私たちはどうやって読者を得るかを知っています。ですから、お互いのベストを尽くすのみです。

――読者に最も人気のあるSNSは?

インスタグラムとFacebookに夢中なのは知っていますが、Twitterは特筆するほどではありません。

――最後に、若いドイツ版読者たちについて、他の国の読者が驚くようなことはありますか?

読者の年齢のちがいということ以外にはありませんね。アメリカ版の記事を読むと、こう思うんです。そうそう、私たちもパーティーが好きで、飲むのも好きよってね。コスモ アメリカ版がずっと若い人向けだということは知っていますが、カクテルなどのネタが載っているのはとても楽しいです。私たちも大好きだから。ただ、少しだけ年齢が上っていうだけなんです!

※この翻訳は抄訳です。

Translation:mayuko akimoto

COSMOPOLITAN US