無職で貯金ゼロ、ブログ経験もなかったアンジェリカ・ヌワンドゥさん(写真中央)は2014年、セレブのリアルタイム情報サイト<The Shade Room(TSR)>(日陰の部屋/原題)のアイデアを思いつき、有名人のSNSから得た情報をインスタグラムでレポート開始。

TSRは1年で70万人以上のフォロワーを獲得し、ニューヨークタイムズ紙に「インスタグラム界のTMZ(ゴシップサイトの代名詞的な存在)」として取り上げられるまでに。

TSRはアフリカ系アメリカ人が興味を持つニュースやセレブにフォーカス。クリス・ブラウンやニッキー・ミナージュのような黒人スター情報に多くのページを割き、黒人ならではの目線でニュース速報や政治トピックを紹介しているそう。

現在のフォロワー数はウェブサイト、インスタグラム、フェイスブック、SnapchatYouTubeを合わせて800万人以上。アンジェリカさんは26歳にして、米経済誌フォーブスの「30歳未満の影響力のある30人」にランクインし、メディア帝国を築きたいという夢を語っています。そんなアンジェリカさんの成功までの道のりを、コスモポリタン アメリカ版から!

ウェブサイトの開設方法は知らなかったのでインスタグラムに、セレブのインスタグラムやツイッターから得られた情報を、どんなに小さなことでもいいからアップしました。

「私は6歳のとき、父の家庭内暴力で母を失い、里親に育てられました。学校ではいつもイライラしてケンカばかり。でも12歳になったとき、里子たちに創造的な活動をさせて、怒りを吐き出させようとする団体<Peace for Kids>のザイド・ゲイル先生と出会いました。音楽やアートはやりたくなかったから詩のプログラムを選んだのですが、書くことが私のセラピーになり、学校生活をうまく送れるようになりました。自分の生い立ちと自分を切り離して考えられるようになったんです。

その後、奨学金でロヨラ・メリーマウント大学に進学し、会計と人事を専攻。助けてくれる人はいないから、自分を養っていくことだけを考えていました。

2012年に卒業して、LAのオートバイ店に上級会計士として就職。でも単調な事務作業が嫌で、2年後、ライターになりたいとザイド先生に告げると、先生は『私はアンジェリカが自分のしたいことに気づくのを待っていたんだよ』と」

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「翌週、先生は<Peace for Kids>のボランティアの1人、ジョーダナ・スパイロ さんを紹介してくれました。彼女は、父親に母親を殺された里子を主人公にした脚本を書いていて、『まるで私のことのよう。一緒に書き上げたい』と思いました。

スパイロさんはシナリオライティングの学位を持っていて、技術があったので、私は自分の思いや経験を伝え、彼女はそれを脚本にする方法を教えてくれました。NYの彼女とはメールでやり取りをし、会計の仕事を休んでNYへ行くときは、スパイロさんが飛行機代まで払ってくれました。

半年間、脚本を練った後、サンダンス・インスティテュートの脚本ラボへ応募したら入選! 2週間の訓練を受けられることになって、『私はすべきことをしてきた、それが証明されたんだ』と感じました。

そしてユタ州のサンダンス・マウンテン・リゾートで、偉大なライターやディレクターから指導を受けましたが、書いたものを破り捨てられたときは『なんで私を選んだの?』と悔し泣き。でも書き直すためのアドバイスをもらって、スパイロさんと一緒に3年かけて修正しました。今は最新版が評価されることを祈っているところです。

会場では、それまでの作品のプレゼンもありました。短編製作の経験がある人たちばかりの、クエンティン・タランティーノ監督も来ている中で、私には詩以外に見せるものがなくて。もうすぐ私の番というとき、会社の上司から電話があって『すぐに飛行機に飛び乗って明日から出勤しろ、さもなきゃクビだ』と怒鳴られました。プログラムはあと1週間。夢を取るか仕事を取るか。『この貴重な機会を失うなんてとんでもない』と答えた私は、その場でクビに。

『何てバカなの、家賃をどうやって払っていくつもり?』と悔やむ間もなく、私のプレゼンの番が。両親と子どもの頃のことを綴った詩を読んだのですが、感極まって号泣し…。立ち上がって拍手してくれる観客を前に、私はトイレに駆け込みたい気持ちでした。

そんな私に、サンダンス・インスティテュートの創設者の1人、ミシェル・サッター氏が『あなたの執筆を援助するわ』と声を掛けてくれて、何カ月か続けていける金額をもらいました。スパイロさんも私と一緒に完成させたいからと、援助してくれました。

スパイロさんと書き直しをするためにNYに1カ月滞在し、LAに帰宅。そしてどうやったらライターになれるのか考えたけれど分かりませんでした。だから他の人の脚本や映画から学ぶことにしました。

2014年の初めは、クリス・ブラウンとリアーナがもめていた頃で、私はついつい彼らのブログを読みふけることに。もともとエンタメやセレブは好きだったけど、そんなにハマったことはなかったんです。始終セレブのブログを追っかけている私を、友達は負け犬と思っていたんじゃないかな」

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「そんなある日、ひらめいたんです。『私のブログを作ってみよう』って。それで、ウェブサイトの開設方法は知らなかったのでインスタグラムに、セレブのインスタグラムやツイッターから得られた情報を、どんなに小さなことでもいいからアップしました。

フォロワーがたくさんいればウェブサイトを作れて、いずれ収入につながるだろうと思ったんです。

その年の目標は1万人のフォロワーを獲得すること。脚本を書きたいと思っていたけど、ブログを始めると熱中してしまって。そしたらなんと、最初の1週間半で1万人を突破!

最初に書いたのは、トランスジェンダーの人気モデル、アミヤ・スコットのひどい別れについてでした。彼女はそこにコメントを書き込んでくれて、それに彼女の恋人が反応。2人は私のブログ上でケンカを始めてしまったんです。セレブが誰かのブログ上でやり合うなんて、めったにないでしょ? 他にもカーダシアン一家からニッキー・ミナージュまで、いろいろな人が投稿してくれて、クリス・ブラウンは常連さんです。

<TSR>の特徴は、私たちがコメントを書いているセレブと、クリック1つでつながれること。フォロワーがみんな、その会話に参加できることですね」

「最初の9カ月間、私は毎日毎晩、睡眠もそこそこにブログを更新し続けました。でも収入はゼロ。友だちには『あなたはインスタで人生をムダにしてる。仕事を見つけて。インスタは仕事後にすればいいでしょ』と言われたけど、『それじゃダメ、私には50万人のフォロワーがいるんだから』と思っていました。

2014年7月、私の銀行口座には400ドル(約4万円)しかないのに、家賃の支払い日が目前。不渡りになると分かっている小切手を管理人さんに渡した後、3日かけて必死で稼ぐ方法を考えました。

そして、オンラインマーケットの<Big Cartel>でショップを始めることに。洋服や美容品関係の小さな会社が、<TSR>の投稿を買ってくれるような広告商品を考えたんです。インスタグラムでは一般的な広告は出せないので、私が書く(宣伝のための)投稿を購入してもらおうというアイデアです。するとすぐ会社からの支払いが殺到。それから、45ドル払ってWordPressにウェブサイトを開設してグーグルに宣伝を掲載したら、即収入に。そうやって何とか、大家さんが小切手を換金する前に、口座にお金を用意しました。

TSRでは、フォロワーのコミュニティを作り、彼らに至る所でパパラッチになってもらいました。彼らの正体は誰にも分かりません。彼らが送ってきた情報や写真や動画を、私のライターたちが調査したり証拠を集めたりしてチェック。私たちに偏見が全くないとは言えません。私たちは一般的な黒人の意見を代表したい、私たちのフォロワーが感じていることを表現したい、そう考えています」

201412月、私たちのインスタグラムが削除される事故が起こりました。さらに今年(2016年)の4月、運営方針に違反しているという理由で、フェイスブックは<TSR>のアカウントを削除。440万人のフォロワーを失いました。それまでの努力が水の泡です。でも今また、インスタグラムに500万人、フェイスブックの新ページに20万人以上のフォロワーが戻っています。みんなが望んでいるっていう証拠です。

私は休暇を取りません。1週間休んだら<TSR>はたぶん勢いを失ってしまう。ビジネスの規模が大きくなると職務を委ねる必要があるんでしょうけど、私は<TSR>から離れられない。大好きなんです。恋愛もしたいし普通の安定した生活もしたい。でも大きな夢を叶えるまでは休みません。

私たちはデジタル帝国を作ることに投資したいというスタジオから、多くのオファーをもらっています。そのうちのどこかと組んで、デジタルネットワークを築きたい。セレブやエンタメ情報だけでなく、脚本を書いてショーも発信するのが夢なんです。

若い黒人女性がメディア会社を運営するなんて、ほんとに珍しいこと。毎日、『大丈夫、できるよ』と自分に言い聞かせながら進んでいます。"つらい経験をしてきた女の子"じゃなく、"ビジネスウーマン"として自分を見なければって。今でも、子どもの頃のつらい経験には苦しめられるけれど、それは成功の妨げにはならなかった。つらい経験が書くことにつながったのだから、むしろ貢献してくれた。私の成功は、自分を信じることの大切さを証明してくれていると思っています」

※この翻訳は、抄訳です。

TranslationYuko Oguma

COSMOPOLITAN US