コスメ会社「IT Cosmetics(イット・コスメティックス)」の創設者でCEOのジェイミー・カーン・リマさんは、最近同業者に向けたスピーチで、化粧品の広告を考え直そうと問題提起したそう。これは7年前、業界の美の基準が狭すぎることを痛感したときからの彼女の使命。

コスモポリタン アメリカ版が、ジェイミーさんがどう闘志を燃やして常識を破り、自分の会社を育てたのか、また、業界はまだまだ変化の途上にあることを、ジェイミーさん自身の言葉で紹介しています。

これはThird partyの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
美の定義を変えるためには、真っ向から戦わなければならないだけでなく、自分が成功しなければならない。そう私は自覚していました。
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2008年に私は自分の会社「IT Cosmetics」を自宅の居間で立ち上げ、軌道に乗せるのに苦労していました。どこに行っても答えは「ノー」。どの小売業者からも、個人からも断られました。会社が生き残れるかどうかもわからない状態でした。

転機が訪れたのはその2年後。未公開株式の世界では大物の、ある投資家とのミーティングにこぎつけたんです。ところが何度も会った挙句、投資は見送りとなってしまいました。なぜですか、と聞いたときの彼の答えは決して忘れられません。

「そのボディとルックスのあなたみたいな人から、女性がメイク用品を買うとはちょっと思えないんですよね」

私はあっけにとられて彼の顔を見つめました――最初は言葉もありませんでしたが、すぐに、お腹の底で思ったんです、「違う、この人は間違ってる」と。

その瞬間に私は、社会の「美しさ」の定義を、若々しくスレンダーで透き通るような肌の持ち主以外に広げることを、自分の使命と決めました。スティーブ・ジョブズはかつて「世界を変えられると考えるようなクレイジーな人たちだけが、本当にそれを実現する」と言っています。美の定義を変えるためには、真っ向から戦わなければならないだけでなく、自分が成功しなければならない。そう私は自覚していました。そうでなければ他のコスメ会社の考え方を変えることはできないでしょうから。そしてこの業界は、私が7年前に投資家と会ったときから進歩しているとはいえ、まだまだ変化の途上にあります。

私は直感していたんです、女性は、自分たちに似ても似つかないモデルを使った広告の商品を買うのにうんざりしていると。

この使命のために私は、いくつか大きなリスクをとりました。最初のリスクはテレビショッピングQVCでのライブ・デビュー時。2010年9月、例の投資家に会って数カ月後のことです。QVCはCEW(コスメティック エグゼクティブ ウーマン/ビューティ業界で働く人々で構成されている非営利団体)のビューティ・アワードでのデモンストレーションで当社のコンシーラーを試して気に入り、オンエアしてくれることになったんです。開始前に外部のエキスパートに助言を頼むと、やはり「人があこがれるような外見のモデルを使うべきだ」とのこと。つまり若くて、シミひとつない肌ということです。

でも、私は直感していたんです。女性は、自分たちに似ても似つかないモデルを使った広告の商品を買うのにうんざりしていると。

イチかバチかでした。QVCにコンシーラーを継続して扱ってもらえるかどうか、チャンスは最初の一度きり。10分間で6,400個売るというゴールに達しなければ、次の機会はありません。そこで、私はメイクを落として、自分の顔のひどい赤らみ(酒さ[しゅさ])をさらし、この商品の効果をオンエアでアピールすることにしました。私が他に起用したモデルは73歳のヘレン、アフリカ系アメリカ人で紫ニキビのひどいアリシア、そして目元にクマのあるデザレイ。彼女たちにも私と同じようにコンシーラーを使ってもらいました。

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当時はこんな風にリアルなモデルを使う会社はほとんどありませんでした。でも、私たちが自分の顔を出してQVCに出演した10分間で、「売り切れ」サインが出たんです。私は泣きました。会社が存続できるというだけでなく、リアルな女性の声がみなさんに届いたことへの感激の涙でした。

この経験に励まされて、私は既存の枠にとらわれない考え方をして、会社を成長させてきました。小売業者から「それでは高級感が出ない」と文句を言われても、素人の女性のビフォーアフター写真を使いました。現在、いろいろなお店で素人女性のビフォーアフター写真が使われているのを見ると、つい微笑んでしまいます。ほとんどのコスメ・ブランドは、一般人がたどり着けない"憧れるような"写真によって商品が売れると信じていたはずですから。

2016年の9月、ロレアルがIT Cosmeticsを買収しました。過去8年間で最大の買収で、私はロレアル史上初の女性CEOになりました。このとき、わたしの体重とルックスのせいでIT Cosmeticsから手を引いた、あの投資家がメールをくれたんです。

「ロレアルとの契約成立おめでとう。私は間違っていた」と書いてありました。私の会社に投資しなかったことを悔いているとのことでした。

そのメールを読んでちょっといい気分でしたが、でも考えてみれば彼だって、世の中にずっとあった美の定義に染まっていただけなんです。彼からメールをもらったことをきっかけに、化粧品業界はまだまだ変化していくべきだ、と改めて思いました。今、IT Cosmeticsの最優先事項はコスメの色の幅を広げ、あらゆる年齢、肌色、体型、サイズのリアルな女性を広告に登場させていくことにあります。もし他のコスメ会社が真似してくれたら、世界中の人にとって人生が一変するようなことになるはずです。

あなたは"自分というパワー"を使って、何をしますか?

こうした影響が続くことへの期待も込めて、わたしは最近、CEWの「Achiever Award(優秀賞)」を受賞しました。業界では最も栄誉ある賞のひとつです。でも、普通の受賞スピーチをする代わりに、私はまたしてもリスクをとったんです。1,000人以上ものビューティ業界のエグゼクティブたちに、世界の女性を代表してスピーチし、行動を起こすよう呼びかけました。

今日の私は大胆不敵、言うべきことを言ったわ。

自分の持てる勇気を全部かき集めるようにして、私は聴衆1人ひとりに、質問を投げかけました。「あなたの使っているブランドの広告やモデルの姿を見て、不安になったことはありませんか? 幼い女の子だったころ、こうした美のイメージを見たことによってどういう影響を受けましたか? あなたのお母さんやお姉さん、妹はどうでしょう? あなたの娘さんはどうでしょう? ここにいる私たち1人ひとりが、世界の数十億の少女・女性たちのために、この現状を変える決断をする力を持っているんです。あなたは"自分というパワー"を使って、何をしますか?

会場の反応は様々でした。涙ぐんでうなずき、拍手し、声援を送ってくれる女性もいたし、ショックを受け、賛成しかねる様子のエグゼクティブもいました。でも私は正しいことをしたと直感し、震えてはいても恐れは感じませんでした。自分というパワーを、良いことに使ったのだから。

下記は、有名なトーク番組の司会者兼プロデューサーである、オプラ・ウィンフリーを訪ねたときに投稿したもの。

今カリフォルニアのオプラのお宅にお邪魔してます。感じるのは愛! ありがたいし、すごく刺激を受けてる。もっと与えて、愛して、みんな1人ひとりに、私にできる最大限のことをしたいと思わされる。IT Cosmeticsのみんな、愛してるわ!

「あなたは"自分というパワー"を使って、何をしますか?」という質問は、オプラの『あなたのベストな人生を生きよう』というイベントでの質問に触発されたものです。

「あなたは"自分というエネルギー"を使って、何をしますか?」

この質問が私の人生に大きな影響を与えました。この質問に答えたかった。だから「美とは何か」、ということに疑問を投げかけることで、挑戦し続けているんです。

締めくくりとして、この言葉をみなさんに贈ります。

どんな夢であれ、自分の直感に耳を傾ける力、恐れを超える信念を持ち続ける力があなたにはある。あなたには自分の望む人生を創り、周囲に良い刺激を与えて、そして世界を変えるパワーがあるんです。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Noriko Sasaki (Office Miyazaki Inc.)

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