自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます

コメディアン/キー・ヨウォン・キムさん 

【私の生き方】自分を誇りに思うことのできる選択を!

弁護士からコメディアンに転身し、パリを拠点に活躍するキー・ヨウォンさん。ジョルジオ・アルマーニの香水「Si」のキャンペーンで、勇気を出して情熱に従って生きる女性を代表する「Si Women's Circle」の1人に選ばれた、そんな彼女の原動力に迫ってみました。

―以前は弁護士として活躍されていたそうですが、今までの経緯を教えてください。

社会で強い責任を負い、いつも大きなチャレンジの連続がある弁護士の仕事に憧れていた

ドイツのベルリンで韓国人の両親のもと生まれましたが、オペラ歌手だった母の仕事の都合でパリに移りました。アーティストの両親のもとで育ったので、子どもの頃は舞台や芸術に関心が強く、好奇心旺盛でした。両親が「あなたなら、どんなことでもできる」と言い聞かせて育ててくれたので、自分の中に自信が深まっていき、小さな頃から弁護士になることを志していました。社会で強い責任を負い、いつも大きなチャレンジの連続があるこの仕事に憧れていたんです。そして、長年勉強した甲斐があり、刑事事件を担当する弁護士になりました。容疑者のリサーチをしたり、事件の関係者に会って話を聞いたり、容疑者が話したことの事実確認をする、という仕事内容だったのですが、3日間寝ないで働いていることもありました。とても夢中になって仕事をしていましたが、その分タフでしたね。

―では、コメディアンになったきっかけは?

人生の最期の日に、夢だった仕事をして、自分のしたことを誇らしく感じることができるような生き方をしたいと思った

弁護士として働いていたときに大勢の前でスピーチをする弁論大会に出場する機会があったのですが、そのときに冗談を交えて話をしたら、観客が笑ってくれて…とっても幸せな気持ちになったんです! その時に「これが、私が仕事でしたいことなんだ!」と強く確信しました。

とはいえ、もちろん弁護士として今まで築いてきたキャリアを諦めるのは、正直とても恐かったです。でも「人生は限られた時間しかないのだから、大きな挑戦をしないと!」と思い切って、キャリアチェンジをしました。

コメディアンに実際なったときは心の奥底で「良い決断をした!」と、感じていましたね。確かに始めた頃は、予測することが出来ない将来に不安はありましたが、そういう時は、人生の最期の日に「夢だった仕事をして、自分のしたことを誇らしく感じることができて、その時々で後悔しないようにベストをつくした」というふうに思えるような生き方をしよう、と自分に言い聞かしていました。このようにゴールから考えることで、今、何をするべきで、逆に何をしないべきかの正しい選択が自分の中で見えてくるんです。

コメディアンの学校に行ったわけではなく、直接肌で学びたかったので、スキルを磨くために劇場に通って学びました。80回以上は足を運んだと思います。そして、はじめて観客の前でコメディを披露したときは、やっと自分の舞台を見つけられたような気持ちで、感動したのを覚えています。

今、コメディアンになって3年が経ちますが、弁護士からコメディアンになったことで、している事の本質は変わってないと実感しています。いつもステージに立って皆から発言した言葉に注目されているところ、自分の発言が終わったときに聴衆が反応するところなどは同じです。

―ネタになるインスピレーションは、どのように得ているのですか。

自分の人生の中で印象的だったことを頭の中でスケッチしている

ヨーロッパ人から見たアジア人、刑務所、元彼のことなど、自分の人生で印象的だったことを頭の中でスケッチすることで、ネタにしています。コメディは、悲しいことであっても、結果を笑いに変えてしまえる形の表現方法なんです。それに、悲しい出来事などに対する自分のネガティブな感情をユーモアで笑いに変えることで、泣くかわりに笑顔になれるんです。

たとえば、弁護士時代に見たこともコメディで話しています。クライアントと会うために刑務所に訪れることが度々あったのですが、その時に見たフランスの最近の刑務所の人増加や生活の質などについて非難することで、観客の人々にもこの状況を考えて欲しいと思って、ネタにしています。

そのほかにも、日常生活でヨーロッパの人々から聞かれたアジア人についての素朴な疑問を、ユーモアを加えてコメディにしています。これは、ヨーロッパ人にメッセージを、というよりも、今の国際社会で生きるアジア人にメッセージを込めていますね。

ネタの題材はいろいろとありますが、コメディアンとしての素質は、自虐ができて、日常の些細なでき事を自分の目で観察するセンスが必要だと実感しています。これらのことはコメディアンでなくても、日常的に周りの人に面白い冗談を言うことにも繋がりますし、自分自身を1番よく知ることのできる方法でもあると思います。

―舞台でコメディを披露するうえで、大切にしていることは?

舞台ではエネルギーがコミュニケートされている

発する言葉に集中力を込めて200%のエネルギーをつぎ込むことです。舞台に立っていると、大勢いる観客とは言葉だけでなく「エネルギー」がコミュニケートされている、と感じています。ショーが始まると、私のジョークと観客の笑い声のスピーディーな交換がはじまります。全く知らない人達と一緒に笑いあうのは、マジックにかかったような気持ちになるんです!

―とてもエネルギッシュですが、キー・ヨウォンさんの原動力を教えてください。

人生は限られた時間しかないから、できる限り笑って幸せに過ごさないといけない

人生は短いから、前進し続けないといけない!と常に思っています。そう思うようになったのは、弁護士をしていたときに親友が亡くなってしまったことがきっかけです。その時に、永遠なものは何もないと感じました。遠くの未来には、私たちはいなくなってしまうから、できる限り幸せに過ごさないといけないと思うんです。だから、人々を笑顔にしていきたいし、自分自身も笑って生きていたいと思っています。

―今後はどのようなことに挑戦されたいのですか。

【私の生き方】自分を誇りに思うことのできる選択を!
©kee-yoon jaune bon bon

幅広い表現方法に挑戦して、新しく芽生える感情や発見に出会いたい

本を書いてみたいと思います。伝えたいストーリーがたくさんあるんです! コメディアンは私のもともとの本質とあっていたので、表現の形式としてはじめましたが、他の表現方法にもチャレンジしていきたいと考えています。なので、今後は脚本や本を書いたり映画監督などもして、自分の中に芽生える新しい感情や発見に出会いたいです。


今、目の前にある状況だけでなく、大きな視点で人生を捉えているキー・ヨウォンさん。何事も後悔したくないからこそ、悩む暇がなく多くのことに挑戦し続けることができるのかもしれない。今後の、彼女の幅広いチャレンジに勇気をもらい続けたい。

【キー・ヨウォンさんから学んだ勇気を持って生きるためのヒント】

・迷ったときは、人生の最期の日を想像して、自分の人生を誇りに思えるような生き方ができる選択をする

・日常の些細な悲しいでき事を、笑い話に変える訓練をすると、ポジティブになる

・自分自身の職種以外にも、幅広く自分の可能性を表現できる方法を試していく

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