雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン 南アフリカ版 編集長:キャシー・ルンド】

キャシー・ルンド(38歳)は、およそ15年前、コスモポリタン 南アフリカ版のインターンとしてキャリアをスタート。ライター、メイン特集ライター、特集担当エディター、アシスタントエディター、副編集長、そしてついに編集長と、一歩ずつ歩みを進めてきたのだとか。彼女は今や雑誌とオンライン版の両方を統括する存在。そんなキャシーが、アパルトヘイト後の社会で、若い女性が文化間の摩擦や家父長制度といった深刻な話題について、どのようにコスモに議論の場を求めているかを語っています。

――コスモガールにとっては夢のようなキャリアをお持ちですが、そうした経験から得た最も大切なアドバイスは何ですか?

キャリアについては、自分が動くべきタイミングと、留まるべきタイミングについて、賢く判断する必要があると思います。長く続けなくてはいけないポジションもあります。特集担当エディターはブランドのDNAを学ぶ上でとても大切なポジションでした。ブランドにどっぷり漬かって数年間を過ごすにはとてもいい役回りです。副編集長も同じです。マネジメントについてや、スタッフの使い方、チームを率いる方法についても深く学べるときです。もちろん、編集長の指示を仰ぐ立場ですが、マネジメントとリーダーシップについて学ぶまたとない機会でした。たくさんのいいアドバイスをもらったし、雑誌でも私たちは多くのキャリアアドバイスを書いています。だから、私の人生の大部分は、自分が書いたことの実践ということになりますね!

南アフリカ版で働くことを目標にしている、若い女性へのアドバイスはありますか?

自分ができることを増やすことが最も重要です。出版産業はものすごい速さで進化し、変化もしていて、私たちでさえ3年後にはどんなポジションが誕生しているか、それがどんなものなのかわからないのです。私が編集長になってから3年になりますが、その間にも内部の編集の仕事を色々と変えました。私のチームはみんながデジタルと雑誌の両方、また、広告と編集の両方にわたって仕事をしています。本当に出版業界で働きたいのなら、できるだけ多様な要求に応えられることと、出版業界のセオリーとして、1つの仕事から別の仕事にすぐにシフトできるフットワークの軽さが必要です。ちょっと文章を書けるだけでなく、動画であれ、ソーシャルメディアであれ、インスタグラムであれ、雑誌に掲載する2000字のエッセイであれ、異なるメディアで実際にネタを伝えられる人です。もしあなたがこのすべてをできるとしたら、間違いなく採用されるでしょう。

――オフィスでの1日を教えて下さい。

私が編集長に就任した当時、南アメリカでのデジタル社会における私たちの存在感はとても薄かったので、デジタル部門の成熟は緊急の課題でした。メディアにおける私の目標は、デジタル部門のオーディエンスを育てることだったので、デジタルを優先するという、出版モデルの逆を実践しました。毎朝、私たちのスタッフは全員ウェブ版の仕事をすることにし、原則的に雑誌や、雑誌の校正原稿には手を触れてはいけないことにしました。例外なく誰もがサイトのコンテンツを作るのです。スタッフは全員昇給し、どちらのメディアでも働けるようにしました。それが究極的には一番良かったことで、雑誌にしばられていたスタッフの真の潜在能力を見ることになりました。彼らはウェブ版で素晴らしい仕事をしていますし、かつては考えられなかったようなポジションについているのです。記事でビッグヒットを飛ばし、称賛を浴びるのはライターだと思っていましたが、南アフリカ版ではチームのメンバー全員がそうなのです。私のチームには、ウェブ版を作らないスタッフは1人としていません。

――その後の流れは?

私の1日は、このようにウェブ版から始まるわけです。その後は制作スケジュールのどの辺りにいるかによってちがいますが、雑誌のための記事やブックリストを仕上げているか、雑誌とウェブ版で同時に使えそうなコンテンツの戦略を組み立てたりしています。雑誌のためのマーケティングもたくさん行います。広告主に向けたものと、マスメディアを利用したものと、両方の宣伝コンセプト設計も多数立てます。そして当然のことながら、スタッフの指導をします。スタッフはここケープタウンとヨハネスブルグを合わせて20人ほどいます。彼らに助言したり、励ましたり…どんなに地味に見えても、私が関わらない仕事は1つもありません。私たちはとても仲の良いチームで、よく働きます。小さなチームですが、大きなヒットを創り出します。私は彼らをとても誇りに思っています。

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――雑誌とデジタルの融合について、もう少し聞かせてください。

私はこれまでにコスモで長い経験を積んできて、会社のために長年働いてきたことにとても感謝しています。上役である出資者や経営陣からとても信頼されているので。彼らは本当に私のビジョンを信頼して、やりたいようにさせてくれました。

私のチームはみんなミレニアル世代で、彼らはデジタルもハードワークも完全にオーケーなのです。デジタルコンテンツを作るのが不安だという人もいました。それは自分の仕事ではないという気持ちもあっただろうし、経験したことのないことですから、「もしウェブ版がコスモらしくなくて、うまくいかなかったらどうしよう?」って。でも、実際のコンテンツというのは、親友に送るおもしろいメールや、Facebookで友達と共有するおもしろいもの、という感じなんです。仲間とシェアするなら、編集者の私ともシェアしてくれれば、ウェブ版に掲載する。それこそがデジタルコンテンツであり、キュレーションであって、コスモを作っているものなのです。すでにやっていたことなので、スタッフにとっては難しいことではありませんでした。自分たちがそんなビジネススキルを持っていたことに気づかなかっただけなのです。

――読者層について教えてください。

主に18歳から34歳ですが、25歳の都会の南アフリカ人女性を想定して書いています。つまり、あらゆる人種を対象にしています。白人もいれば、黒人もいるし、インド人や混血もいる。キャリアウーマンで、とても元気で刺激を求めていて、おしゃれで流行に敏感。健康的な体と精神の持ち主たちです。恋人も女友達も愛していて、コスモが彼女たちのチアリーダーであり、親友であり、カウンセラーでもあるからこそ集まってくるのです。

――読者に最も人気のあるセレブは?

南アフリカでは、ダントツでビヨンセです。彼女はカリスマです。南アフリカでは、男性の間でさえ、Queen Bey(ビヨンセの愛称)ほど人気のある人はいないかもしれません。ニッキー・ミナージュは近いかも。彼女の表紙はとてもよく売れました。オンライン版では、カーダシアン一家のクリック率が高いですが、雑誌では人気がありません。私が思うに、カーダシアン一家は読者にとって「認めたくはないけど好きなセレブ」なんでしょうね。人に見られないスマホでなら彼女たちのニュースを読むけれど、公衆の面前で雑誌は買わないという。

――雑誌をプロデュースする上で、政府の干渉を引き起こすようなものを載せることはありますか?

いいえ。今の時点ではありません、コスモ誌上では。でも、たしかつい最近、南アフリカの新聞でそのようなことが起こりました。南アフリカの政治的な情勢はまだ注意を要します。アパルトヘイト時代は終わり、あれからもう20年が経って、私たちは民主主義の世の中を生きていますが、まだ歴史は浅いのです。ようやく新しい道を見つけたと思っても、政府の汚職や、旧世代が引きずる根深い人種差別や家父長制度(キャシーは、南アフリカの家父長制度をこう説明:自由をめぐる闘いは人種差別を打倒することのみに焦点を置き、性差別は問題にされなかった。南アフリカの性別による不均衡はとてつもなく大きく、例えば、女性の収入は平均して男性の3分の2で、レイプやドメスティックバイオレンスの発生率は依然として高い状況である)などの新しい問題が持ち上がる、という感じです。南アフリカは巨大で、暗く、恥ずべき背景を抱えています。それは、アパルトヘイト政権に端を発しています。

また私たちは、少数のエリートと、大多数の貧困層&失業者という、深刻な経済格差にも苦しんでいます。人口の25%が失業しているので、コスモ 南アフリカ版は、キャリアと起業家精神、自分で事業を興し、自分自身のボスになること、自分やコミュニティーのために仕事を作ることについて、たくさん記事を作っています。

たしかに過去には、掲載を禁止されたこともあります。アパルトヘイトが廃止される前、当時の編集長がセックス記事で禁止令を受けました。マドンナがセックス本を出版したの、覚えていますか? あの本の一部を出版したところ、ポルノと見なされたんです。南アフリカではいかなるポルノグラフィーも禁止されているので、禁止令を受けました。でも、最近では全くありません。私たちは特に何も禁止されていないし、政府も私たちのすることに関与してきません。

――家父長制度や根深い人種差別など、そういった深刻なテーマについて、女性たちはコスモに議論しに来るのですか?

その通りです。私たちは南アフリカのミレニアル世代の間で起こっていることについての、対話を促進しようとしています。例えば今月は、異文化を表面的に捉えて中傷することと、真に理解して受け入れることの線引きについて記事にしました。それは常に重要なトピックですが、異なる文化について話しながら、互いに攻撃せずにいるのは簡単なことではありません。それこそが間違いなく、人々がコスモに求めているものです。

――南アフリカのフェミニズムはどういった段階にありますか? 南アフリカ版の読者は自分たちをフェミニストと位置づけていますか?

そういう人もいると思います。確信がない人もいれば、どうでもいいという人もいるでしょう。私たちは職場での男女平等が大事だと思っていますし、雑誌でそういった議論もしていますが、自分たちが極めてフェミニスト的だとは思いません。コスモの内容の多くは楽しいことやおもしろいことでなくてはなりません。美しいルイ・ヴィトンと、上半身裸のイケメンのバランスをとらなくてはいけないのです。それが、私たちが女性たちのチアリーダーであり、カウンセラーであり、親友だということなんです。私たちは彼女たちにとってすべてでなくてはいけない。ですから、フェミニズムは南アフリカ社会にとっても雑誌にとっても重要なテーマだけれど、当然ながらそれが究極の目的ではありません。私たちには、書くべき、また読者によって話し合われるべき、より差し迫ったテーマがあるのです。レイプ犯罪の統計結果は、その1つです。

――南アフリカの高いレイプ発生率に対してどうお考えですか?

とてもショックです。大変な数ですから。南アフリカの男性の4人に1人がレイプを犯した経験があるのです。これは家父長制社会に根ざしていて、まさに私たちが雑誌で闘っているものです。私たちは、現状の中で対処するために女性を力づけ、精神的、肉体的に、どのような形でも身の安全を守るための方法を模索しています。また、レイプ被害にあった女性たちに寄り添い、ともに歩むことを目指しています。これはコスモ 南アフリカ版の、とてもとても大切な役割です。

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――あなたがコスモにいた期間を通して、人気が上がって来ているのはどんなテーマですか?

思いつくテーマはたった1つですね。毎年、私たちは南アフリカの最もセクシーな男性たちによるカレンダーを出すんですが、読者はとにかくこれが好きです。彼らは恋愛や男性についての話が大好きなんです。20代における恋愛というフィールドで答えを模索しているのです。また、テーマやコンテンツ単体よりも、メディアとして広く受容され、読者からお墨付きをもらっています。成人のほとんど、そしてもちろん私たちの読者のほとんどがスマホを所有していて、情報にアクセスする手段にしています。これは彼らが最も好むものです。

――読者はどういった恋愛関係の疑問に対する答えを期待していますか?

破局です。破局はとてもわかりにくくなっています。デートもわかりにくくなっています! 2016年におけるコミュニケーションの実態調査では、"デート"は以前よりずっと曖昧なものになっています。互いを知る段階であれ、もっと真剣な段階であれ、もう終わった段階であれ、その関係を定義するのがとても難しいのです。読者が助けを必要としているのは、そういうところです。つまり、「自分が別れたのかどうかさえわからない。だって、デートしていたのかどうかもわからないのだから」。

――南アフリカの女性たちに最も人気のあるSNSは?

そうですね、数の上では断然Facebookですが、彼女たちはFacebookに疲れてきているように見えます。今のところ、彼女たちが大好きなのはインスタグラムで、その人気は飛び抜けています。スナップチャットはそれほど人気が出ていません。南アフリカではインスタグラムの人気が急上昇しています。

――最後に、南アフリカの若い女性について、他の国の読者たちが驚くようなことはありますか?

難しい質問ですね。でも、いい質問です。私たちは雌ライオンのように、激しい野心に駆られ、ライオンが子どもを守るように、友人や家族を守ろうと防衛的になります。雌ライオンと同様、私たちも男性を求めますが、いなくてもやっていけます。私たちは誇りを守るために闘う強さを持つと同時に、アフリカの太陽が頬を照らすときには、とても優しいのです。

※この翻訳は抄訳です。

Translation:mayuko akimoto

COSMOPOLITAN US