【ロンドンでのお仕事②】ヘアサロン経営ウェストまりさん

私の武器は「日本!」。ユニークな職業で活躍する日本人女性たち in ロンドン

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「日本人が海外で働く」と聞くと、駐在員や現地企業での就職などをイメージする人は多いはず。しかし実際には幅広い分野で日本人が働き、活躍しています。

この連載で紹介するのは「日本人であること」を武器に、英国ロンドンで生き生きと働く魅力的な女性たち。起業した人、お店や部門の立ち上げに参画した人などさまざまですが、日本人としての良さを生かしつつ、ローカルに根ざしたビジネスで働いています。「イギリスで生きていく」と決意し、地に足をつけてたくましく輝く女性たち。彼女たちがここに至るまでの道、これからの展望を伺いました!(連載4回)

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ロンドンでヘアサロンを経営する ウェストまりさん

ロンドン中心部から北へ地下鉄で約10分。フィンチャリー・ロード駅から徒歩1分、ロンドン有数の高級住宅街に囲まれた絶好のロケーションでヘアサロン「ESTA HAIR(エスタヘア)」を経営するウェストまりさん。

日本で美容師として働いた後、2004年にロンドンへ。自宅でのプライベートサロン経営を皮切りに少しずつステップアップを重ね、2011年の秋に念願だった路面店をオープンしました。

さまざまな人種・民族が共存している国際都市(コスモポリタン)ロンドンですが、外国人女性が1人でお店を立上げ、切り盛りするのはそう簡単なことではないはず。そんな質問を投げてみたものの、まりさんは「全部何とか切り抜けてます~!(笑)」と明るく語り、こちらが拍子抜けしたほど。

今年赤ちゃんが誕生し、ママになったばかり。美容師、経営者、そして母として日々忙しく活動するまりさんにお話を伺いました。

―ロンドンに来たきっかけは?

高校卒業後に美容専門学校で学び、名古屋市のサロンで美容師をしていました。数年働いた後1年間オーストラリアにワーキングホリデーに行き、そこで現在のイギリス人の夫と出会いました。すぐに「一生一緒にいるんだろうな」と感じましたが、「この人が自分の国で普通に働き、暮らしているところも見てみたい」と思ったんです。ワーホリが終了したあと1度日本に帰り、26歳のときに語学学生としてロンドンに来ました。

ロンドンにはもともと憧れがあったんです。美容学校の研修旅行で初めてロンドンに来たとき、ファッションとヘアメイクの本場の息吹を感じ「いつかまたロンドンに戻ってきたい。働いてみたい」と強く思いました。きっと縁があったんですね。

【ショーモデルをしながら、チャンスを待った日々】

ロンドンに来た当時は「美容師」というより、ファッション撮影などのヘアメイクアップ・アーティストの仕事をしたかったんです。学生をしながら仕事を探したんですが全然なくて。知り合い経由で細々とお仕事している程度でした。

そこでファッションの現場の近くに行ってチャンスを待とうと、ショーモデルの仕事をはじめました。身長が高くて(173センチ)アジア顔のモデルは少ないので、オーディションに行くと大体受かるんですよ。ロンドンファッションウィークのキャットウォークなど、大小さまざまなショーに出ました。ショーにでるときにヘアメイクしてもらいますよね、そのときに担当してくださる方に直接「私もヘアメイクできます」と売り込んだんです。でも仕事は全然来なかった(笑)。

雑誌に掲載された、まりさんのキャットウォーク写真。

そうこうしているうちにロンドンに来て1年たち、学生ビザが切れるタイミングで夫と結婚しました。

今考えるとあの時代は私の"迷走期"でした

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―結婚後に美容師のお仕事を始めた?

いえ、まだなんですよ(笑)。結婚後、学校に通ってホリスティック(全身)マッサージの資格(ITEC)を取得し、結婚の翌年には1人で3カ月ほどインドへ行って、アユールヴェーダ式オイルマッサージの勉強もしました。

今考えるとあの時代は私の"迷走期"でした。ヘアメイクの仕事も鳴かず飛ばずだし、美容師以外のこともやってみたいという気持ちがあったので気持ちがマッサージの方に行っていた。でもインドから戻って、自分のやりたい方向がはっきり分かりました。マッサージも大好きだけど、やはり私は美容師なんだなと。

リラックスした雰囲気の中でカット。

そもそも美容師を志したのは高校1年生のころです。子どものときからアートやデザインに興味があり、ちゃんと資格がとれて、一生働けて、しかもアーティスティックな仕事として美容師がいいな、と思ったんです。

髪は人それぞれまったく異なります。その都度考えて新しくスタイルを作りあげるので、美容師の仕事は毎日同じことがなくセンスがすごく問われるんです。そういうクリエイティブな仕事が私は好きなんだと再確認しました。

【プライベートサロンを始めたころ】

インドから戻り、私1人だけでまわす「完全予約制のプライベートサロン」を自宅で始めました。ロンドンで発行されている日本語フリーペーパーに広告を掲載し、連絡をくださったお客様に自宅に来ていただくシステムです。そこでお客さんがわ~っとついたんです。約2年間そのスタイルで営業していましたが、2008年に自宅を引っ越しをして、"家"ではなくて‟ナロ―ボート"で暮らすことになりました。ボートではスペース的にお客様に来ていただくのが難しかったので、ロンドン中心部のビルの中にスタジオ借り、仕事場を移しました。

Double rainbow #doublerainbow #rainbow

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↑ナロ―ボートとは、運河に停泊して人が居住するための‟細長い(ナロー)ボート"のこと。手前に住んでいたそう。

新しいサロンはピカデリーサーカス駅のすぐ近く、というロンドンのまさにど真ん中の立地でした。私1人体制のスタイルは以前どおりですが、広い部屋だったので以前から少しずつ始めていたヘアメイクの仕事を拡大しました。部屋の一角を「フォトスタジオ」にし、打ち合わせ、ヘアメイク、そして写真撮影ができるスペースにしたんです。ウェディングやファミリーポートレートなど、さまざまな記念写真の撮影の仕事をいただきました。

ここで約3年間頑張りました。立地は最高でしたが、スペースにはいろいろ不満もあり、スタジオの契約更新を機にお店を出したい、路面店を出したいと思ったんです。

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【次のステップに進みたい:路面店オープンへ】

―路面店を出すのは大きな決意だったのでは?

そうですね。でも「次のステップに進みたい」という気持ちが大きかったんです。物件を探しはじめると割とあっさり、元が美容室だった今のお店が見つかりました。オーナーがリタイアしたいので売りたいと。「ラッキ~!」と思ったんですが、そこからの契約は‟超"大変でした(笑)。

イギリスは日本と店舗の賃貸のシステムが異なります。ビルの1階にある路面の1室を借りるので「物件を買う」のではないのですが、スペース賃貸料だけでなく「このスペースを借りてビジネスを営業する権利(リース)」も弁護士を通して年単位で買うという複雑な仕組みがあるんです。このリースの購入が大変でした。

仲介している不動産エージェントが本当にひどかった! 外国人女性1人だとなめられたのか、話した内容と違う条件が契約書に書かれたり、条件がコロコロ変わったりしてしまう。イギリスではよくあることですが、あまりに頭にきて毎日「もう(路面店出すの)やめようか」と思ったほど。最後の最後まで「この契約、ちゃんと終われるの?」と思ってましたよ(笑)。

数カ月の格闘の末、2011年秋に「ESTA HAIR」をオープンしました。あまりにいろんなことがあったので、「いよいよ開店!」という実感はあまりなかったです。

ESTA HAIRの外観。看板に日本語をつけたことで、日本人には入りやすく、また日本のスタイルに興味のある人が立ちどまってくれる。

―「ESTA HAIR」を開店して、変化したことは?

ずっと1人でやってきたのですがお店になったことでスタッフを雇用し、お店の維持費も上がります。その分たくさんのお客様にも来ていただかなくてはならない。お店を丸ごと支えなくてはならないので、私の仕事の量もドンと増え、業務も複雑になりました。

でもありがたいことに場所が移動してもお客様がついてきてくださったし、路面店になったことで地元に住むお客様、口コミの方、ブログやサイトを見てくださったお客様が増えました。

アンティークマーケットで購入した家具をあしらい、ヴィンテージスタイルでまとめた店内。

お客様の7割は日本人、3割はイギリス人など非日本人の方です。特に「日本人をターゲットにしている」わけではないのですが、日本人のお客様は予約を早めにしてくださるのでどうしてもそうなってしまいます。イギリス人は先々の予定を決めたがらない方が多いので、その日の朝とかにお電話くださるんですが、もう埋まってしまっていることが多いんです。

イギリスにも良いサロンはたくさんありますが、日本人とイギリス人が好むスタイルは違うんです。日本人から「ふわゆる」感やシャギーを入れて髪を遊ばせるなどの繊細さを求められますが、イギリス人は「セクシー」や「インテリジェンス」なスタイルを好みます。当店に来てくださるお客様は、外国人であっても日本のファッションやスタイルに興味がある人たち。ですから「日本人ならではの感性」で作り上げるヘアを期待されていることが多い気がします。

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Photo shooting!

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↑店内で撮影中。

そんなお客様の気持ちに応えられるよう、日本の美容師が持つ高度な技術を提供しています。また接客も重要なポイントです。丁寧なシャンプー、疲れをとっていただくマッサージ、飲んでいただくおいしいお茶など、「おもてなしの心」も大切にし、サロンで過ごす時間を楽しんでいただきたいと思っています。

【スタッフにもロンドン生活を楽しんでほしい】

2月に出産したばかりと伺いましたが。

そうなんです。一昨年家を買い、ナロ―ボートから‟地上"の生活に戻りました。家も落ち着いたので「子どものいる人生も楽しいかな」と思うようになったころ妊娠しました。

産休を取ることも、復帰後の仕事と子育てのやりくりも不安はなかったです。信頼できるスタッフがいてくれるので安心して産休も取れました。出産後は1カ月で週1回から復帰し、今は週4回出勤しています。

ご主人のダンさんと息子のエンゾ君。

スタッフの半分はワーホリで来ている日本人ですが、ウチはスタッフの入れ替わりが少ない方だと思います。新規募集をすると日本から履歴書を送ってくる方もいて毎回たくさん応募があります。履歴書で絞って面接に来てもらうのですが、採用するかしないかはその人が(お店の)ドアから入って来たときにはもう決まっているかも。技術も大切、でも一緒に働く大切なスタッフに求めるものはそれだけじゃないですよね。そんな思いで働いてもらっているスタッフなので、仕事だけではなくてロンドンでの暮らしも存分に楽しんでほしいんです。なので有休もしっかり取ってもらえて、お給料もスタッフが頑張った分、きちんと払いたいと思っています。

―サロン経営とママ業、両立は大変では?

う~ん、そうでもないです(笑)。私は毎日ここでたくさんのお客様に幸せな気持ちになってもらうための仕事をしてるので、ベビー1人をハッピーにするのも同じことなんです。イギリスに来てから家の購入やこのお店の契約など、大変なことを乗り越えたんで度胸もつきましたよ(笑)。「最後には絶対何とかなるし」って思ってますし、実際いつも何とかなってきましたから。

「ダンナは写真が下手なので、母&息子写真がほとんどない」とまりさん。貴重な家族写真はベビー初のエキシビション体験! おしゃれな家族です。

【‟楽しく"働き、生きていきたい】

お店がオープンして5年たちました。今後これまでの業務に加え、ヘッドスパなどのヘアカット以外のメニューもより充実させていく予定です。またファッション撮影用ヘアメイクの仕事も今後もっとやっていきたいなと思っています。

ファッション撮影のためのヘアメイク中。

10月にはイスやシャンプー台などを入れ替えるための改装をします。より居心地の良いスペースになる予定なので、すごく楽しみにしています。

ママになって忙しくはなりましたが、息子には外国人である母がロンドンで楽しく働く姿を見てほしい。外で働くこと、家族が協力して家事をすること、生きることって楽しいんだなって感じて育ってほしい。美容師の仕事が大好きなので、これからも仕事、家事、子育て、すべて‟全力"で‟楽しく"やっていきたいです。

ウェストまりさん:

愛知県名古屋市出身。美容学校を卒業後、美容師として名古屋市内のサロンに勤務。オーストラリアでワーキングホリデーを経験後、2004年に来英。2006年に自宅でプライベートサロンを始め、2011年に路面店「ESTA HAIR」をオープン。イギリス人の夫、2016年に誕生した息子と3人でロンドン北西部に在住。

ESTA HAIR サイト

まりさんブログ

Instagram

ロンドンでのお仕事】のまとめはこちらから

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