【ロンドンで家を買う1】居座りカップルとの戦い

海外暮らしは楽じゃない!英国マイホーム購入「トホホ」顛末記

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イギリス在住10数年の著者が、いざロンドンで家を買うことに。しかしこれが想像を絶する大変さ…! 海外生活の厳しい現実を乗り越え、マイホームを手にすることはできるのか? これは「ガイジン」としてイギリスに暮らす日本人夫婦の、汗と涙と怒り、もはや笑い?にまみれた戦いの記録です。(連載6回)

家を買おうと思い立ったのは2014年の3月。きっかけは住んでいた賃貸フラット(=日本で言う「マンション」)が売却されることになったからでした。

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不動産屋から「大家さんがこのフラットを売却することに決めました。なのでこれからたびたび内覧の人が来ます。そして、近い将来、『退去勧告』を出すことになります」とのお知らせがあったのです。

となると、賃貸住宅に居住している人なら一度は考えたであろうことが頭をよぎります。「今後家賃を払い続けるのなら、いっそのこと家を買ったほうがいいのではないか…?

イギリスの住宅事情については次回詳しく書きますが、イギリスは20代で1軒目の家を買う人が多いんです。この国の住人としてはむしろ遅すぎるぐらいの年齢の私たちなのですが、「イギリスで家を買うのは大変よ~」と友人たちから散々脅されていたので、なかなか決断できずにおりました。

しばらくはイギリスで働き&生活していく予定のワタクシと旦那(←日本人会社員)。いつかは家を買ったほうが(たぶん)いい。

だとしたら…「面倒なことはすぐにやってサッサと終わらたい」と考えるせっかちな妻と「大抵のことは"時の流れに身をまかせたい"」と考える旦那で構成されているケーソツな夫婦は「思い切るなら今なのかも!」と同じ結論に達しました。そして「お知らせ」があったその日のうちに「んじゃ、家を買うか!」と決めたのです。

あっという間の決断でした。

今考えればこの日が長~い戦いの始まりでした…(涙)

■「運命の家」との出会い

とはいえ、最初は"まあまあ"順調だったんです。

まずは銀行に住宅ローンの相談に行き、並行して情報を集めました。予算とエリアを決めて本格的に不動産屋を周りはじめたのは5月ごろなのですが、探し初めて約1カ月、わりとすぐに「運命の家」が現れたのです。

ロンドン南部、韓国人が多く住んでいるエリアの3階建てフラットの2階の2寝室フラット(リビング、キッチン、バストイレ、2寝室)。もっとも大事なポイント「旦那の通勤圏内」と「予算」をクリアしているだけでなく、

2寝室フラットとしてはびっくりするぐらい広い(80平方メートル強)!

②駅近

③駐車場付き

④日当たり良好

⑤バスルームが2つある

⑥買い物便利(韓国人街なのでアジア食材が安くて豊富)

す~ば~ら~し~~~~~~!

そっけない外観&内観はまったく素敵ではないものの、条件ほぼ理想どおり。

一目で気に入り、その場で不動産屋さんに「買います!買います!」とやや前のめりでオファー(購入申し込み)を出しました。

欧州最大の韓国人街。駅前通りにはハングルの看板も多く、韓国料理店が軒を連ねています。

そこそこ人気の物件だったらしく私たちは3番手だったのですが、1番手2番手がローン組みに失敗した様子で(←イギリスではよくあります)、1カ月後に私たちのオファーが受諾→「売却合意(Sales Agreed)」となりました。「やっぱり『運命の家』だったのね~」と改めて確信。この時点で7月です。

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ここからは面倒極まりない書類手続きを開始しました。銀行とローンの本契約を進めつつ、売り手と買い手、双方が不動産専門の「ソリシター(事務弁護士。日本で言う司法書士的役割)」を雇い、代理人を通じて契約書を作成していきます。

この手続きのために旦那は会社を何日も休まなくてはならず、全然仕事を進めてくれないソリシターに100回ぐらい電話をして催促の毎日。しかも夏休みシーズンに入ったこともあり、一時は書類作業が完全に止まってしまいました。「ああ、これがみんなの言う『イギリスで家を買うって大変よ』なのか~!」と、思っていたのですが…。

いえいえ、こんなの序の口でした。

本物の爆弾はこの後に投下されたのです。

「運命の家」の近くにある交差点で。実はこの写真に、「運命の家」が小さく写っております。

■居座りカップルの「宣戦布告」

双方のの書類が出来上がったのは9月(長かった…)。さあやっと家の売主(イギリス人A氏)が賃借人(家賃を支払って家を借りている人)に「売却が決まったので、2カ月以内に出ていってください」という退去通告する段階に進みます。

この物件は空き家ではなく、当時賃借人が住んでいました。私たちが住んでいるフラットと同様、オーナー(売主)が賃貸物件として人に貸し、家賃収入を得ていたわけです。

ここからのプロセスは、

2カ月以内に賃借人が出て行く

仮契約をする

↓(約10日後)

本契約成立時が引き渡し日

あと3カ月ぐらい、遅くとも年内には新居に引っ越せる!、と思っていました。

時を同じくして、私たちの住んでいた家の退去期限がやってきました。本来は退去と同時に新居に引っ越したかったのですが、書類準備に3カ月もかかってしまったので仕方なし。「年内」という期限付きで友人宅に空いていた1部屋を短期間借りて「運命の家」に入居できる日まで待つことにしました。ほとんどの荷物をレンタル倉庫に預け、身のまわりのものだけ持っての「仮住まい」です。

……ところがです。

「運命の家」の現在の賃借人に退去勧告を出したことを伝える不動産屋からのメールに、意味深なメッセージがついてきたのです。

「今日売主A氏が賃借人夫妻に退去勧告をしました。勧告して分かったことなのですが、彼らはここ数年失業しており行政区から住宅手当をもらっていたようです。今後の彼らがいつ出て行くのかこまめにチェック、催促します」

???

こまめにチェックし」って…なに? なぜ?

私たちが退去勧告を受けてサッサと引っ越したように、賃借人は引っ越すものなんじゃないの!? だって、私たち資料もお金だって準備したのに…?

実際、賃借人夫妻が失業していること、住宅手当をもらっていることと私たちがあのフラットを買うことと何の関係があるのでしょうか?

困った私たちは、ロンドンで長く不動産業を営む日本人B夫妻に相談してみました。

B夫人「ハナコさん、あなた、運が悪いわ。マズいのをつかんじゃったわね…

つまりこういうことなのです。

賃借人夫妻は、失業後に行政区(カウンシル)に申請し、住宅手当をもらっていたのです。手当があったため家賃は滞らず、大家であるA氏も不動産屋もこの事実を退去勧告するまで知りませんでした。住宅手当は「現在住んでいる家」に対して支給されるため、引っ越すことになったら支給は終わってしまいます。もし引っ越し先でも住宅手当の受給を希望する場合は、、彼らは新居に移った後に再度大変な申請作業をし直さねばなりません。

イギリスは弱者に優しい面もありますが、住宅手当の支給までには膨大な手続きと時間がかかったはず。賃借人夫妻がせっかくもらっている住宅手当を手放したいはずがありません! つまり彼らは不動産屋に"簡単に出て行かないよ=宣戦布告"し、私たちには「ざ、残念だけど、これは長丁場になるよ」と伝えてきたわけです。

がーーーーーん!!!!

この賃借人夫妻(たぶん50代)には内覧のときに会っています。私たちが内覧している約10分間、ソファーに座って黙ってモリモリと山盛りのピスタチオを食べていた「居座りカップル」。

彼らの宣戦布告にはビビったものの、それでもこの家は彼らの家ではないので一生住めるわけではありません。それに退去通告期限後に住み続けるのは違法です。

退去期限まで2カ月あるのだし、彼らも今後のことを考えて何とかするだろう…。「買いたい」私たち、「売りたい」売主A氏、「売れなかったコミッションが一銭も入らない」不動産屋、皆そう願いました。

2カ月間、苦しい思いで待ちましたが、退去期限を過ぎても居座りカップルは動きませんでした。「居座れるだけ居座ろう」と、ちょっとやそっとのことで引っ越す気なんてない様子。

この辺の感覚はたぶん日本人には分かりづらいと思いますが、決まりやルールを守る、人に迷惑をかけない、そういう"当たり前の常識がまったく通じない人"が世の中にはたくさんいることを、私は長い海外生活で学びました。そして自分の都合を優先してゴリ押しすると、それが通ってしまうこともたくさんあるのです。人生でいちばん大きな買い物だけに、 こんな事態に遭遇することなくスッとコトが進んでほしかったのに…!(涙)

退去勧告期間がすぎたため、売主A氏も不動産屋も毎日のように「いつ出て行くのか?」と催促し、近所に住む居座りカップルの両親まで呼び出して解決を試みたのですが、それでも微動だにせず悠然とかまえている2人。

そうこうしているうちに、私たちの仮住まいの期限(年末)が近づいてきました。

いくら「不動産購入1年生」の私たちでも、敵の手ごわさとコトの重大さに気づいています。「もうこの家を諦めて、別の家を探そうか…?」

しかし(今考えると)おバカな私たちは、もう1度だけ希望をつなぐことにしました。それは売主A氏が「裁判所に訴える」ことを決めたからなのです…。次回へつづく。

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