十年ぐらい前の話だが、とある女優さんがトマト農家を訪れるという旅番組を見ていた。その農家のトマトは甘いことで有名で、その甘さには秘密があるという。甘いトマトを作るために、栽培中に極力水を与えないというのだ。
テレビ画面に映るトマトの苗はほとんど枯れたような状態だったが、トマト自体は真っ赤で確かにおいしそうだった。トマトの苗に水を与えず極限状態に置くことで、生き残ろうと必死になった苗が実に養分をせっせと送り込み、甘くなるという説明だった。二日酔いで麦茶をがぶ飲みしながら見ていた私は軽く震えた。トマトも受難の時代なのか…。
「なるほど! ストレスを与えることでトマトって美味しくなるんですねっ」と明るく言った女優さんは、その真っ赤なトマトを口に放り込むと「あまーい!」と笑った。お、おう。震えながらも納得せざるを得なかった。確かにおいしそうなトマトだったのだ。
次に女優さんが向かったのは地元の酒蔵だった。日本酒好きだという彼女は、とてもうれしそうに酒蔵の中を見学し、お礼に当主やその家族のためにおつまみを作るということになった。その時彼女が作ったのが、この「女優巻き」だ。海老がまるごと一本入ったゴージャスさと、大葉やたっぷりのきざみ生姜を入れるという説明を見て、この人は料理が、お酒が、本当に好きなんだなと俄然親近感が湧いて、ファンになってしまった。ささっと巻き上げ、からりと揚げていくその手際の良さにも感動した。
この日以来、わが家でこれ以外の春巻きは作っていない。女優さんのファンにもなったが、それ以上に、この春巻きのファンになってしまったのだ。
それでは巻いてみましょう。
1.春巻きの皮に大葉を乗せます。
2.大葉を間に挟んだ状態で、春巻きの皮を半分に畳みます。その上に、背開きにして塩胡椒し、しっぽの先を切り落とした海老を置きます(油ハネ防止対策)。海老の上に千切りにした生姜を乗せます。
3.折りたたみます。
4.くるくると巻きます。巻き終わりは水で溶いた小麦粉で止めます。
ね、簡単でしょ? ソースはスイートチリソースがおすすめです。ビールとの相性は最高ですよ。
材料 (4人分)
海老 10尾
春巻きの皮 10枚
大葉 10枚
生姜 一片
塩胡椒 適宜
スイートチリソース 適宜
作り方のポイント
油はフライパンに1センチ程度の量でも揚げることができます。温度を高くし過ぎると春巻きの皮が破れるので、低めの温度でじっくりと揚げて海老の中までしっかりと火を通し、最後に温度を高くしてからりと揚げましょう! 材料ですが、4人で海老10尾と遠慮がちに書きましたが、割り切れないうえに10尾じゃ足りないので、わが家では20尾で作ります。
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