もしあなたが体調を崩して病院に行き、医師から病名を伝えられて治療を行っても、まったく改善しなかったら…? きっと不安でたまらなくなるはず。

体の不調を覚え、あちこちの病院をたらい回しにされて「うつ病」と診断されていたベス・グルントフェスト・フリジェッリさんは、実は「うつ」ではなく、5000人に1人といわれる難病を患っていたことが後から判明したのだとか…。

今回はそんな彼女の体験談を、コスモポリタン アメリカ版からお届けします。

私の身体的な困難から生じた孤独感が、社会生活にも影響を及ぼしていたのです。

病状

ニューヨーク州クイーンズ在住のベスさん(32歳)は、もの心ついたときから自分の体に違和感を感じていたそうです。他の子たちが靴ひもを結んだり、シャツのボタンを締めたり、そういったシンプルな行動をいとも簡単にやりのけてしまう姿を見て、落胆していたのだとか。

「やり方が分からなかったわけではないんです。ただ、私には身体的に無理だったんです」

また、彼女は頻繁につまづくことがあったそうです。常に襲って来るめまいと関節の痛みで、真っすぐ歩くことが難しかったといいます。

12歳になった頃には、慢性的な鼻炎と思われる症状について、小児神経科や耳鼻咽喉科を含め6人の専門家の診察を受けました。しかし、医師は誰1人として彼女の症状を解明できなかったそうです。病状がますます悪化するにつれ、彼女は友達と遊ぶことも少なくなっていきました。ある医師は彼女を「アスペルガー症候群」と診断しましたが、それが確実な病名ではないことを、ベスさん本人が一番よく分かっていたといいます。「私の身体的な困難から生じた孤独感が、社会生活にも影響を及ぼしていたのです」。

13歳のときには、かかとが通常の5倍の太さに腫れ上がったことがありました。包帯を巻いて腫れを抑え、冬でもサンダルで歩かざるを得なかったベスさん。専門家医に診てもらうたびに別の先生を紹介され、リウマチ科、アレルギー科、足の専門医、スポーツ薬学医などをたらい回しにされる日々。誰もが"何かがおかしい"とは思いつつも、その原因は分からずじまいでした。"思い込み"なのではないかと言う医師も多く、最終的に精神科に行き、「うつ病」と診断され、薬を処方されました。

「(薬は)何の解決にもなりませんでした。ただ頭がぼーっとしただけです」とベスさん。

20代前半に入り、未だ病名も分からぬまま普通に働くこともできず、彼女は障害者申請をすべく書類を提出し、大きな医療検査を受けることになりました。そして、そこで初めて医師たちはとんでもない事実を目の当たりにすることになったのです。

診断

ベスさんには結合していない脊椎が後背部にあり、それによって長時間立っていると足やふくらはぎが麻痺してきてしまうということが判明しました。

また、MRIの結果、首にヘルニアのようにずれてふくらんだ椎間板があることが判明し、それによる神経の圧迫が慢性的な手の痺れの原因だったということも分かりました。でも、そもそもの原因は一体何なのか。

ベスさんは新たなリウマチ専門医に会いにブルックリンを訪れ、答えを求めてこれまでの過去(の診療内容)を洗いざらい話したそうです。彼女が症状について話し始めてから10分もしないうちに、「確実に関節リウマチではないね。エーラス・ダンロス症候群は疑ったことあるかい?」とその医師は言いました。

エーラス・ダンロス症候群(略してEDS)は、結合組織における6つの遺伝障害によって引き起こされるものだそうです。遺伝的な変異が体内でのコラーゲン(細胞組織に強度や弾力性をもたらすプロテイン)の生成や使用に問題を起こし、よくある症状として関節の緩みや関節痛などが現れるのだとか。またこの病の患者には、異常なほどやわらかい肌の持ち主が多く、ケガなどをした際の自然治癒に普通以上に時間がかかってしまうそうです。

「脆弱なプロテインで患者の体が造られていることにより、痛みや症状が体中に広がり、あらゆる箇所で問題が引き起こされる恐れのあるもの」。<エーラス・ダンロス症候群協会>は、病についてこのように解説しています。

ベスさんはもっとも典型的なIII型(関接可動亢進型)を患っていることが分かり、発症率は5000人に1人と言われているそうです。他の型は遺伝子検査で見つけることが可能だけれど、彼女が患うIII型はそれが難しいのだとか。従って診断は、医師が患者の様態と病歴を詳細に観察し、1997年に国際シンポジウムで作成された基準をもとに判断することになっているそうです。

EDSは完治はしないものの、命に関わる病気ではなく、治療法によっては症状を和らげることも可能だと彼女は教わりました。

その後

「エーラス・ダンロス症候群と診断されてから、すぐにかかと矯正器具をはめることにしたら、ものの10分で痛みが8割がた改善したように感じました。腕にはめた矯正器具も同様の効果がありました」と話す彼女。彼女の場合、常に関節が定位置からずれたり外れたりしてしまうため、矯正器具を使用することで関節を固定し、安定感のある動作を可能にしてくれるのだそう。今では矯正器具と杖の助けを借りて、普通に歩けるようになったそうです。

ただ、寿命は普通の人と変わらないとはいえ、ベスさんは関節置換手術を早い段階で受ける必要があるそうです。「見た目は若くても、関節は老いたような状態だから」と彼女は話します。「見た目は18歳くらいに見られることがあるんですけど、一方で私の体の関節(特に手や指)は85歳の人のものみたいなんです」。

弱った関節を回復させるため、EDS患者にとって理学療法は欠かせません。ベスさんはフォークやスプーンを持ったり、字を書いたりするのが難しいそうです。一段落分の文章を書くのに40分かかってしまうこともザラなんだとか。でも、そういった困難にも長く落ち込まないようにしているようです。

「私の人生において、出来ないことはたくさんあるけれど、出来ることだってもちろんたくさんあるからです」とベスさん。自称"社会&政治活動家"として、ベスさんは司法を学び、関心のある問題に対する嘆願書をまとめる活動などを行っているのだとか。今後は、人権と環境問題に特化した司法の分野で学士を取得することを予定しています。そんな彼女が、自分と同じような持病を持つ人にアドバイスを残してくれました。

「自分の思いはしっかり主張し、体の発する声を信じて耳を傾けること。病気を患っているからといって、すごいことが出来ないというわけではありません。ただ、あなたが成しえる"すごいこと"は、他の人と形が違うというだけです」

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 名和友梨香

COSMOPOLITAN US