雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン チェコ共和国版 編集長:サブリナ・カラソヴァ】

サブリナ・カラソヴァは26歳のとき、旅行会社でツアーガイドとして働き、自費出版で本を書き、"完璧な人生"を送っていたそう。「コスモポリタンという名前はオフィスに呼ばれるまで聞いたこともありませんでした」と話す現在45歳の彼女。そのときの面接はボロボロで、最初に与えられた仕事は新卒レベルのものだったのだとか。そこからトップにまで昇りつめた彼女は今、自身の運営する女性誌を誇りに思っていると語っています。

――今までで一番ためになったキャリアアドバイスは何でしたか?

初めて出席したCOSMIC(年に2回行われる全コスモ編集者のための総会)で、伝説の大御所ヘレン・ガーリー・ブラウン(元コスモポリタン アメリカ版編集長)に会ったんです。彼女がそのときくれた本を開くと、「人に優しくね」と書いてあって。その頃の自分にとって大切な人生の教訓になりました。

アストリッド・バートンチーニ(元ハースト・インターナショナルのディレクター)にもアドバイスの言葉をいただいたことがあります。彼女には「上司に大幅な昇給を求めるべき!」と教わりました。この2つのアドバイスは同時に実践すると効果絶大ですよ。

――オフィスでの1日はどんな様子ですか?

私たちのチームはとても小さくて、正社員が3人だけなんです。残りの7人は、ほぼ毎日一緒に動いてくれるフリーランスのメンバーです。午前中はオフィス内で他のメンバーとその日の仕事について話します。撮影や芸能人インタビューを計画したり、一緒に花に見とれたり、化粧品のサンプルを試したり、新しい本をチェックしたり、コーヒーを飲んだり、ケーキを食べたり、アイディアを共有したり…やることは山ほどありますよ。午後は、自分の記事を書いたりミーティングをしたりします。

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――コスモで働きたいと思っている女性に、何かアドバイスはありますか?

本誌を読むこと!

――読者層について教えてください。

読者は18~36歳の女性です。家族や友達と上質な時間を過ごすことが大好きな人たちですが、そんな彼女たちも時には誰かから励ましてもらったり、ポジティブな意見をもらうことが必要です。そんな彼女たちのために、私たちは働いています!

――チェコは長年続いた不景気からようやく脱しようとしているところですよね。この財政危機は読者にどのような影響を与えたと考えていますか? また、どういったキャリアアドバイスを提供していますか?

財政危機のピークが過ぎ去ったことには、本当に安堵しています。今では失業率も低下し、特に大都市においては、仕事を探したり、新しく起業し始めたりすることはそれほど難しいことではなくなりました。しかし、この不景気はチェコの女性たちに思わぬ影響を残しました。それがどんな痛手に繋がるかは、先々明白になってくるでしょう。当時高い失業率に対応するため、政府は世界でもっとも長いといわれる産休制度を制定し、女性を職場から追い出そうとしました。全ての妊婦は25週の産休を強制的に取得せねばならず、さらに子ども1人に対して3.5年の育児休暇を取れることになったんです

多くの女性が、給料の約30%を支給される状態で子どもと一緒に過ごせることを喜んでいました。しかし、蓋を開けてみるとチェコ共和国には仕事から4~12年ほど離れていた女性が大勢いることが分かり、彼女たちは社会やプロの世界から断絶され、新しいテクノロジーにもついて行けず、長らく安定した収入を得ていないという現実が広がっていたのです。将来的に彼女たちは安い年金に悩まされ、パートナーよりも貧しい生活を送ることになるでしょう。

チェコ共和国では、結婚したカップルの約半数が離婚しており、これも大きな問題に繋がっています。現在こうした女性たちは、職場復帰を目指して奮闘しています。今や彼女たちにとってコスモは、最新のトレンドを学ぶだけでなく、長期産休によって引き起こされた対人恐怖症をどう克服していけばいいか、自尊心をどう回復していけばいいか、正当な報酬を求める声をどう発信していけばいいかなど、もっと深刻な問題の答えを探す場になっているのです。多くの企業は、女性は長く産休を取ってしまうからと、彼女たちに投資したがりません。そのせいで、我が国の給与格差は22%にまで広がっています

こういった問題を防ぐために、コスモは産休のチャンスを使って新しく自分でビジネスを始める方法などを勧めています。また、産休中も精神的健康を保ち、その後も仕事を辞めずに済む方法などを記事にしたりもしています。今の読者にとって、キャリアというのは人生のキーワードになってきているんです。

――チェコ共和国では、同性のパートナーシップ制度は認められていますが、結婚は違法ですね。となると、LGBT関連の情報を記事にすることはできるんですか?

実は同性婚は2006年から合法になっています。結婚ではなく"レジストレーション(登録)"と呼ばれていますが、多くの同性カップルは通常の結婚式のようにその日を祝います。

違法なのは、同性カップルによる養子縁組と、代理母の制度です。レズビアンのカップルたちは別の方法で子どもを生む手段を見つけやすいですが、ゲイのカップルたちはその点で差別を受けています。当然ゲイの人たちも誰かにその声を代弁してもらう必要があるのですが、残念ながらLGBTに関してはなかなか政治レベルで協議されないのが現状です。でも、チェコ社会全体はこのテーマに対してとてもオープンです。コスモはLGBTを記事に取り上げるだけでなく、ゲイの人たちのための変革活動に携わったこともあります。

元同僚のジルカは、アメリカのカリフォルニア州に移住し、そこでデンマークから来たパートナーに出会いました。彼らはアメリカでは合法な代理母の力を借りて、今は2人のかわいい子どもたちと一緒に暮らしています。ジルカは子どもたちにチェコの市民権を取らせてあげたかったのですが、チェコの公的文書には父母の名前を書かなければならないため、それができませんでした。ジルカは国を告訴し(この手の訴訟は国内で初めてでした)、勝訴したんです! 私たちコスモはそれを記事にしました。

――読者にはフェミニストが多いと感じますか?

チェコ共和国の女性は生まれつきフェミニストですよ。多くの男性だってそうだと思います。彼らはフェミニストのように振る舞い、フェミニストの価値観に共感します。ただ、フェミニストとは呼ばれたがりません。そういった社会的観念の中に位置づけられることに対して、少し抵抗があるんだと思います。場合によっては敵対視されることもありますし。チェコの男性も女性も、フェミニズムの概念をまだ完全には呑み込めていないのかもしれません。

――チェコ共和国のミレニアル世代が今もっとも注目しているSNSは何ですか?

Facebookは日常のコミュニケーションにかかせません。チェコの子たちはただ単に自分の日常的な出来事を書くだけでなく、自分の意見や思想をシェアしたり、グループ活動を行ったりするためにも使っています。インスタグラムは、特に若者の間で急速に人気を伸ばしてきていますね。スナップチャットは始まったばかりです。Twitterはジャーナリストやメディア関連の仕事をする人の間でのみ使われています。あとはブロガーや、YouTubeのビデオブロガーもどんどん増えています。

――コスモで働き始めてから、どういったコンテンツの人気が高まっていると感じますか?

はじめは、当時タブーな話題…例えば女性のアルコール依存症、レイプ、セクハラなどについて書くと多くの反響がありました。続いて、様々な女性が人生の難しいハードルを越えてきた実体験ストーリーを取り上げるようになりました。財政危機の間は、体や健康に関するトピックに興味が寄せられているのを感じ、今はキャリアに関する記事がメインです。

――チェコ共和国の20代の若者について、他の国の読者が驚いてしまうような話はありますか?

例えば、大学のキャンパスはアメリカのように大きくありません。チェコ共和国自体が小さな国なので、若者が大学に通うときはアメリカのように数年実家を離れたりはせず、大学の近くで一人暮らしをして、週末は実家に帰るという生活をします。車を持っている20代の子は少なく(車は高いので)、代わりに便利な公共交通機関が整備されているので、みんなそれを使って移動します。若者はバスや電車の中でお年寄りに席を譲るのが道徳ですが、実際にみんなそうするんですよ!

それから、チェコ共和国の若者はネット上で自分の情報を過剰に共有する一面がありますが、実際はとても注意深く、親世代のときほどの冒険心はないようです。チェコの女性がセックスした平均人数は4人で、世界的に見てもかなり少ないんじゃないでしょうか。

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 名和友梨香

COSMOPOLITAN US