世界の今を一緒に学ぼう!「不妊治療の今」編

人工授精、代理出産etc…日本ではどこまでできて、何ができないの?

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このコラムでは、毎回日本や世界で話題となっているニュースからテーマを1つ選び、海外在住の著者視点で考えていくコラムです。身近なニュースからちょっと分かりづらい海外ニュースまで、知っておきたいトピックを解説していきます。

Q:不妊治療ってどんなものがあるの?

先日、こんなニュースが世界中に報道され話題になりました。

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不妊治療(体外受精)により、70代のインド人女性が第1子を出産したというニュースです。

70代で妊娠・出産が可能なの!?

という驚きとともに、

「一体どんな方法で?」「今の医療ではどこまでが可能なの?」「日本でもありえる?」

そんな疑問が頭をよぎったニュースだったのではないでしょうか?

厚生労働省がまとめた「平成 27 年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、日本女性の第1子出生時平均年齢は、

「昭和50年(1975年)=25.7歳」→「平成17年(2005年)=29.1歳」→「平成27年(2015年)=30.7歳」

とゆるやかに上昇し続けています。これは未婚・晩婚化が進んでいることだけでなく、社会環境(仕事、生活、経済状況など)の変化による「妊娠を考える年齢」の上昇、医療の進歩など、さまざまな理由が背景にあります。

30代はもちろん40代の出産も当たり前となりましたが、同時に自然妊娠が難しく、生殖補助医療(不妊治療)を受ける人も増加しています。

「人工授精」「体外受精」といった言葉を耳にすることは多くなったものの、その違いやどんな選択肢があるのかについては「分からない」という方も多いはず。

今回は、現在どんな不妊治療が存在しているのか? また日本では何が可能で何が不可能なのか?について分かりやすく解説します!

■そもそも「不妊」とは?

日本産科婦人科学会妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(一般的には1年)妊娠しない状態"を「不妊」と定義しています。また病気や加齢により「妊娠しづらい」と考える場合は、この定義を満たしていない場合でも「検査・治療に踏み切ったほうが良いこともある」としています。

不妊の原因は男性側、女性側、その両方にある場合がありますが、男女共に何もない場合もあります

男性側の造精機能障害(精子の数が少ない、運動性が低い等)や精路通過障害(精子が通る管が詰まっている等)、女性側の排卵や卵管の問題など不妊の原因は様々です。検査によって特定することができれば適切な治療を開始することができますが、原因が分からない場合は、排卵と受精を促す治療をします。

つまり不妊のための治療には

①病気など、不妊原因の治療 

②妊娠の可能性を高めるための治療

2つがあり、一般的には②を「不妊治療」と呼んでいます。

■「不妊治療」にはどんなものがあるの?

妊娠を望んで医師に受診すると、自然妊娠に近い方法から開始し、より高度な医療へと移行する「ステップアップ方式」による治療が行われます。

まず基礎体温や血液検査や尿検査、超音波検査などを使って排卵日を予測する「タイミング法」の指導、そして「排卵誘発剤(内服薬または注射)」の使用などで、妊娠しやすい環境を整えます。

しかしこれらの方法で妊娠せずステップアップ"する場合、下記の方法があります。

○人工授精AIHArtificial Insemination with Husband's Semen

子宮内に元気な精子を直接注入し受精を補助する方法です。男性から採取した精液の中から運動率の高い精子を集めて濃縮処理し、子宮腔内に直接注入します。注入には柔らかい樹脂製のカテーテルが使われ、痛みもほとんどないと言われています。健康保険の適用はできず、費用は病院によって異なりますが1回約13万円程度が平均です。

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人工授精による妊娠率は5~10%、妊娠に至る場合「約90%は46回で成功する」と考えている専門医が多いようです。日本生殖医学会も「AIHの施行回数は6回程度で累積妊娠率が頭打ちとなる」と述べています。人工授精は医学的には排卵のある女性であれば何度でもトライできるものの、56回程度を目途に次のステップに進むかどうかを判断する方が多いようです。

○体外受精と顕微授精

人工授精で妊娠に至らずステップアップする場合、選択肢には体外受精と顕微授精があります。

この2つは

採卵:排卵誘発剤を使って卵巣刺激を行い、良質の卵子を卵巣から注射器で採取

媒精:精子と受精させる

培養:受精卵が分割し、胚になるまで培養する

胚移植:胚を子宮に戻す

という流れは同じですが、受精方法が異なります。

体外受精IVF

培養液を入れた専用の容器の中に卵子1個あたり約510万個の精子を振りかけ、受精させる。受精卵が分割し胚になったところで選別し、良質なものを1つ、または2つ子宮に戻す。

顕微授精(卵細胞質内精子注入法、ICSI

顕微鏡を使い、採取した卵子に細い針で精子を1つ直接注入することで受精させる。体外受精では受精出来ない男性不妊(精子の数が少ない、運動が弱い)に適した治療であり、受精率は体外受精より高いと言われる。

体外受精も顕微鏡授精も保険が適応されません。料金は医療機関によって幅があり、体外受精は40100万円程度、顕微鏡授精は体外受精よりさらに高額なのが一般的です。

しかし厚生労働省では体外受精と顕微鏡授精に対し助成金を給付しています。給付条件があるので、確認が必要です。

■今の日本の医療でできること

○凍結胚

体外受精で複数の受精卵が採取できた場合、余った胚を凍結しておくことで次回、痛みを伴う卵巣刺激や採卵を行わずに胚移植をすることが可能です。胚移植する時期を選択でき、また1つずつ胚移植できるので多産を防止することもできます。

○卵子や精子の凍結

受精卵ではなく卵子、および精子を単体で凍結保存することも技術的には可能です。

上記は大阪府に住む44歳の女性が20155月凍結保存しておいた自分の卵子(未授精卵)を使い女児を出産していたことを伝えるニュースです。これまでガン治療などのために卵子を凍結した例はありましたが、健康な女性が凍結卵子を使って出産したのはこれが初例とのこと。

この女性は独身だった2012年に卵子を凍結し、結婚後の2014年に解凍。体外受精により妊娠・出産しました。

また千葉県浦安市が卵子凍結に対し自治体として初めて助成金制度をもうけて話題となりました。

卵子は加齢とともに老化し妊娠しづらくなるため、「卵活(将来妊娠を希望する女性が若いうちに卵子を採取し凍結保存すること)」を検討する女性が増えています。日本生殖医学会は2013年に「40歳以上の採取は推奨しない」などの条件付きで卵子凍結保存を認めるガイドラインを発表しました。

上記のニュースや「卵活」について知り、「若いうちに卵子だけ採取しておき、妊娠したいときに解凍すればいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかしこの出産がニュースになるということは、「凍結卵子→妊娠・出産」が難しいということを意味しています。

精子の凍結に較べ卵子の凍結保存は難しく、現在の見解では凍結卵子で妊娠する確率は高くありません

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つまり「卵子凍結をしておけば大丈夫」ということでは決してないので、興味のある方はまずは専門家に相談するなどして正しい知識を入手することをオススメします。

■日本では出来ないこと・難しいこと

自分の卵子で妊娠できない、また(卵子・排卵はあるものの)妊娠出産が不可能な女性でも、子どもを産む、自分の子を持つことが医学的には"可能な時代となりました。具体的には下記のような方法です。

卵巣がない/排卵がない→卵子提供を受ける:病気によって卵巣を摘出したり、早期閉経により排卵がなくなってしまった女性は自分の卵子での妊娠をのぞめないが、3者から健康な卵子の提供をうけることにより妊娠は可能になります。この場合、自分で出産するが生まれた子との血縁関係は存在しません。

子宮がないなどの理由で妊娠できない→代理出産:妊娠・出産ができない女性が、3者の女性に出産してもらうこと。自分の卵子と夫の精子による受精卵を代理母に注入し妊娠・出産した場合、生まれた子とは血縁関係が存在する。

しかしこうした治療を受けることは、現在の日本では困難です。

卵子提供については、日本産婦人科学会では1983年に「法律上の夫婦間以外での体外受精については認めない」という会告が出され、現在でもこれが公式見解になっています。2003年に厚生労働省の審議会が出した報告書では、法整備を条件に匿名の第3者からの提供を容認するとしていますが、法整備が整っていないためほとんどの医療機関で行われていません。

代理出産については日本産科婦人科学会のガイドラインでは禁止されており、また厚生労働省および法務省の依頼により代理出産の是非について審議してきた日本学術会議2008年に「原則として禁止」としつつも一部容認する提言を発表しています。しかし日本の法律に代理出産を禁止するものはなく、2009年には子宮を持たない娘とその夫の受精卵を、50代の母親が代理出産した例を長野県のクリニックが公表し、議論に一石を投じました。

このように法整備や議論が進まない日本では速やかに卵子提供を受けたり、代理出産を行ったりすることが難しいため、こうした治療が合法であるアメリカをはじめとした海外での治療・施術が現実的です。

タレントの向井亜紀さんと元プロレスラーの高田延彦さんはアメリカで代理出産により双子を授かり、衆議院議員の野田聖子さん)はアメリカで第3者の卵子提供を受け50歳で妊娠・出産した例はよく知られています。

■終わりに

冒頭のインドの70代女性の出産について、日本のニュースでは「夫婦の卵子と精子を使用し体外受精によって妊娠に至った」とありますが、海外メディアでは「卵子提供を受けた」と書かれているものもあります。

この70代の女性が

*まだ閉経していなかった(自分の卵子を使用)

*卵子または受精卵を何年も前に凍結していた(自分の卵子を使用)

*第3者から卵子提供を受けた (第3者の卵子を使用)

場合、現在の医療では70代での妊娠・出産は医学的に不可能ではありません。

医療の進歩により、数10年前までは不可能だったことが可能になってきました。しかし治療には副作用や手術によるリスク、また高額な費用もかかります。またどんなに頑張っても妊娠しないケースもあります。

今後さらに生殖医療は発達し、選択肢は増えるかもしれません。もし治療を考える場合、まず情報を出来るだけ収集し、じっくり考えた上で決断してください。

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