1930年以降、精神的な健康問題を訴える若者の数が右肩上がりとなっているそうです。特に1980~2000年代前半に生まれた「ミレニアル世代」と呼ばれる層が深刻なのだとか。

過去5年間に渡って大学生を対象に行われた調査では、彼らがこれまでになく疲労感不安感、そして孤独感に苛まれているという結果が。UCLA高等教育研究所が2011年に行った調査によると、自己採点によって出された大学1年生らの心理的健康状態の数値は、1985年の調査開始以来、過去最低をマークしたとのこと。

一体、ミレニアル世代の若者の心に何が起きているのでしょうか。

そのストレスの原因として推測される5つの問題を、コスモポリタン アメリカ版が分析しました。

1.過保護な親

ベビーブーム世代の親たちは、我が子の一挙手一投足をチェックし、放課後のスケジュールを習い事でいっぱいにし、いじめに遭ったら助けに入ることによって、その子たちの"可能性を広げる"と考えていました。しかし、全米不安抑うつ協会、次期会長のカレン・キャシディ教授は、「親が良かれと思ってしていたことで、ミレニアル世代の若者たちは、困難やストレス、苛立ちなどの壁にぶち当たった際、かえってもがくことになってしまいました」と言います。

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「親や教師が子どもの苦しみを軽減するためにと、早い段階で手を出しすぎた結果、若者たちは"忍耐"を学ぶことができなくなってしまったのです。失敗や不都合に対する問題解決の方法を身につける代わりに、今の20代の子たちは、自分以外の誰かが助けてくれる/なんとかしてくれるものだと思うようになってしまいました。その結果として、彼らはいざ困難に直面したとき、無力感を感じたり、外的援助なしに自力で立ち向かうことに自信が持てなくなったりしてしまうのです。最悪の場合、不安障害や抑うつのリスクを高め、薬物乱用過食症危険なセックス自傷行為などによる自己破壊行動へと繋がりかねません」

対策の取り方

逃げれば逃げるほど、問題は追いかけてくるもの。しかし、面と向かって問題に立ち向かっていくと、不思議と恐怖心は薄れていくのだとか。心理学者はこれを"達成感の確立"と呼び、困難な状況でも乗り越えていく経験をすればするほど、自分自身の力に自信が持てるようになっていくそうです。

"達成感の確立"のためには、日々の生活の中で新しいことに挑戦してみること。ヨガ教室に参加してみる、食わず嫌いしていたものを食べてみる、メールが来ても即返信したくなる衝動を抑えてみる、といった小さなことから始めてみましょう。

2.小さなことを大惨事のように捉える

困難を乗り越えるトレーニングを十分にできていないだけでなく、ミレニアル世代は小さな問題にさえ大騒ぎしてしまう傾向がある、とキャシディ教授は話します。確かにストレスは多くの調査で、精神的や身体的不調に影響するとみられています。だからといって、不安や怒りなどをことごとく回避し続けることが最善とも限りません(あえて不安に向き合うことが、精神状態の安定に繋がる場合もあると、一部の調査が示しています)。

「個人的な悩みや、職場での状況、学力に関する問題などに関して、"ネガティブになってはいけない"と思うことは、逆に感情的な落ち込みを助長してしまいます」とキャシディ教授。「締め切り間近で焦ったときや、失恋のショックで苦しいとき、不幸が起きたときなどでさえも、"ストレスを感じてはいけない"と思っている人がいたとしたら…。悲しいときに沸きあがるごく自然な感情すら、彼らにとっては"落伍者"の証明になってしまいかねないのです」

対策の取り方

感情を上手くコントロールすることにより、ストレスへの耐久性も身につくのだとか。キャシディ教授によると、ネガティブな感情も日常の一部として受け入れられるように訓練を重ね、ストレスそのものを"充実な人生を送っている証拠"だと思えるようになれば、何事も乗り越えられるように感じるそう。

3.褒められないとダメだと思い込む

"自尊心を高めること"にとにかく執着していた教育者や精神医学の専門家、また親たちに育てられたのがミレニアル世代。動機は間違ってはいないものの、子どもたちの"エゴ"を膨らませすぎたのは、残念ながら失敗だったといえるかもしれません。

1980~1990年代に生まれた人たちは、比較的ナルシストである傾向が高いそうです。常に褒められ続けてきた人は、逆に褒められなくなると、それまでの原動力となっていた"肯定的な評価"を失うことを恐れるようになるのだと、キャシディ教授は言います。つまり、その未知なる恐れから不安がどんどん募るのです。

また、称賛されることに慣れてしまった人は、周りから褒められなくなると、"自分は(その分野に)向いていない"という極端な結論に行きついてしまうケースもよくあるのだとか。

対策の取り方

褒められること自体は悪いことではありませんが、周囲の人の評価のみから自分自身の存在価値を見出すことはやめにしましょう。皮肉にも、自己評価の良し悪しに関わらず、何かに打ち込むことが自尊心を高める結果に繋がると示す調査結果もあるようです(また、時には自分を"哀れむこと"も悪くないのだとか)。

4.社会とつながる手段が多過ぎる

スマホ、SNS、その他あらゆるアプリは、いまだかつてない "つながり"を人々にもたらしました。しかし、これらの機能は逆にさらなる"孤独感"を人々の中に生み出し、孤独に対する耐性をはぐくむために本来必要な"1人の時間"を奪い取ってしまったようです。

例えば、ひっきりなしに鳴り続けるスマホはストレスを助長するそうです。加えて、友人のFacebookアルバムを見たり、Instagramのアカウントをチェックしたりすればするほど、彼らが写真そのままの"幸せな人生"を送っていると思い込んでしまう、とキャシディ教授は解説します。ネット上で繰り広げられる友人たちの"華やかな生活"と、満たされない自分の生活とを比べ、"惨めな思い"を募らせてしまうのです。

SNSや、友人とのチャットのやりとりへの依存こそが、気分の落ち込みを生む原因であるという調査結果が出ているにも関わらず、ミレニアル世代はまだなおテクノロジーに頼り、その寂しさを紛らわせているのです。

「精神的な健康状態を保つため、人には面と向かった直接的な交流が必要です。デバイス上での交流はジャンクフードのようなものです。その一瞬はおいしくても、長い目で見たときに体に必要な栄養は補ってくれません」と、現代の若者の傾向を綴った著書『Generation Me(原題)』の著者、ジーン・トウェンギ教授は話します。

対策の取り方

友人には、メールの代わりに積極的に電話をしましょう。お茶をする約束をとりつけたり、遊びに行って一緒に楽しいことをするのもおすすめです。

また、一度SNSアカウントの受信機能をオフにしてみては? 仕事上必要がない限り、1日に何度もメールをチェックするのも我慢してみましょう。ある調査によると、"メールチェックは1日3回まで"と制限された人たちの方が、1日中メールを確認していた人たちと比べて"著しくストレス値が低下した"のだとか。

5.期待が高すぎる

調査によると、親世代と比べミレニアル世代の子どもたちは、自身のキャリアや人間関係の"こうあるべき姿"に対して、非常に高い期待を抱いているとのこと。そのため、1)その高い目標達成のためにどれだけの努力が必要か、2)それだけの努力をしたとしても、期待していたほどのステータスや給料、パートナーを手に入れられるわけではない、ということに気づいたときに強い失望感を抱くそうです。また、現代の20代の若者は、富や名誉などの"物質的成功"に重きを置く、とキャシディ教授は話します。

"幸福"を人生の主要目的に挙げているにも関わらず、周囲からの評価にとらわれ、お金を稼ぐために自分を奮い立たせ続ける人たちは、人生に対して大きな不満を抱く傾向にあると、ある調査は示しています。

「外部の価値観に振り回されやすいミレニアル世代は、(ベビーブーム世代など)他の世代と比べ、不安症やうつ状態に陥る可能性が高いのです」とトウェンギ教授は語っています。

対策の取り方

夢が達成できなくても、過度に落ち込まないこと。目標を設定し直せばいいだけの話です。また、結果よりも"どれほど努力したか"を評価することにより、高すぎる期待に打ちのめされずに済むかもしれません。

【大丈夫、世界が終わるわけじゃない】

ネガティブな感情のコントロールや不安に対する耐性、また健康的な人間関係を築くために電子機器を手放すには、ミレニアル世代はまだまだ訓練を要するかもしれません。ただ、自分が思っている以上にポテンシャルの高い人材でもあり得るのです。精神的な健康状態を保つためには、「"人間"なんだから、そのままでいいということを覚えていてほしい(つまり、失敗をしたり、不安になったり、イライラするのはごく普通のことなのだと知ること)」とキャシディ教授は話しています。

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 名和友梨香

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