イギリス在住10数年の著者が、ロンドンで家を買うことに。しかしこれが想像を絶する大変さ…! 連載1&2回で「買おうとした家が買えなかった(涙)」著者でしたが、次なる物件を探しはじめます。今度こそ買えるのか?(連載6回)
■今度こそ‟運命の家"?
裁判所命令まで出たのに退去してくれなかった「居座りカップル」のしつこさに負け、売主A氏が家の売却を断念。家購入がふりだしに戻ってしまった私たち。しかし泣いている暇はありません。2週間後に仮住まいの契約が切れるため、また引っ越ししなくてはならなかったからです。
このとき「もう家を買うのはやめようか」とも考えました。しかし「今を逃したら、もう一生家なんか買えない」という思いに押され、やっぱり買うことに。3軒目の仮住まいに引っ越し、また1から家探しを始めました。これが2015年4月半ばのこと…。
もう2度と同じ過ちを繰り返したくない! と、今回は賃借人が住んでいない「空き家物件」だけを狙いました。すると数週間でまたしても「運命(かもしれない)家」が登場したのです。
「運命(かもしれない)家」は、
*「買えなかった家」と同じ最寄り駅(=旦那の通勤圏内)
*2寝室(+居間+バスルーム+キッチン)フラット
*日当たり良好
*駅近(「買えなかった家」より近い)
*予算はややオーバーだけど、無理すれば買えるかも…
*リフォームしたて!
駅前通りの角にあり、買い物は最高に便利。ビルごと全部リフォームし、1階は私たちが大好きな大手ファミレスがすでに営業中。2階3階にあるフラット5戸が販売開始されたところでした。
「買えなかった家」よりは狭いし高いけれど、リフォーム済なので新築の様にキレイ! まあまあ気に入ったのですが、難点は1つありました。それは「買えなかった家」のすぐ近く、しかも「窓から見える立地」だったことです。交渉に交渉を重ねた不動産屋はなんと真向い…。
あの‟イマイマしい家"を眺めつつ暮らすのか…?
一瞬躊躇したものの、「リフォームしたて」「駅近」の魅力が勝ち、この家を購入することに決めました。
私たち、毎回「買う家を決めるまで」は早いんですよね。この後が大変なんですが…(笑)。
■〇百万がパア~!? 受け渡し前日の地獄
購入を決め、昨年とまったく同じ手続き(住宅ローンの申請と書類手続き)を開始したのが5月末。7月頭には書類手続きの目途がつき、仮契約日と契約完了日を決めました。仮契約日は家の値段の10%の手付金を売主に支払います。この手付金は1度払ってしまうと、たとえ家の売買が成立しなくても戻ってきません。
2015年7月17日にソリシター(事務弁護士。私たちの代理人として不動産購入手続きを行う。ちなみに女性です)を通じて売主に手付金を払い、仮契約を無事完了。あとは1週間後の受け渡し日(7月24日)を待つだけです。
仮契約さえ終わってしまえば特にやることもないので、新居への引っ越しに向けて準備を始めていました。が、しかし。今回もありました、最後の「まさか」が…。
受け渡し日前日の朝11時。銀行から電話が掛かってきたのです。
「書類に間違いがありました。このままでは明日の契約完了は無効になるので、すぐにソリシターに電話をして、対処して下さい」
な、何ですってーーー!!
ソリシターが何度も確認して作成した書類なのに、10日以上前に提出した書類なのに、なぜ前日になって間違いが発見される? しかも仮契約は終わっているので、たとえ明日契約完了が出来ない場合も手付金は戻ってこない!
一瞬にして〇百万円がパア!?
急いでソリシターに電話すると、まずは「私のせいではない。間違いに気づかない銀行が悪い」とモーレツに言い訳を並べる。
私「そんなのどうでもいいから、今日中にどうにかしないと私たちの○百万円がパーになる! 家も買えなくなる! どうにかしてよっ!」
ソリシター「今すぐ書類を書きかえて銀行に送るから、アナタたちは銀行にすぐに行き、新しい書類にサインをして。今日中にやれば間に合うからっ! 急いで!」
契約者は旦那と私の連名なので、2人で銀行に行ってサインをしないと書類は無効です。すぐに会社にいる旦那に電話するも、会議中なので電話に出ない…(涙)。
時間稼ぎもかねて事情を説明しようとに銀行に電話をすると、別の担当者が「え? 明日が購入完了予定? 残念だけどもう間に合わない。お金も返ってきませんね」と非情な回答。
崩れ落ちそうになるのを必死にこらえて再度ソリシターに電話すると「もう申請書は銀行に送ったから! とにかく銀行に行きなさい! 大丈夫だから!」と叫ぶソリシター。
やっと捕まった旦那に事情を説明すると、「す、すぐ会社を出て銀行に行く! でも困ったことに、今日電車が止まってるんだよ…」
ガーーーン!!!
この時点ですでに13時。銀行は17時に閉まる。つまり遅くとも16時すぎには銀行に滑り込み、手続きを17時までに終えなければアウトです。
しかし旦那の会社はロンドン郊外にあり、電車が通常運行していても銀行までは1時間半は掛かる距離。
残り時間3時間。ま、間に合うか?
■走れ、ダンナ!
この日は早朝に電車事故があり、旦那が通常使っている路線が全面停止。午後になっても復旧していませんでした。
すぐに会社を出たものの、運休の影響でタクシーがなかなかつかまらない。そしてロンドン中心部に近くなるにつれ、道路は大渋滞…。
15時前には銀行に到着し、ドキドキしながら待つ私。担当者に訳を話し、出来る手続きからでも先に始めてもらおうと半泣き状態で懇願するも、「2人揃ってからじゃなきゃ、手続きを始められない」「16時15分までに手続きを開始できなかったら、本日の受付はできない」と取り合ってくれない。
あとはもう神様に祈るのみ! 神様、助けて!
16時過ぎてもまだ到着しない旦那。その頃、タクシーを乗り捨て、運行している地下鉄にとび乗っていた。
16時05分…
16時10分…
すでに私は思考停止状態。ぼんやりと立ちつくし、「あともう少しで○百万円が消えてしまうのか…」とつぶやくぐらいしかできません。
その時!
向こうからスゴい形相で走ってくる日本人男性が1名。駅を出て、銀行まで猛ダッシュで旦那が走ってきた!
私はすかさず銀行の中に入り、担当者を捕まえて「旦那来たからっ! すぐ手続きはじめて!」と詰め寄り、かなり強引に打ち合わせブースに引っ張っていく。
旦那が着席したのは16時14分。1分遅かったらアウトでした。
そこからの45分も戦いでした。やる気のない担当者相手に何とか手続きを進め、銀行のシャッターが閉まる直前に手続き終了。
「間に合った…?(かもしれない)」
嵐のような6時間。しかし書類が本当に通過したのかは、明日にならなくては分かりません。その晩は生きた心地がしませんでした。
翌朝10時。ソリシターから「おめでとう。契約完了を確認しました」との電話が。
よ、よかった・・・・!(涙)
ホッとした次の瞬間、「ね、ちゃんと間に合ったでしょ?(ウフッ)」と笑いながら言われたときは、あまりの怒りでカッと目が見開き、目の前にメラメラと炎が燃え立つのが見えました。
何はともあれ1年4カ月の苦闘の末、やっと家が買えました。これでやっと落ち着ける! はずでした。しかし戦いは終わらなかったのです…。
次回では、やっと買ったマイホームに潜んでいた‟仰天事実"が明らかに。戦いは続きます。