雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン スペイン版 編集長:アナ・ウレーニャ】

アナ・ウレーニャ(38歳)はこれまで「女性が興味を持つメディア」でキャリアを積んできたそう。『Tatler』『ELLE スペイン版』『ヴォーグ スペイン版』などの雑誌では、ライフスタイルにまつわるトピックを得意とする編集者として活躍。そしてコスモポリタン スペイン版の編集長に就任して以来、ヘアスタイルや恋愛アドバイスなどに加え、今まで誰にも聞けなかったセックスにまつわる質問に答える特集など、「スペイン女性が本当に読みたいもの」に注目したコンテンツ作りを目指しているのだとか。

――スペイン版の編集長になったきっかけは?

コスモの編集長に就任したのは1年半ほど前のことです。その前の数年は新聞記者をしていたので、コスモ編集長を引き受けるのは大きな挑戦でした。毎日締切のある新聞から月刊誌での仕事になったので、締切という点においては楽になるかな?と思ったのですが、それは大間違い(笑)。本当に慌ただしい毎日を過ごしています。コスモ以前は7年間フリーランスとして働いていて、パジャマ姿でコーヒーを飲みながら遅くまで家で原稿を書く…という生活も気にいっていたんです。でもコスモで仕事を始めて、毎日が新鮮でエキサイティングだと実感しています。

――雑誌や新聞などの媒体でフリーランスとして働いた経験から学んだことは?

この業界でもっとも大切なことは、毎日"サプライズ"なことを常に探しつづけ、行動しつづけること。ルーティーンでだけ動くようになってしまったら、それは「終わり」を意味します。常に新しいことにチャレンジし、自分の世界以外のものにも目を向け、たとえ小さなことであってもそれを日々の生活に取り入れる。そんな風に自分が好奇心旺盛でいられるよう心掛けています。

――スペイン版の読者層について教えてください。

10代~30代後半の女性を中心に、幅広い読者層に支持されています。これは女性たちが「読みたい!」と思うテーマや話題を、弊誌がきちんと取り上げている結果です。20歳であっても40歳であっても、恋人と別れることもあれば、生理があることも同じ。同じコスメを使っているかもしれないし、共通する悩みも多いはず。コスモは「もっとも女性的な女性のための雑誌」であり、ターゲット層は「(年齢に関係なく)すべての女性たち」、そう位置付けています。

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(コスモ スペイン版のインスタグラムより。表紙ポスターの前でポーズするアナ。)

――最近発売された号で表紙を飾ったセレブのうち、特に話題になったのは誰ですか?

スペイン版ではできるだけスペインで活躍するタレントを起用するようにしています。国際的に活躍するセレブを採用する場合もありますが、ほとんどがスペイン人のモデルや女優です。あまり有名でないモデルが表紙を飾っても、その子が魅力的で笑顔が美しく、自信に満ち溢れていれば雑誌は売れるのです。

――ファッションや美容について、どんな記事を読者は求めていますか?

ヘアケアについての記事は大変人気があります。髪のまとめ方、トレンドのカラーリング、次にヒットするドライシャンプーは?など、ヘアケアに興味のない人はたぶんいませんよね。

――昨年10月にコスモ スペイン版が25周年を迎えましたね! パーティはいかがでしたか?

コスモポリタン スペイン版では毎年「Fun Fearless Female Awards(楽しく、大胆な、女性のための賞)」の受賞者を著名人から選定し、授賞式&パーティを開催しています。去年はこの授賞式と25周年のパーティを同時に行ったんです。通常は10賞のところ、周年記念に合わせて25もの賞を授与しました。たくさんのセレブが駆けつけ、パーティは本当に盛大で素晴らしかったです! 

――「ギャグ法」と呼ばれるデモを規制する公安法の発効や、総選挙に伴う混乱、ジャーマンウィング機(スペイン・バルセロナ=エル・プラット空港発)の墜落など、昨年はスペインでさまざまなことがありました。読者にはどのような影響がありましたか?

「もうこれ以上、嫌なニュースについては知りたくない。新聞やオンラインのニュースを読みたくない」…という気持ちになった人が多かったと思います。もちろん人々が情報を遮断したかったわけではないと思いますが、来る日も来る日も憂鬱でツラいニュースばかりなので、何か楽しいことを求めていたのではないでしょうか。

だからこそコスモのような媒体が必要なんです。この1年、私たちは楽しくて気分が上がる記事づくりに取り組んできました。もちろんコスモが軽薄な、笑いだけを提供する雑誌に方向転換したわけではありません。例えば「人生を楽しむヒント」「ツラい日でも笑って過ごすべき10の理由」などの記事を通し、ポジティブなメッセージを発信したかったのです。現実から目を背けてほしかったわけではなく、ツラい状況であっても何か良いことを見いだせると思ってほしかった。記事は前向きな内容が多く、「毎日リラックスするために"私だけの時間"を持つことにしているんだけど、そんなときは必ずコスモを読むの」。そんな風に言ってもらえる雑誌を目指しました。

――若者へのキャリアやアドバイスの記事が充実してますね。

はい、そうなんです。以前は「仕事」というコーナーを設けていました。でもこの「仕事」という言葉、現在失業中の読者にとっては疎外感を感じてしまい、「仕事をしていない私がどうして『仕事』の記事を読まなきゃならないの?」と思わせてしまう可能性がありました。そこでモチベーションを上げることをテーマにしたコーナーと合体させ、「モチベーション」というコーナーに作りかえました。

「今夜はコスモのパーティ! 準備はOK?」

――読者がもっとも興味を持つセックス&恋愛記事とは?

スペイン版では、かなり直球勝負のセックス記事を掲載しています。加え、「彼と一緒にショッピングって可能? バーゲンとデートって両立するの?」のような男性をちょっとからかうタイプの記事もあります。恋愛にまつわる日常的な問題、例えば「バス・トイレを彼氏とシェアするのに抵抗がある…」といったことへの対処法についても取り上げており、つまりただのセックス&恋愛記事ではなく、どこかひねりの入った楽しい記事を提供しているんです。

――あなたが編集長に就任後、もっとも人気のあるコンテンツは?

美容やメイクに関する記事が人気です。ファッション、恋愛、セックス、仕事についての記事も多いのですが、美容がもっとも得意分野と言えるでしょう。スペインにおいて、コスメ情報は女性をもっとも引き付けるテーマなんです。高級ブランドのバッグやドレスは高額なのでなかなか買えないけれど、同じブランドのコスメは手が届く場合もありますよね? そういった情報を読者は求めているんです。

――避妊についての記事に、何か方針はありますか?

私はアメリカに住んでいたことがあり、通っていたNYの高校で性教育を受けました。でもスペインでは学校に性教育の授業がないため、人々は性や身体について、あまり知らずに成長してしまいます。ですからコスモではこういった問題について頻繁に取り上げています。身体で何が起っていて、性器がどうできているのか、というタイプの情報を躊躇することなく紹介しているのです。

――読者はコスモにセックスや性医学についての質問をオープンにしてくる?

いえ、ダイレクトにはしてきません。ネット上に読者フォーラムをもうけているのでそこで読者同士がやりとりしていますが、恋愛相談がほとんどです。紙面でも恋愛相談コラムを掲載していますが、これは回答者が男性なんです。楽しい語り口で、男性目線でのアドバイスをしています。性の話に戻すと…読者は性にまつわる悩みを紙面上で相談することに特に抵抗はないとは思うのですが、実際には件数は少ないですね。私たちはピルについての知識や、避妊法の紹介にも力を入れています。というのはこの分野の知識がない人が多く、医学的には間違った避妊法を信じている若者もいるからです。今はネット上で誰かに聞くことは可能ですが、答える人が正しい知識を持っていない同世代の女の子であれば意味がありません。

――読者はフェミニスト"だと感じますか?

まったくそう思いません。私たちは幅広い読者層を持っており、ごく少数ではあるのですが男性読者もいるんです。昨年のコスモのパーティに来たある有名なスペイン人俳優が、「家にはコスモが置いてあるよ。妻が購読しているんだけど、僕も読んでいるんだ。女性の気持ちを知るには最適な雑誌だよ」って言ってました。つまり男性にも参考になる雑誌なので「女性誌」ではありますが「フェミニスト」雑誌ではないんです。

――雑誌とウェブ版との関係は?

雑誌とウェブ版は別チームで進めているのですが、同じビルの近い場所で仕事をしています。私を含め、雑誌のチームも毎日必ずウェブ版の記事を書いています。つまりスペイン版には2媒体が同時に存在しているんです。

――読者に人気のSNSはありますか?

スペイン版のTwitter17万人ものフォロアーがいる巨大コミュニティーです。加えてインスタグラムも始動しています。スペインのミレニアル世代は画像を通じてコミュニケーションするのが大好き。インスタグラムのコメント欄でのやりとりを楽しんだり、プライベートなメッセージを書きこむ読者もいるほど。あと、スペインではインスタグラムをデート・アプリとして使う人も多いんです。

――ちょっと馬鹿げた質問かもしれませんが…シエスタ(お昼寝)はしますか? この習慣はまだ残っていますか?

いえ、残念ながら私はしていません。シエスタの習慣は仕事によって異なります。工業関係の職場やフリーランスの人はシエスタの時間を取っているかもしれませんが(でも私はフリーのときもシエスタしていなかったですよ)、オフィスで働く人にはもうこの習慣はありません。でもスペインでは夏の間は午後3時で終業という場合がほとんどです。その代り出勤はいつもより早くなりますが、終業後にシエスタする人はいるかもしれませんね。

「海外ニュースをコスモでチェック!が朝の習慣」

――スペイン人が誤解されていると思う点はありますか?

う~ん、シエスタを今でもしていると思われていること?(笑) スペイン人は毎日パエリアや生ハムを食べて、闘牛場で「オレ! オレ!」って叫んでいるというイメージがありますよね? でも実際にはスペインの若者は、アメリカの同世代と大して変わりません。例えば、スペイン人の女の子がコスモ アメリカ版を手に取って読む、なんてことも決して珍しくありませんから。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

COSMOPOLITAN US