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「村井さんちのお子さんってラッキーですね。だっておいしいものがたくさん食べられるし!」と言っていただくたびに、「そ、そうでもないんですよ……」と、曖昧な返事しかできない。なぜなら、うちの双子の息子達は9歳になっても好き嫌いが多いからだ。

私自身、いまだに子供の毎日の食事に苦労している母親の1人だ。ちゃんと作っているのに食べない。この落胆たるや、簡単には書くことができない。信じられないかもしれないけれど、子供がまだ小さい頃は本気で悩んでいた。とにかく、何を作っても食べてくれないのだから。保育園に預けたので昼食の心配はなかったけれど、困ったのは朝食と夕食だった。子供を預けた保育園の連絡帳には朝食の内容を書く欄があって、それが私を大いに悩ませた。実際に食べたものしか書けないから、連日、うどんが並んだ。空欄の日もあった。今となっては信じられないことだけれど、その時はちゃんと申告しないと絶対にダメなのだと信じ込んでいた。あの頃の自分に言ってやりたい。少しぐらい捏造しろと。

ある日、悩みに悩んで担任の先生に相談した。「先生、どうしたら食べてくれるでしょうか。一生懸命作っても、ぜんっぜん食べてくれないんです」と半泣きで訴える私に、先生はあっけらかんと「お母さんそれはね、欲しがるまで、与えなければいいんですよ!」と言った。正直、「へ?」だった。先生は「双子ちゃん、保育園ではちゃんと食べてますよ。園では散歩に行ったり、お庭で鬼ごっこしたり、体力使うじゃないですか。だから、お腹が空くんですよ。お腹が空けば食べますって、アハハハハ!」

アハ……ハハ……引きつる私に先生はプリントをさっと出して、「お母さん、これ、給食の献立表! ここに書いてあるおすすめメニューとかどうですか? 子供たちに大人気のメニューばかりを紹介してますから!」と言って無理矢理それを私に握らせて、「それじゃまた明日~さよなら~!」と急いで去って行った。

前置きが長くなったが、今週のメニューは、そんな保育園の大人気メニューで、わが家でも人気の「薄切り豚肉とスライスチーズの重ね焼き」だ。

薄切りの豚肉3枚に塩こしょうと小麦粉をさっと振る。1枚目の肉に半分に切ったスライスチーズを重ねる。その上に、2枚目の薄切り肉を重ね、再びスライスチーズを乗せる。最後に3枚目の薄切り肉を重ねて終了。まな板の上にラップを敷くと汚れも少なく作りやすい。最後、ラップで肉とチーズの層を包んで、しっかりとまとめると肉とチーズが離れてしまうことがない。あとは油を薄く引いたフライパンで焼くだけだ。ソースはケチャップオンリー。大人も十分楽しめるメニューだ。

育児を9年間やってきてわかったのは、何をしても食べない時は食べないということ。深呼吸して我慢強く待つことで解決する育児の悩みって、意外にたくさんあるものだ。

ああそれにしても、今考えれば私も悩める真面目な母であったなぁ……。

材料 (1人分)

豚薄切り肉 3枚

スライスチーズ 1枚

塩胡椒 適宜

小麦粉 適宜

作り方のポイント

子供の場合は上記の分量でも足りますが、もちろん大人はもっと食べることができます。なにせ薄切り肉ですから。そのあたりは家族の人数で調整してくださいね。ちなみに今週はロース肉の薄切りで作りました。

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