自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

モデル/医師 佳奈さん

日本で医師免許資格を取得し、モデルとして活躍している陳さん。結婚を機に、活動ベースをN.Y.に移し、改めて医学の道を志すことを決めたという。常に目標に向かって突き進む、陳さんのひたむきな姿に迫った。

-医学部を卒業し、医師免許を取得後、モデルを本格的にスタートされたそうですが。

モデルの世界は、努力をしないと通用しないと分かっていたから、医師免許を取得する国家試験よりも、努力した

正直、受験勉強や、国家試験に向けての勉強は、自分の中で「すごく頑張った」という印象はなく、そんなに努力をしなくてもたどり着けた感覚がありました。でも、モデルの世界はそうではないと感じていたからこそ、挑戦してみたいと思ったんです。

大学に在学中から、モデルの仕事を始めていましたが、"自分に似合う色はこれ""一番美しく見える角度はここ"ということさえも考えたことがなく、自分を磨くことをしていませんでした。ファッションや美容に関しても、とても疎かった。オーディションに行くと、受かることもあれば、落ちることもあるという感じ。努力という努力をしない状態でモデルをしていて、モデルって自分が想像していたよりも難しい仕事なんだと感じました。だから、自分を磨いて、きちんと努力したら、どんな結果が出るのだろうと。モデルを本格的にやってみたいと思ったんです。

ちょうどその頃、医局を訪ねる機会があって。医局の扉を開けた瞬間に、ドクター全員が疲れていたんです。その状況を見た時に、年齢も見た目にも"若くいられる時間"は限られているのに、こんな疲れていていいのだろうかと。疑問を抱いたのがきっかけで、それに医師免許は取得しておけば、いつでも始められるとも考え、思い切ってモデルの世界で生きてみようと思いました。

実は、ひょろっとした体形がコンプレックスでもあったので、そういう体形がいかせると思ったことも後押しとなりました。

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HANAE MORI Desingned by Yu Amatsu

-本格的にモデル活動をはじめてから、陳さんの生活や気持ちに変化はありましたか?

モデルも個性が大切って言われているけど、それは後付け。あくまでも見た目が100%の世界。苦しいことはたくさん

モデルを本格的にやると決めてから、自分磨きを始めました。カラダが硬すぎてポージングが不自然だったので、ヨガやバレエをして、しなやかな筋肉をつけたり、パーソナルトレーナーをつけてみたりしたこともあります。でも、雑誌の専属モデルのオーディションに行くと「もう少し痩せないとダメ」と言われて落とされ。専属モデルをしている人は、スタイルもよくて、顔も可愛かった。さらに、私服もおしゃれ! だから、雑誌内で特集が組まれるんですよね。私は、それのどれもありませんでした。

周りのモデルさんは、10代の頃から自分を可愛く見せることに興味を持ち、研究をして努力をしていたけど、モデルを本格的に始める前まで、そういったことにまったく興味がなかった私は、どんなに努力しても、そういうモデルさんたちには、到底追いつけなかった。そこに直面した時は、本当に苦しかったです。

どんなに個性や内面が大切と言われても、それはあくまでもビジュアル面をクリアした人に与えられるもの。周りのモデルさんにはなくて、私が持ってる個性として、医師免許があったけど、モデルの世界では、スタイルがよくて、可愛いことが大前提。ビジュアル面が基準をクリアしていなかったら、私の個性は生かせないんです。本当に見た目が大切な世界なんだと思い知らされて、とても戸惑いました。

そして、努力をしても報われないこともあるってことにも気づかされました。医学部時代は、これぐらい勉強すれば試験に合格できるというのがだいたい予想できていたけど、モデルの仕事は、努力を続けていたからといっても、必ずしもオーディションに受かるわけではありません。モチベーションを保つことも大変です。

-それでも続けられたのは、なぜですか?

手が届かないと分かるぐらいの目標設定が、私をやる気にさせる原動力になっていた

モデルさんの中には、天性のものというか、モデルとしての才能を持ち合わせる人もいると思います。だけど、私は、努力をしないとモデルの仕事はできなかった。

医師として働いていたら、こんなに大変な思いをしなかったかもしれないと思うことはあります。医学部時代から、医師として働くとしたら、普通にしていれば皆と同じようにやっていけるだろうという自信があり、そんなに苦労せず出来る自分がイメージできていました。なので、この苦しさやツラさは、モデルだからこそ経験できたことだなと。まったく予測できない世界だったから続けられたというのはあると思います。

モデルを始める時に、このまま医師として働くことを選ぶか、モデルの世界に飛び込むことを選ぶか、そのふたつの世界で働いている自分をイメージしたことがあります。その時に、モデルの世界に飛び込まないと、いつか後悔する時がくると思いました。だから、オーディションに落ちても、努力を続けて挑戦し続けるしかなかった。オーディションに受かるためもあるけど、まだ理想の体型にもなれていないし、イメージ通りのポージングも取れていないと…自分が定めた目標とのすり合わせをしていたので、その目標が達成されない限り、努力する以外の選択肢はなかったんです。

-モデルの世界に飛び込んで、新たな発見はありましたか?

私は努力を続けることができる! そして、勉強することができるのも才能のひとつ
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Pauly Pariwat Pholwaises

モデル活動の中で、いろんな人に「努力家だね」と言ってもらえることが多くて。でも私の中では、「なんで私はもっと努力ができないんだろう」「憧れの体型には、まだ近づけていない」って思っていたので、自分の中では「まだまだ!」という気持ちがありました。だから、「努力家だね」という言葉が新鮮に響きました。

努力を続けることは、決して楽にできたことではなく、常にどこかで苦しいと思っている自分がいます。でも、その苦しさも、私にとっては心地いいことなのかもしれません。そんな風にどこか自分を客観的に見ていたりもして

そして、何かが起こる時は起こるし、起こらない時は起こらない。それは努力をしているか、していないかとは切り離されたところにあることというか、運とか、引き寄せとかなのかなと。シビアな世界だからこそ、冷静に、自分自身を、周りの環境を見つめて受け止めることも大切なことかなと思います。

そして、もうひとつの気づきが、キレイであれば、どんな職業をしていてもモデルとしてのオファーがあるということ。例えば、スプニツ子!さんは、現代アーティストだけど、彼女らしい美しさがあるから、ハイファッションの雑誌にモデルとして登場しています。医師として働いていても、綺麗でいられれば、モデルの仕事は出来るかもしれないと思いました。だからこそ、結婚を機にアメリカに永住することになったこともあり、もう一度アメリカで医学に挑戦しようと思えました。

実は、勉強する行為も才能だって気がついたんです。モデルの世界で出会った人の中には、「勉強自体ができない」「勉強は苦手!」と言う人がいました。だから、「机に向かって勉強するという行為も才能なんだな」って。専門用語を英語で学んでいくのは難しいですが、"勉学に励むという才能"を武器に、しっかり勉強します!

私にとってモデルは、憧れの職業であって、才能があったわけではないんです。だけど、医学の世界では自分の才能を発揮できるフィールド。モデルをしたからこそ気づけた努力家な部分も含め、N.Y.で、これからもモデルとして、医師として挑戦を続けたいです。

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医師免許を取得し、モデルとして活躍する。誰もがうらやむような環境にいても、なお、努力を続ける陳さんは、まさに自分を信じて、自分で選択をした人生を歩んでいるパワフルな女性。日本での経験を持って、N.Y.という新たな地で活躍を広げていく姿に、勇気をもらい続けたい。

【陳さんから学んだ仕事をより充実させるためのヒント】

・目標は高く設定する

・客観的に、冷静に自分を判断できる目を持つ

・何かを選択する時は、後悔するか、後悔しないかで決める

・常に挑戦者であると思う

インスタグラム: @chinkana

ブログ「Dr.モデルのハッピーNew York