イギリス在住10数年の著者が、ロンドンで家を買うことに。しかしこれが想像を絶する大変さ…! 1年4カ月の苦闘の末、やっと家が買えた著者でしたが、入居してみたら新たな問題が勃発! 次なる戦いが始まります…。(連載6回)

■住所がない!?

家購入を決めて1年4カ月、購入日前日の大事件も乗り越えやっと手に入ったマイホーム(涙)。あまりに長い戦いだったので、喜び以上に疲れ果てておりました。でも「もうこれでやっと落ち着ける(はず)」と信じ、疲れた身体にムチ打って仮住まいから新居に引っ越ししました。これが2015年7月末のこと。

購入完了から引っ越しまでに1週間あったのですが、この間に「ちょっと気になること」がありました。「何はなくともまずはネット!」と、すぐに固定電話&インターネットの契約手続きを進めようとしたのですが、電話会社のウェブサイトで住所検索をしても「そんな住所はありません」と表示され、申し込みが完了できない…!

その代わりに「似ている」住所はわんさかでてくるのです。うちは「○○ストリート19番地、Aフラット5号室」が正確な住所なのですが、

「○○ストリート19番地 Bフラット5号室」

「○○ストリート20番地Aフラット5号室」

「○○ストリート 22番地Aフラット5号室」

など、様々なバリエーションの住所が出てくるのです。でも「正解」とはビミョ~に違う。

…なんだか嫌な予感。すぐには使えないかも?

私も旦那も「インターネットがないと生きていけない」タイプの人間。かつ私は家でライターとして仕事をしているので絶対に必要です。

「容量無制限のポケットWifi使えば、電話線なんていらないじゃん」

日本の友人知人には散々そう言われました。

そう、携帯があるので固定電話はそこまで必要ないものの、必ずや手に入れたいのはインターネット

ただ、自宅に電話回線がつながっていないとブロードバンドや光回線もつながらないため、セットで契約する必要があり、加えて、ポケットWifiはイギリスでまだ一般的ではないので「容量無制限」の契約が存在しないのです(携帯のパケット無制限プランは存在しますが)。

今回一時的な対策としてポケットWifiを契約しましたが、好きなだけ使っていると毎月高額な料金が発生してしまいます。なので何としても固定電話&ネットを早急に契約する必要がありました。

■「毎日ケンカ」の日々

嫌な予感は的中し、「正しい住所登録」までに何と2カ月掛かりました。

この建物は区画整理&改築などがあり、この数年で何回か住所の割り振りの変更があった模様。変更のたびに住所が変わり、でも我が家と最新の正しい住所がきちんと紐づけされていなかったのです。

実はこの住所問題の根は深く、電話同様、水道・ガス・電気の住所も古い住所と紐づいていたため、すべての公共サービス会社を相手に住所修正の交渉をしなくてはなりません。

まだまだトラブルは続き、入居後1カ月たったころに水漏れも発覚。修理をめぐり、フラットの管理会社との交渉も必要でした。

来る日も来る日も電話をかけまくり、ほぼケンカ同然の交渉。そしてケンカの合間に仕事…。ポケットWifiを2台契約しているものの、それでも使用データ上限をすぐに超えてしまうので、ネットがあるカフェを渡り歩く毎日。ついにストレスで身体中にじんましんが吹きだしたころ、やっと電話会社の住所修正が終わりました。

ああこれでやっとネットなし生活が終わる…!(はずでした)

家を買うプロセスで何度も起こった「まさか」ですが、はい、今回もありました(笑)。今回の「まさか」もなかなかキョーレツ♡

■そもそも電話線がなかった…

住所問題が解決したので固定電話回線とネット契約を申し込みが完了。やっと接続工事のために電話会社のエンジニアがやってきました。作業をしているエンジニアにお茶を出そうとすると、なんだか様子がおかしい。しきりに首をかしげている。

建物の外壁についている集配ポイントから電話線を引くだけのはずなのに建物の周りをぐるぐるまわっていて、妙な動き。

またしても嫌な予感…。

2時間後、エンジニアが暗い顔で言いました。「残念ながら、今日は電話もネットも開通しない。このビルの電話線の集配ポイントを確認したら、8メートル先のどこかで電話線が切れている。僕の工事分野ではないので何もできないよ」

…ああ、またもや…(絶望)。

電話線がどこで切れているのか? 建物内なのか、そもそも配線施設からケーブルが来ていないのか? 電話会社、建物の管理会社、建物のオーナー会社、まったく親身になってくれないこの3社を繋げ、原因を究明してほしいと交渉するのは本当に大変でした。どこに電話してもたらい回し

電話がつながらない原因がやっとわかったのは11月末、すでに入居から4カ月経過していました。フラット販売前に建物は全面改装されたのですが、その際、道路にある電話配線施設からこの建物に伸びているフラット全戸用の電話ケーブルを改装業者が誤って切ってしまったようだ、というのです。

つまり電話線が建物に来ていなかったのです。

【ロンドンで家を買う5】ネットなし生活の始まり 外観pinterest
左手の3階建てのビルに我が家があります。電話線を切ったのは1階にあるレストランの改装業者だった模様…。

このままではフラット住人、誰も電話&ネットが引けないので、電話線を引き直さなくてはなりません。大きな工事が必要になり、かつ建物全体の問題なので建物のオーナー会社が電話会社と交渉して工事を進めることになったのですが、クリスマスまであと数週間! 国全体がスローペースになる上に、今回の工事は道路の一時を通行止めする必要がありました。我が家は駅前通りにあり、クリスマス前は買い物客でいっぱい。こういった通行止め工事には行政区の許可が必要なのですが、道が混む時期にあっさり許可するとは思えません。

住民全員、大人数でギャーギャー騒げば、動きも多少早かったかもしれません。しかしフラット全5戸の内、当時入居していたのは私たちを含め2戸のみ。入居済のイギリス人女性は「今のところ携帯のパケットだけで何とかなってるので、ネットはそんなに急いでないから~」と一緒に戦ってくれなかった(涙)。

私も旦那もこの国ではガイジン。孤軍奮闘はツラいものでした…。

■悲しき闘いが続く

建物のオーナー会社に毎日メールと電話でプッシュし工事の進捗を聞くものの、返事はいつも「今週中には電話会社が動いてくれると"いいんだけど"(でも私たちが工事するわけじゃないから分からないわ)」の繰り返しです。

私たち:"いいんだけど"っていうぼんやりとした回答はいらないから、何をいつやってくれるのか具体的に教えてよ!」

オーナー会社:「あのね、イギリスではこういうことに時間がかかるのよ。そんなことも知らないの?

…知ってますよ、そんなことぐらい(涙)。

私たち:「行政区に連絡してみたけど、工事の申請がされてないって言ってる。ほんとに何かやってくれているの?」

オーナー会社:「電話線を切ったのは私たちじゃない。うちも被害者よ。でもあなたたちが可哀想だと思って、こっちのコストでやってあげているのになんの文句があるの?」

上記の交渉、私たちのコメントもなかなか強いな~と思われるかもしれません。でもコチラではしつこく言い続けないと何も動きません。

あぁサンタさん、お願いですから私たちに電話線を下さい!(絶叫)

しかし願いもむなしくクリスマスがやってきてしまいました。国中、何もかもがストップ。

「来年には電話&ネットがつながると"いいんだけど"! メリークリスマス!」

オーナー会社の担当者からこの"出し逃げ"のようなメールが来たのはクリスマス1週間前。これを最後に、長~い休暇に入ってしまいました。

クリスマスが終わっても、そんなにさっさと世の中が動き出さないイギリス。短く見積もってもあと1カ月はたぶんネットはつながらない…。

解決の目途の見えない問題を抱えての年越しは私たちのキモチを暗くしました。「たかがネット」でここまで大騒ぎ? と思われるかもしれません。でも「されどネット」なのです。うちは住宅ローンの契約上、5年間はこの家に居住しなくてはならず、しかも「電話もネットもつながらない家」と判明してしまったら、将来誰かに貸すのも売るのも難しくなります。第3回で書いた「不動産のはしご」がこれでは成立しないのです。

このマイホーム購入、やっぱり失敗だったの? と汗も涙も枯れ果てたとき、救世主が登場しました。

同じフロアにイギリス人イケメン青年が入居してきたのです。小柄な細マッチョ、一見フツ~の男性なのですが、いやはや彼は…スゴかった…。

次回(最終回)で、この「隣のイケメン」が大活躍!

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