Brown, Food, Ingredient, Cuisine, White rice, Rice, Jasmine rice, Steamed rice, Beige, Recipe, pinterest

滋賀県大津市に移り住んだのは10年前。それより以前、私は長らく京都に住んでいた。大学を留年して就職活動に乗り遅れ、一応卒業はしたけれど朝から晩までバイトに明け暮れていた私は、気づいたら26歳になっていた。なんというダメっぷりだ。

さすがにちゃんと働かなくてはと思って、唯一の特技、英語を使って派遣社員として働きはじめたが、私は明らかに社会人として失格だった。何度も派遣元に戻されては、再び派遣され、そしてクビになるというサイクルから抜け出すには随分時間がかかったように思う。あの頃ご迷惑をかけた皆様には全力で謝罪したい気持ちでいっぱいだ……って、いきなり黒歴史の告白になってしまったじゃないか。ツラ過ぎる。

何社目に派遣された会社だったかはすっかり忘れたが、ようやく腰を据えて働き出したその職場に、きみえちゃんという私より3歳ぐらい年下の女性が働いていた。小柄だけどはつらつとした美人で、性格もまっすぐで素敵な女性だった。すぐに仲良しになって、よく飲みに行ったものだ。まるで妹ができたみたいな感覚だった(この気持ちは一方的であったと思うけれど)。わが家に集まってごはんを食べることも度々あり、その時に彼女が披露してくれたのが、今週紹介するツナごはんだ。

わが家にやってきたきみえちゃんはお米を洗うと、大きめのツナ缶を開けて、「このまま行くっス」と言って、おもむろにツナ缶の中身を洗った米の上にぱかっと乗せた。「スープもオイルもこのままっス」と言った彼女は、お釜の内側にある目盛りぴったりに水を加えると、ヨシ!とばかりに炊飯器のフタを閉めた。

できあがったツナごはんは、シンプルなピラフのようで、そこにいたみんながおいしいね!と言いつつ食べた記憶がある。私はしきりに感心したものだった。なるほど、ツナ缶をまるごとそのままなんて、いいアイデアだね。そしてとてもおいしいじゃん!

その後、私が滋賀県に移り住んだこともあって、当時仲の良かった同僚と頻繁に会うことはなくなり、彼女とも連絡を取らなくなって7年ほどになると思う。時々、ふとした瞬間に、あの頃のことを思い出す。私が初めて本を書いた時期と重なるだけに、思い出も鮮明だ。

きみえちゃん、元気にしてますか? ツナごはん、今も時々作っているよ。

材料(4人分)

米 3合

ツナ缶 1缶

塩 適宜

醤油 適宜

白ごま 適宜

作り方のポイント

ツナ缶の種類や大きさによって、塩や醤油で味の調整をしてください。私はいつも、塩少々と醤油を加えて味を整えます。餅米を使うと、おいしいおこわになります。仕上げに白ごまをどうぞ。冷めてもおいしいのでお弁当にぴったりです。

【村井さんちの田舎ごはん】まとめはこちらでチェック