雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン トルコ版 編集長:オズレム・コタン】

オズレム・コタン(45歳)は、モデルやエアロビクス・インストラクターなどのキャリアを経験した後、本人いわく「人生ではじめて、真剣なキャリアを考えた末に」、コスモポリタン トルコ版に応募したのだとか。しかし、その当時はコスモ編集部に空きがなかったため、他の雑誌でキャリアを積むことに。『ハーパーズ バザー』や『AMICA』、『エスクァイア』、『コスモガール』を経て、6年後ついにコスモの編集長に就任。

トルコは政府による規制で、性に関する記事については厳しい制限があるそう。それでも人口7,900万人のトルコで最も多く読まれている雑誌の1つとなったコスモ トルコ版。編集長が語る、それまでの努力と仕事の秘訣とは?

――これまでのキャリアの中で受けた、1番のアドバイスはなんですか?

父に言われたのですが、「自分に甘く独善的な人には近寄るな」ということですね。この言葉、本当に正しいんです。時折耐えきれず爆発しそうになることもあります。というのは、私は仕事では完璧主義過ぎるところがあって、常に最高を目指したいんです。しかし、全ての人に私と同じモチベーションや意識があるとは限りませんよね。そして仕事で落ち込んだときには、「ニーバーの祈り」という祈りを捧げ、精神を落ち着かせるようにしています。これは私が師として敬愛する(ハーストマガジンズ・インターナショナルの)キム・ボッデン氏と、アストリッド・ベルトチーニ氏の2人から教わったものです。

――オフィスでの1日の過ごし方についてお聞かせください。

ルーティーンワークではないので、その日その日で過ごし方が違います。私は広告宣伝部のチームとミーティングをすることが多く、海外出張もたびたびあります。旅行に関する記事を書くのは、とりわけ好きなんです。また、ページ数が400ページから500ページで構成される特大号に取り掛かっているときは、10日間連続勤務は当たり前で、徹夜をすることもありますよ。(※1月、2月、7月、8月のコスモ トルコ版はおよそ200ページ。他の月はこれよりも大幅に多いそう)

時間に余裕がある日は、オフィスに着いたら国内外の雑誌を読み、ネットとSNSに目を通したら、部下7名を交えてアイディアを出し合ったり、意見交換したりする、という流れです。クリエイティブで、誰も未だかつてやっていない、読者をハッとさせるような企画を提供することに喜びを感じます。365日いつ何時でもメールをチェックする習慣を徹底しているのですが、私はそれを仕事だとは思っていません。

――なぜ特大号を頻繁に発行するのでしょうか?

トルコにはイスタンブールやアンカラ、イズミール、ブルサ、アンタルヤといった大都市だけでなく、国内に大小81もの都市部があります。もちろん主な読者は先に挙げた大都市に多いのですが、国内には様々な文化や文明、伝統や視点が存在します。保守的でありながらも非常に現代的であり、いろんな表情を持つ国なのです。そのため人々のニーズに応え、また広告主にとっても魅力的な媒体であるためには、まるで百科事典のようにたくさんのことを網羅しなくてはならないのです。また時期により別冊も付録することがあります。6月と11月には男性向けに『CosmoMan』、4月と10月にはファッション系の『Accesorize and Style』、ウエディング情報を集約した『CosmoBride』は夏冬2回、そして年1回でフィットネス系の『Cosmo Fit & Light』、他にも『Cosmo Summer』、『Cosmo on Campus』などがあります。

――コスモ トルコ版で働くには?

国中の女性から、インターンや1日体験への問い合わせがFacebook経由やメールで届きます。毎日少なくとも5通はありますよ。彼女たちは以前の私のように真剣にここで働きたいと思っている若い女性ばかり。ですから全ての問い合わせに応えるように心がけています。しかし、スタッフは少数精鋭で、そのスタッフも常駐の編集者に限っているので、すぐに採用というのは難しいですね。

でももし応募したいという方々にアドバイスできることがあるとしたら、そうですね…社交性が高いことと、好奇心旺盛じゃないといけませんね。また努力を惜しまないで、クリエイティブでフレンドリーで、共感能力があり、そしてポジティブでなければなりません。文章力と語学力も必要です。それから旅や旅先での新しい出会いを大事にして欲しいですね。もう1つ、私たちのチームは噂話が大嫌いなので、そこは踏まえておいて欲しいです!(笑)

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――読者層についてお聞かせください。

18歳から35歳の女性で、中には40歳の読者もいます。みんな一様に楽しく、個性豊かで、勇気があり、自信に満ち、流行に敏感。躊躇なく新しいことにトライする、とてもモチベーションの高い読者が多いですね。そして自分に必要なものを知っている女性…美容、ファッション、健康、スポーツ、自分磨き、インテリアデザイン、食、車、そしてもちろん男性を愛する女性たちです。

オープンに(あるいはこっそり)読んでいる男性読者もいるんですよ! 『Cosmo Man』 では、"男をアゲる"方法などをアドバイスしたり、理想の男性ファッションや、どんな暮らし方をするべきか、どう女性を扱うべきか、といった内容を載せています。女性読者たちにはぜひ、男性の目が届くところにコスモを置いておいて欲しいです!

――トルコで人気のセレブは誰ですか?

女優のケイリー・クオコが表紙を飾ったときは大きな話題になりました。2014年のことですが、ショートパンツのコーディネート、ポージング、エネルギッシュな魅力に注目が集まりました。一方、マドンナが表紙の号は予想に反してあまり部数が伸びませんでした。正直言うとその年の最低部数だったんです。サラ・ジェシカ・パーカーも同様でしたね。デミ・ロヴァート、キアラ・フェラーニ(イタリアの人気ブロガー)、テイラー・スウィフトは好評でした。国内のセレブを表紙にした号も人気がありました。

――読者たちはセックスや恋愛について、どんなアドバイスや情報を求めていると思いますか?

主に大都市で聞く意見としては、男女ともに理想の相手に巡り会えない、という悩みです。困ったことにトルコの男性は決まった相手と付き合ったり責任を持ったり、結婚することに抵抗を感じる傾向があるんです。自由が奪われてしまうと思っているのでしょう。こうなってしまうと、ロマンチックな恋愛に発展しません。ですから私たちの使命は、「愛を信じる気持ちを忘れないで」というメッセージを届け続けることだと思っています。そしてセックスは愛情表現の1つ。このトピックに関しては専門家の意見なども踏まえて、有益で正しい情報を提供しようと考えています。

――セックスに関する記事を掲載する際の法律的な決まりはあるのでしょうか? それを破るとどんな罰則がありますか?

国内にある2つの団体の検閲を受けます。私はこの仕事を始めて21年ですので、検閲には慣れています。そして決められた線を越えなければ問題はありません。もしも問題があった場合には、罰金が課せられます。私がコスモに携わる以上は、ブランドとメディアグループの経済的損失になるようなことは絶対に避けたいと思っています。

アメリカやドイツオーストラリアのコスモと同じようにセックスについて扱うことはできませんが、中東版のように"セックス"という単語自体が規制されているわけではありません。それはすべての雑誌、テレビ、新聞についても同様です。ただ、もし規則を破ったりしたら、私たちの雑誌は黒いビニール袋に入れて販売しなければならないでしょう。そんなこと誰も望んでないでしょう?  私はトルコの全女性、全男性に堂々と読んでほしくて、コスモを作っているのです。

――政治的な話題に触れたことで問題になったことはありますか?

今のところはないですね。というのも、 トルコ版では基本的に政治的なトピックについては触れません。政治的状況がどうであれ、扱いません。それに、それを私たちの雑誌に期待している人もいないのです。読者が私たちに求めていることは、別にあるのです。このスタンスは今後も変えることはありません。

――LGBTのセックスや恋愛についてはいかがでしょう? トルコはLGBTに対して決して寛容とは言えませんよね?

確かにLGBTを取り巻く状況はまだよちよち歩きの段階ですが、少しずつ前進していると思います。それぞれの性的アイデンティティやライフスタイルは他者を傷つけるものではありませんし、私たちはそれらを支持する立場です。ですが、今でも同性愛者のほとんどは、大都市にでも住んでいない限り、隠して生活しているのが現状です。つまはじきにされ、不道徳な生き方だと蔑まれることを恐れているのです。例えばアーティストやファッションデザイナー、作家などの限られた職業の人は、比較的オープンに同性愛者として暮らせているとは思いますが…。それでもLGBTのパレードはありますし、参加者の数も決して少なくありません。私たちの周りにもゲイやレズビアンがいますが、雑誌としてはやはり異性愛者たちを対象としているのが現状です。

――これまで掲載した記事で最も誇れるものは何ですか?

トルコ版では読者が意識を高く、誇りを持って生きていくのに役立つ記事を掲載することを心がけています。健全な思考、健康な身体、すこやかな精神はすべてつながっているので、自分磨きの記事はとても大事だと考えています。レイキ(エネルギー療法の一種)や風水、タロットやストーンセラピーなどを紹介したときは驚くほど部数が大きく伸びました。今注目されているのは、呼吸法や星占いといったジャンルです。これらについては私たち自身で実際に体験して、経験者の話を聞き、専門家に監修してもらうよう努めています。

精神や心の病に関する体験談、レイプや虐待を受けた女性たちのその後の生き方にまつわる実話なども非常に注目を集めました。胃のバイパス手術についての記事も同様でした。今はガンと戦って克服した若い女性の実話を掲載しようと計画しています。こういったリアルストーリーは、多くの読者に勇気と刺激を与えるようです。

――雑誌とウェブ版の関係性はどういったものでしょうか?

雑誌チームのメンバーとは別に、ウェブサイトとFacebook、Twitterをマネジメントする、オンライン用のコンテンツを任せている担当者がいて、密にやり取りをしています。インスタグラムだけは雑誌チームが担当しています。

――読者が夢中になっているSNSは何ですか?

SNSに関しては少々出足が遅かったのですが、インスタグラムに関してはかなり浸透したと思います。それに次いでFacebook。Twitterはトルコでは政治色の強い書き込みが多く、体制に批判的な人、あるいは政治に敏感な人が利用している傾向があります。私たちはもちろん、こういったトピックからは距離を置いていますが…。

――トルコに関することで、他の国の読者が驚きそうなことはありますか?

トルコはとても独特で、驚きに満ちた国です。訪れた誰もが恋してしまうような、素敵な場所です。ぜひ実際に訪れて、この国のいろんな面に触れてみてください。私も仕事柄、そして趣味で世界中を旅してきましたが、イスタンブールのような場所は他にはないと思います。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Captain & Me, Inc.

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