パリ郊外にある12人の女性が住む新しい暮らし方、生き方を形にした家、「La Super Nana House(ラ・スーパーナナ・ハウス)」に潜入!
パリ郊外にある12人の女性が住む新しい暮らし方、生き方を形にした家、「La Super Nana House(ラ・スーパーナナ・ハウス)」。コンセプトは「CoLiving(コリビング)」で、共同生活をしながら、コワーキングスペースも備えている。キャリアアップをしながら、女性として自分を高めていく…そんなことを目的にして作られた家だ。
入居条件はたったひとつ、「個人の夢やプロジェクトを持って、前に進んでいる」こと。いったいどんな家で、どんな人が暮らしているの?ということで、潜入レポートをお届け!
パリから30分の閑静な住宅地。コワーキングスペース+共同生活
パリから電車で30分の町、バニュー。閑静な住宅地には教会の鐘が鳴り響き、おとぎ話に出てきそうな可愛らしい庭付き一戸建てが並びます。
そんな小さな町の中に佇む一軒家が今回の取材先「La Super Nana House」。緑溢れる1000平方メートルの庭に囲まれた家には、4つの部屋、コワーキングスペース、リビング、浴室が2つ。家賃600ユーロ(約7万9千円)には、インターネット、電気・ガス代、清掃費がすべて含まれているという。そして、家の中は、キュートなデコレーションが施され、そのDIY感がなんともオシャレな雰囲気だ。
この家の持ち主は子どもを連れて1年間、世界一周旅行中。その期間、「La Super Nana House」の創設者がこの家を借り、「コリビング」のコンセプトを実施しているそう。
「La Super Nana House」で暮らす12人の女子
ここで暮らすのは、20代~30代の12人の女性。起業家のフランス人、政治を勉強する留学生のオランダ人、ブラジル人、デンマーク人の学生、難民問題を教育機関で研究するリサーチャー、世界一周旅行に出かける計画中の20代、将来の方向性を考えながら人生の休憩時間を過ごす30代など、年齢も職業も様々。
学生のブランシュは、ここで暮らし始めてから人生に変化があったそう。
「この家ではみんなが"夢"に向かうよう応援し、"行動"するように背中を押してくれるの。私の本当の夢はタトゥーアーティスト。正直諦めていたんだけど、みんなが実際にタトゥーアーティストを紹介してくれたり、デザインのデッサンをするよう励ましてくれ、今は本格的に夢を追う決心をしたの!」
一方、30代のオードリーは、「ここは、私の家。パリで暮らしていた時は孤独を感じていました。でもここは自然に囲まれ、みんなと心を通わせて生きることができる」と、ソファで寛ぎながら和やかに話してくれた。
みんなで「キャリアアップ」!
コワーキングスペース以外にも、ワークショップやイベントも開催される。全員の要望をまとめて、スタートアップした起業家を招いてスキルを教えてもらったり、フリーランスで働く人たちに1日コワーキングスペースを開放したりもするそう。
また、暮らしている女子同士でもレクチャーやディスカッションを定期的に行うんだとか。「みんな、なにか自分が情熱のあるものや得意なものを持っている。それを追及して、ワークショップを開いてもらうの。WEBサイトの作り方、ヨガ、哲学…。それに、テーマを決めてディスカッションもよくするわ。たとえば、この間話したのは『女性がパワフルに社会で生きるために』という話題。みんなでワインを飲みながら、何時間も延々と、女性、男性の役割とは? 女性らしいって何?という深い会話をしたわ」と、「La Super Nana House」創設者のセルヴィナが話してくれた。
素敵な女性になるために! 毎週の自己啓発ミーティング
毎週水曜日に開かれるミーティングがあるのもこの家の特徴。それぞれの1週間の私生活と仕事を振り返って、「今週は何を達成した?」「新しいゴールは?」という内容を1人ずつ話し、それに対してどうやってみんなで助け合えるかを話し合う。この家で暮らす大切なルールが、オープンなコミュニケーション。お互いの向上のため本音を隠さずに、正直な意見を述べ合うのだ。そこで交わされる会話は、「本を書きたい」「NGOを建てたい」「『ノー』と言えない性格を直したい」などさまざま。
現在人生の休暇中のオードリーは、そんなコミュニケーションを通して人生を模索中だそう。
「今は、どんな生き方をするか考えてるところ。定職を持って毎日パリで働くか、"自由"を大切に、時々アルバイトをしながら生きていくか。人生という大きなスケールの中で考えると"働く"方法は、いろんな種類があると思うから。みんなから刺激を受けて、思考を巡らしているわ」
23歳のプロジェクト創始者が考える「コリビング」とは?
セルヴィナさん/「La Super Nana House」創設者
「以前、サンフランシスコで起業家が共同生活する家で暮らしたの。みんな似た価値観を持っているけど、それぞれ個性豊かなプロジェクトを抱えている。そんな環境で暮らしたことが、私をすごく高めてくれて。そこで気付いたのが、周囲にいる人が、いかに自分の人生の方向に影響を与えるかということ。それで、『La Super Nana House』のアイデアを思いついたの。はじめは起業家だけを対象にしようかと思ったけど、学びは異なるタイプの人たちから生じるもの。いろんなシチュエーションの女性たちが刺激し合えて、自分を高めることができる場所にしようと考えたの」
本音が言えて、夢に向かって背中を押してくれる人がいて、心が温かく感じる「家」という場所。個人主義が蔓延する今だからこそ、人と人とのつながりを大切にしながら"自分が成長できる共同生活"は、時代とマッチした生き方が実現できる場所なのかもしれませんね。