「海外で暮らしてみたい」「働いてみたい!」と、思ったことがある人って、案外多いのでは? とはいえ、日本以外の生活に飛び込むって語学も準備もお金も…と、具体的に考えれば考えるほど、尻込みして行動できなくなってしまうもの。

そこで8月のテーマ「初体験」にちなんで、海外で暮らしている(していた)人に「"初めて"海外暮らしに挑戦したときの話」を聞いてみました。ツラかったり、嬉しかったり。この初体験エピソードにワクワクした人、あとは行動あるのみ!

渡航した国:オーストラリア(シドニー)

渡航した年齢:29歳

滞在期間:約7年

現在はシドニーで金融市場データサポートの傍ら、フリーランスで編集やライティングする荒川佳子さん。彼女がオーストラリアに向かったのは、30歳になる直前の29歳のときのこと。自分の今までとこれからを考える分岐点で、どう行動してきたのか。

――海外で暮らそうと思ったきっかけは?

大きな米軍基地がある地域で生まれ育ったので、実家の近所や街中にはアメリカ人が多く、自然とそのカルチャーに親しんできました。英語でのコミュニケーションがとにかく楽しくて、好奇心旺盛な性格もあって「この言葉がマスターできたら、いったい地球上で語り合える人が何パーセント増えるんだろう!」と期待に胸を膨らませていたのを覚えています。なので、物心ついたころから海外に住んでみたいとは思っていたんです。

ただ、一度アメリカの大学留学を予算的な理由で諦めたこともあり、東京で同じく興味があった広報や雑誌編集の仕事に就きました。これもまた楽しくてつい没頭するあまり、あっという間に数年が過ぎ去っていったけど、海外移住の夢はずっと捨てずにいたんです。だから結局、かかった期間は構想12年ほど(笑)。実際に決心してからは、半年くらいで行動に移してました。

――オーストラリアを選んだ理由は?

ワーキングホリデービザ」という、就労許可付きで学校にも通えるお得なビザが使えたこと。オーストラリアでこのビザを取得できる年齢制限が30歳までだったので、その年に近づき、ようやく日本を離れることを決心しました。このビザが使える国にはほかにもいくつかあるけど、「サーフィンがしたい」「寒いのは苦手」という理由で、行ける国の中からオーストラリアを選びました。

当時、雑誌編集の仕事をしていた私の夢は、海外のフリーペーパーで働くこと。渡航前に、候補の媒体や企業をリストアップしたときに、一番魅力を感じた新聞社がオーストラリアのシドニーにあったのも大きな決め手に。すぐに応募をして、面接や筆記試験は電話やメールでしていただきました。

――ワーキングホリデービザは1年という期間制限があると思いますが、その後はどうされたんですか?

そのころには海外のフリーペーパーで働くという目標も達成して、その後のキャリアチェンジを考えていたので「学生ビザ」を取って大学院へと進みました。大学院だとさすがに授業料が高く、最初は今回も諦めるしかないのかと悩んでいたんですが、とある大学のMBAコースで奨学金制度があるのを教えてもらって、「これしかない!」と慌てて申し込んだら、運良く合格することができたんです。

この合格を武器に、親にもオーストラリアに残ることを納得してもらいました。今思えば「オーストラリアでやりたかった仕事に就けたから現地に行く」とか、「奨学金もらえることになったから大学院に行く」とか、家族には既成事実を作ってからの事後報告ばかりでした(笑)。

この学生ビザの後、2年間の「卒業生ビザ」を経て、今はニュージーランド人の彼とのファミリービザで暮らしています。

――仕事に大学院にと忙しそうですが、想い出に残っていることは?

とにかくよく働き、勉強したこと!  大学院へ行き始めてからも、新聞社での仕事は抱えていたので、両立するのにとにかく必死。締め切り前には毎回のように授業の合間を縫って印刷所に電話をしていましたね。休む間のない毎日でした。でも、負けず嫌いな性格から成績は良くないと納得ができなくて、睡眠時間を削ってリサーチや論文、試験勉強に明け暮れて…。

大変だったけど、勉強の内容が楽しかったからこそ没頭できたし、良い成績を収めた瞬間の達成感は今でも忘れられません。

――日本との違いを一番感じるのはどんなときですか?

ワークライフバランスが全然違います。私は移民で、かつ、無茶が好きという個人的背景から勝手に苦労をしてきましたが(笑)、基本的にこの国はどこまでもイージーゴーイング。がんばらない、仕事より家族を優先させる美学があって…日本だったら後ろから頭をひっぱたかれそう(?)ですが、みんな5時には帰るし、金曜日の午後はすでにパーティーモードに切り替わっていて、とにかくいい意味でも悪い意味でも力が抜けていて、ゆるいです。ちょうど日本を離れるころ、それまでの徹夜での編集仕事を続けるには体力の限界を感じていたので、今はとても心地良いです。もちろん効率よくするために、みなさんそれなりの工夫をしているのだと思いますが!

――一番楽しいと感じるのはどんな時ですか?

仕事前や仕事終わりに、海底まで透き通るきれいな海でサーフィンしたり、友達とキャンプやハイキングに行ってゆたかな自然を堪能しているとき!  オーストラリアでだからこそ実現できるライフスタイルの贅沢さを感じています。サーフィンをしている時に、海の中で野生のイルカや鯨と遭遇することもあるんですよ。

最近では物価や家賃が高いこともあり、いいことばかりでもないのですが、住み慣れて、努力を続けていくと解決策が後からついてくるもので、普通の生活ができていることに感謝するばかりです。それに、気づけば価値観の合う友達と良い関係を築けているのも、すごく幸せなことですね。

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yoshiko arakawa

―― 海外で暮らしたいと思っている女性にアドバイスはありますか?

私自身、かなり長い間海外移住を考えていたので、いろいろな人のケースを見聞きしたのですが、どの国へ行って何をしても、結局その先のストーリーは十人十色なのかなと思います。仕事や恋の見つけ方も、ビザのとり方も、あなただけの展開が用意されていて、何ひとつ同じようにいくことなんてあり得ないはず。だからこそ、海外に行ったその先は真っ白なキャンバスに自由いっぱいこの先の希望を描けるよう、ビジョンをクリアにしておくことをオススメします。勉強や取りたい資格、これまでのキャリアを生かすための戦略でもいいし、自分磨きや婚活でも、何でも(笑)。そうしたらきっと、断然充実した海外暮らしができるはず。

慣れ親しんだ家族や友達から離れ、よその国にお邪魔してイチから生活をスタートすると、ちょっとくらい苦労をすることもあるかもしれません。でも、トラブルに見舞われても「ピンチはチャンス!」と笑い飛ばすくらいの心づもりでいれば、そうした経験や新しい出会いやから人間力が増したり、新境地が開けたりすると、私は強く信じています。このグローバルな時代、世界はきっとミラクルにあふれていますから!